しごとの現場で成果を出しながら学んでいくために「つくってまなぶ、協働のプロセスファシリテーション論」をまとめました
私は、人と組織の可能性を活かした経営コンサルファームMIMIGURIで、組織や人の課題に日々プロセスファシリテーター/コミュニティマネージャーとして向き合っています
また地元新潟では、インパクトスタートアップのDERTAで、地方企業や地域に根ざした課題を「デザイン」「デジタル」「共創コミュニティ」の力で解決する活動に、サービスデザイナーとして関わっています
その実践の場で、デザインやプロジェクトマネジメント、ファシリテーションの技術を使って、よい体験を生み出すことを通して、ビジネスや地域の課題を解くこと、人がつながりの中で学んでいくことに向き合い続けてきました
そんな私の探究の現在地を「つくってまなぶ、協働のプロセスファシリテーション論」としてまとめました
しごとの目的は成果と学び
組織には達成すべき目標があり、私を含め多くの現場で働く人たちは、日々自分のしごとの目標に向けて働いています
事業の売り上げ目標の達成を目指して働くことを考えている人もいれば、いかに品質のよいものを効率的に作るかを大切にしている人もいます
そして、多かれ少なかれその過程には学びが生まれ、だんだんできることが増えていったり、まわりの人との関係性を育んでいったりしていきます
その成果に向けての過程と、関係性や学びについての過程のバランスで仕事というものは成り立っており、個人やチームにとってほどよい緊張感と安心感がある状態が良いしごとを生み出すと思っています
協働のプロセスファシリテーションは、この成果を生み出す活動と学びを生み出す活動について、それはどのようなものなのか、そのために私たちができることはどのようなものなのかを探究してくものです
つくってまなぶ協働のプロセス
よい成果とよい学びを目指すとき、私たちは2つの経験をしていきます
自分の現場で他者と成果を生み出す経験
自分らしい参加の仕方で他者と学ぶ経験
この2つは独立したものではなく、成果を生み出す中で学ぶこともあれば、学びがよりよい成果につながることもあります
私はプロジェクトプロジェクトマネージャー・サービスデザイナーとして組織開発や事業開発に関わるコンサルテーションを行う様々な実践現場の中で、成果を目指す活動と学びを生み出す活動のバランスを日々の仕事の中でとり続ける事の難しさを感じています
他者と協働して、つくりながら、まなぶ、そしてそれを自分の現場で自分らしく行う。それを「つくってまなぶ協働のプロセス」と名付け、その実現に向けて実践と探究を進めています
つくってまなぶ循環が社会と人をよりよくする
成果と学びを両立することを何故考えていきたいのか
私自身、成果だけを追い求め、徐々に目的や意義を見いだせなくなって、外的要因に抑圧され疲弊した経験があります
学びや関係性だけを考えて、組織やチームとして社会意義を見いだせなくなり、目的は消失し、方向性を見失い、結果的に学びや人間関係も袋小路に到達する場面にも多く立ち会ってきました
単純に成果を目指して力を傾ければ話は単純なのですが(それだけでもかなり難しいものだと思いますが)あえて断定的に言えば、人は課題解決をするための道具ではありませんし、感情を持って相互関係の中で悩みながら活動していく存在です
その事実を忘れてしまうことで、上手くいかなかったプロジェクトを多く経験してきました
その中で、成果を出すことと学ぶことに眼差しを向けて、自分たちで適切にバランスをとることができれば、人も社会ももっとよくなれるのだと考えるようになりました
社会に目を向け、課題解決や価値創造を行なって成果を目指すこと。自分や他者に目を向けてその成長や変容に向き合うこと。その内と外の往復運動を目指すことが、よりよりしごとのあり方に向かっていくと考えています
とはいえつくって学べない現実がある
ここまでビジョンを語ってきましたが、ここからは成果と学びの両立を目指すにあたり越えるべき課題についてまとめます
①時間が足りない
成果だけ・学びだけのどちらかを考えるだけでは成り立たない、そもそも成果のみを前提として要件を立てている場合、両方を目指そうとするとリソース・時間が足りないという事が起こります
特に不確実性の高い状況では状況変化に対応することの優先度が高くなりがちで、学びにかける時間は後回しになりやすいと感じています
②方法がわからない
成果と学びを統合した実践目線での共通知見が無く、手探りの状態になっている現場は多いと感じています。また現場で課題設定がなされていなく、学習にも繋がらないため、適切な技術習得を行う事ができなかったり、チームの課題解決を進める事ができない状況になります
③目線が合わない
たとえ現場での課題意識があっても、実施に伴って何に向かって改善しようとしているのかの目線が合っていない場面は多いと考えています。共通言語が不足しているため活動の目的が当事者同士で合意されずらい状況です
これらの課題に対して実践探究を行なっています。次にそこにどのようにアプローチするかを考えます
探究の方向性
私はいまだまとまった方法論を提示できる段階にありません。上記課題を認識しながら、探究をすすめていきたいと考えています
①効率化できる場所を見定め余白を生み出す
生産性・効率化が可能な部分に関して、情報デザインやデジタルツールの方法を活用していきたい。成果と学びの両立の目線で考えたときに、より時間を使うべき観点に時間とリソースをかけられる余白を生み出したい
②各分野から学びプロセス仮説を立てる
プロジェクトマネジメント・共創のデザイン・アジャイル等共通の課題感の元蓄積された知見は多いため、参照しながらシンプルな方法を模索していきたい
③共通認識の土台になる概念を整理する
できるだけシンプルな共通言語になりうる概念を考え、実践の中で現場に合った言葉を当事者自ら作り上げていくプロセスを考えたい
これらの探究のためには、隣接領域の実践者・研究者との経験や知見の交換を行う必要があると考えています。ぜひ本記事を読んで探究を共にしていただける方がいましたらコメントをいただけると幸いです
ここからは、共通認識の土台になりうる概念整理を行っていくために現状進んでいる概念仮説をお話ししていきます
いかに、つくってまなぶ協働のプロセスをファシリテーションするか
「観察・洞察」と「設計・修繕」を行き来し、みたてを立て実行する
つくってまなぶ協働プロセスには、状況をつぶさに観察し、洞察を行う「みる」ことと、状況を変えるために設計し、そこまでの仮説を修繕する「たてる」ことの両面が必要だと考えています
いま自分たちが成果のために必要なアクションやアウトプットは何か?そのプロセスがよい学びとなるためにどのような姿勢・プロセスで進んでいけばいいのかを適宜見立てていく必要があります
プロジェクト初期に仮説を立てることは非常に重要ですが、眼差しが成果だけに傾いていないか、学びが成果とつながっているか、日々状況を掴み、見通しを立てていくアプローチが重要です
プロセスを捉えるための3つのレンズ
私たちが学び・成果を出すプロセスを3つの概念に分けて考えてみます
これらは相互に関係していて、一つだけのモードが長く続くとバランスを崩していってしまうため、自分たちにとってどのモードにどの程度時間を使うのかを見いだしていく活動が重要になると考えています
①発想と設計のモード
成果に向かうためにアイデアを創出し、ものを創作するための時間。方向性が明確な時期にはプロジェクトの多くの時間がここに使われます
②批判と問い直しのモード
今進んでいる物事をそもそもの視点で見直し、前提を問う時間。コンセプト初期や、プロジェクトの方向性を修正するような場面となります。いつまでもここにとどまる事は避けたいところですが、非常に重要な局面となる事が多いです
③ケアと学習のモード
自分たちの関係性や、メンバーのお互いの状態についてまなざしを向ける場面です。プロジェクト初期のチームビルディングはもちろん、プロジェクト中盤や終了後に場を設定する事で円滑な進行や、関係性によるリスクを軽減する事ができますまた、ここが重要ですが、よい関係性は協働を円滑にし生産性の向上だけでなく想定しなかったようなアイデア発想や、個々人のモチベーションの向上、コミットメントの増加を期待できると考えています
では、この3つのモードのバランスをとりつづけられるプロセスをつくるためにはどうすれば良いでしょうか。プロセスづくりのための観点について次に整理しています
プロセスをつくるための要素
プロセスを設計・推進するためにどのようなプロセスを構成する要素を掴んで行く必要があります
私は長年デザイナーとして実践してきたため、IA・インフォメーションアーキテクチャという情報デザインの分野の考え方をよすがにしており、プロセスを考えるためにやや解釈・アレンジして使っています
①ユーザー:ひと
プロセスに関わるステークホルダー、プロジェクトメンバー・クライアント・その他の意思決定者・協力者について情報を整理して、to-beを仮説立てます
②コンテンツ:もの
プロセスで活用できるアセット・作り出す所産アウトプット
制作物・材料・資源・データについて情報を整理して、アウトプットに向けて仮説を立て、必要な情報を利活用できるようにします
③コンテキスト:こと
制約条件・文脈や前提想定される過程
要求・要件事項・スケジュール・マイルストンについて、前提条件を整理し、今後の計画を仮説立てます
協働のプロセスファシリテーションはみたてが肝要
プロセスを観察し捉えながら、プロセスをデザインし修繕するために、「プロセスを捉えるための3つのレンズ」の目を持ち、「プロセスをつくるための要素」を整理し設計していきます
プロセスを捉えるための3つのレンズ
プロセスを通してチームが今どういう状態なのかを観察し、見立てる必要があります。発想と設計、批判と問い直し、ケアと学習、今ここで自分たちにとってどのモードが必要なのかを考えます
プロセスを作るための3つの要素
プロセスをつくり実行していくときには、つくる観点をたよりにつくり・修繕していきます
ひと・もの・ことの要素に対して、情報を収集し整理し、設計していきます
レンズと要素を活用する
プロセス設計においてどのフェーズでどのモードの時間を設定するべきか、どの程度時間を使うことができるか仮説立て時や、振り返りの場面で、自分たちはどの観点にどれだけ時間を使ってきたのか、使うべきだったのかを考えるときにレンズを活用できます
成果と学びを生み出すプロセスを設計し、実行の中で日々修繕していくためにこの二つの概念を活用しています
具体的にどのように情報整理を行い、どのような場づくりをするのかは、今後の記事で具体化していきます
まとめ:協働のプロセスファシリテーション探究の全体像
本記事で協働のプロセスファシリテーション探究の世界観から目的、その実行のための概念整理までをおこなってきました
今後もこの探究のレンズを持ち、日々実践を行いながら具体度を上げ、方法論としてアップデートしていく予定です
先にも書きましたが、様々な実践家や研究家の方のご意見やディスカッションが必要だと思っています
ぜひ探究の仲間となってくださる方のお声がけをお待ちしています
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