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ゴールデン・フェイクとは……その②

『ゴールデン・フェイクとは、非合法のクラウドサービスから、偶然に抽出されたデータファイルの一部である。映画、小説……、形として複数の表現形態で発見された。
 目的、製作者、制作時期……不明』
『マルチバース。並行世界。あるいは未来(過去)からの置き土産……』

 研究者の報告は概ねその域を出るものないのが現状だ。
 だが、ここにきてとある人物の名前が浮上してきた。
 ドクター・ザップガン。Dr.Z……。
 呼び名は多々あるが、いずれも〝雑多なガジェット〟の意を持つらしい。そしてその正体は男、女、大人、老人、子供……。噂されるそのどれもが適切であって、的確な表現ではない。彼は、彼女は〝人〟ですらないのかもしれないからだ。機械ならまだしも、プログラムや〝思想〟の可能性もある。
 ただ一つ、彼には——あえて〝彼〟と呼ぶ——明確な意思がある。
 すべての可能性(世界)を創り出し、全て一つに融合し、安定させること。
 そのことが何を産み出すかは、分からない。彼はその問いに対してこのように答えている。
「マルチバースは儲かるからね」
 その言葉が真意なのかは明らかではない。そして、統合した世界が幸福なものであるかどうかもまた……。彼の暗躍は続く。

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