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スリー・オブ・ザ・シューティングスター ~特工大作戦

 それは誰にも必要とされていないし、その価値もない。しかし、それは確かに存在する。
 note空想映画劇場 ゴールデン・フェイク ただいま開場いたします。

ただ受け身でいればいい……

〇環境保護団体『マイ・リトルアース』と名乗る武装集団が、尖閣海上油田を占拠!


 日本政府は武装蜂起発覚後、48時間経過後も何ら声明を出さない点や、いまだ輸出が確認されていない最新鋭の中華連邦制艦船・戦車・航空機の使用とその数からテロ集団の可能性を早期に否定。中華連邦所属特殊部隊の作戦行動と判断。
 しかし、中華連邦党本部は頑なにこれを否認。政府は両国の軍事衝突を避けるため、特殊公安対外工作部、通称『特工』に海上油田の制圧を指示。〝刑事事件〟として処理するよう命令を出した。これを受けて特工は3機の次世代型試作マルチロール戦闘機、『震電』『雷電』『紫電』の投入を決定する……。

〇人気ゲームの実写化

 何やら冒頭から物騒でトンデモ展開から始まるこの作品、アーケード・シューティングゲームの実写化である。シューティングゲームは文字通り、無数の敵の弾を避け、無数の敵を撃つゲームで、ビデオゲーム創成期から存在する伝統のジャンルである。「シューティングスター」シリーズは半世紀以上前から定期的に新作がリリースされる人気作であり、中でも『特工』編はストーリー・演出ともにマニアの間で評価が高い。

〇圧倒的!

 『マイ・リトルアース』との戦力差は100対1、あるいはそれ以上。しかし特工チームに悲壮感はない。本作の主役ともいえる、秘密兵器があるからだ。
 スピードに長じた震電、パワー重視の雷電、そしてバランス型の紫電。それらに装備された装弾数無限大と噂される劣化ウランバルカン、威力は低めだが広範囲に弾を撒き散らす32連装ショットガン、あらゆるものを溶解・貫通するストームレーザー。これら三種類の武器を状況によって使い分け、〝テロリスト〟どものザコ兵器を蹴散らし占領地区を開放していくのだ。それでもピンチになった場合はどうするか? 心配するな、奥の手がある。疑似ブラックホール・エンジンを開放し、ワームホール・ボムを発射するのだ。敵対する全ての敵を異空間に飲み込み、始末せよ。

〇重なる思惑……。

 これらの超兵器は、科学技術の軍事転用を容認した日本サイエンス・アカデミーの理論提供を受けたカワカミ・インダストリーによって開発された。
 今回の事件はその理論や兵器の実証実験として申し分ない。そして、そのデータを利用し量産型兵器を開発、紛争当事国に売りさばきたいと考える政府と軍事コンツェルン。威力偵察のため、人命を無視してまでも新兵器の情報を得たい中華連邦。特工の監視のためにアカデミーより派遣された震電のパイロット・花梨カワカミ。手柄を立て、手っ取り早く出世し、安全なデスクワークに戻りたい紫電の幸島満。そして、8人目の娘の学費を稼ぐため雷電のパイロットに志願したシングルマザーの森永グリ子。大小さまざま、当人たちにはいたって深刻な事情が交差する。だが……。

〇そんなことはどうでもいいんだよ。

 正直、陰謀にまつわる人間関係の描写は薄く、兵器などの科学考証はなきに等しい。しかし、だからといってこの作品が駄作であるという評価は誤りだろう。
 見ろ。野太く、アナコンダのようにのたうつ極彩色のレーザーを。
 見ろ。牛歩のごとく主人公機に迫るスクリーンの隙間なく覆われた誘導弾の恐怖を。
 見ろ。ボムがあけた闇の奥から迫る、異空間からきた髑髏を
 見ろ。トンデモ理論に支えられたオモシロ兵器の躍動を……。
 この映像美を支えているものは、3Dドットマッピングと呼ばれる新技術である。画像を構成する小さな点、ピクセル一つ一つに効率よく色彩を刻み、レトロゲームの趣を残しつつも美しく迫力のある画像を生み出すことに成功している。要は、小難しいこと考えずに、黙って見ていろよということである。約90分という上映時間もちょうどいい。ぜひ、最高の暇つぶしを堪能してほしい。

〇便乗したが……

 この映画の上映にあわせて、ノーツ社よりリメイクゲームとして「スリー・オブ・ザ・シューティングスター 1st」がリリースされた。だがこちらはクソゲー。手を出すな!

〇ご注意

 このコンテンツはフィクションであり、実在の人物・組織とは一切関係がありません。数字なども同様です。すべてはフェイク。


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