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失恋とは恋を失うことではない

 最近、図書館でお借りした、谷川俊太郎さんのベストエッセイ集「からだに従う」を通勤電車のお供にしている。

 しかし、電車の中で気軽に読み流せる本がいいな、と思って借りた私の思惑は、めちゃくちゃいい方向で裏切られた。

 こんなすごい本、読み流すなんて絶対にできない。谷川半端ないって!(コラ。失礼をお許しください。)

 谷川俊太郎さんの詩集は何冊か読んだことがあるので、もちろん、とんでもなく素晴らしい方であるということは理解しているつもりだったが。

 詩人がエッセイをつづると、ここまでキレッキレの内容になるのか、ということにひたすら驚いている。いや、詩人が、ということではないか。

 谷川俊太郎先生が書かれているから、という事実は、まるで銀河系宇宙とさらにその周辺の宇宙を土俵にあげて、取り組みをさせたような計測不能エネルギーに満ち溢れているように感じられる。

 一本目に収録されているエッセイ「失恋とは恋を失うことではない」から、もう度肝を抜かれた。

 タイトルが素敵すぎるのは当然として(詩人・谷川俊太郎の言葉のチョイスは、キレッキレにも程がある。)谷川先生は、とあるご友人の「失恋論」について語っておられる。

 そのご友人は、失恋とはふられることではなく、ふることだと信じていたそう。ふられる方は、相手に嫌われるだけで、自分はまだその相手のことを好きなのだから、恋は失っていない。だけどふる方は、もう相手を恋することはできなくなっているのだから、これこそ本当に恋を失っているのだ、と。

 目からウロコどころの騒ぎではない。目から五臓六腑ぶちまけたような気分だ。

 まだ4分の1も読み進めていないのだが、これは途方もなくエネルギーの高い、というか、熱いエッセイ集だと思う。ベストエッセイ集なので、かなり古いエッセイも収録されている。ちなみに、この失恋のエッセイは、1957年に発表されたものだそうな。私、まだ産まれてないよー!(驚)

 久しぶりに、こうやって誰かにお伝えしたくなるくらいの、素敵な本に出会えてほくほくしている。最近はほんと、なんとなく「娯楽」として読み流せる本ばかり読んでいたけど、このエッセイ集はすごいから。

 じわじわじわーっと、ねっとりと(笑)最後まで味わわせていただきます。

 こんな出会いもあるから、やっぱ読書って、やめられないんだよなぁ。

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