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【短編】 美女と野獣とエトセトラ

 私は学校一番の美少女で、山田は学校一番のブサイクな男子だ。
 でもそれは学校のみんながそう言っているだけで、美的感覚のない私にはよく理解できない。 
「漫画やアニメだったら、二人が付き合って、色んな騒動を起こすっていうラブコメ展開を期待!」
 親友の清子は、そんなことを言って、よく私を茶化す。
「自分のほうがイケメンだから君にふさわしいっていう馬鹿男子が現れて山田と決闘することになったり、自分の容姿に自信が持てない山田が闇の組織にそそのかされて学校を爆破したり……」
 清子は、漫画家を目指しているから想像力がある。
 私は、自分がネタにされるのは恥ずかしかったけど、彼女の荒唐無稽な話を聞くのは結構好きだった。
「あたしの清子って名前も、いかにも昭和っぽいから、あたしは学校一番の古臭い名前かもね。でも、彦左衛門っていうもっと古臭い名前の男子が転校してきて、清子は彼のことが気になっていくの……」
 
 私は夜、ベッドに入ると、学校一番のブサイクな山田と恋人になったり、清子が彦左衛門に告白したりするのを想像した。
 本当にそうなったら楽しいだろうなと思ったが、山田は私のことをどう思っているのか少し気になった。
 私には美的感覚がないから、山田がブサイクかどうか分からないけど、山田は私のことを可愛いと思っているのだろうか。
 そういえば、私に告白してくる男子は何人もいたけど、山田とは目を合わせたことがほとんどなかった……。
 
 翌日の放課後、私は山田の手を引っ張って、人気のない体育館裏に連れていった。
「ねえ、山田は私のことどう思う? 可愛いと思う?」
 私がそう質問すると、山田は私の手を振り払って、別にどうも思わないと言った。
 でも、別に君のことは嫌いじゃないし、何となくいい人だとは思うよ。
「じゃあ、私が付き合ってって告白したらどうする?」
 君のことはよく知らないから、まずは友達からってことなら……。
 
 そうやって、私と山田は何となく付き合うことになり、美女と野獣ということで、学校中の話題になってしまった。
「みんな、こういう話題が好きだし、単にあなたたちがうらやましいだけよ」
 そう言ってニヤニヤしていた親友の清子にも、しばらく後に権兵衛という名前の転校生がやってきて、彼に突然、告白される事件が起こった。
「この間、あたしたちの恋愛話を描いて漫画大賞に応募したけど、あっさり落ちちゃった。現実って甘くないのね」

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