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言わなくていいこと

自分をさらけ出す

私はこのことにすごく抵抗があります。
noteには自分の生い立ちやその影響を綴ってきましたが、ここまで自分のことをさらけ出したのははじめてです。
特に、身内にまつわる話は、近しい人だと、
「それはあなたの思い違いでは?あの人(私の親)はそんな風に見えないよ」
と言われてしまったり、
「むしろ、親御さんはあなたの行動を心配していたのよ。だから厳しくせざるを得なかったのでは?」
と言われる可能性が高いからです。

虐待と認知されない毒親被害の難しさは、ここにあると思います。
親と自分にしかわからない行き違いの中で、子どもの私がどれだけ傷つき、哀しい想いをしたのかということを、理解できる他人はいません。
すると、表面的に温厚な関係に見えた、というだけで、無かったことにされてしまうし、大人同士の関係性が強い方の味方をしたくなります。
それはある意味『社会的マナー』として正しいことなのかもしれません。
主観でしか物事を感じられない子どもよりも、俯瞰的に物事を見られる大人の言うことを信じた方が、トラブルが少なくて済むからです。

しかし、私の子ども時代は、そういう世間の態度にどれほど傷つき、絶望感を覚えたのかしれません。
幼いとはいえ、私の感じ方、考え方の方が、正常だったはずです。

あからさまにきょうだいと比べられると哀しい。

自分ではコントロールできないことを叱られると悔しい。

うまく表現できないことや、間違った表現をしてしまったことを、無かったことにされたり、間違いを正せと叱られると悲しい、悔しい。

私は変わっているから相手にしなくてもいいという態度を取られると寂しい。

これらは人間が持つ、当たり前の感情です。
しかし毒親は、こんな悲しさや悔しさや怒りを感じてしまうような環境に子どもを追いやっておきながら、そんな感情を持ったり、表したりする『子ども』の方が悪いと断罪するのです。

意図的に子どもを虐待したいサイコパスな親も存在します。
そんなサイコパスな親は、そもそも異常者ですから、厳しい対処が必要だと思います。
(日本ではそんな異常者であっても、親というだけで野放しにして、子どもに犠牲を強いていることが大問題なのですが)

その問題とは別に、無意識的に子どもの心を窮地に追いやり、それが嫌だと抵抗する子どもに対して、「そんな大騒ぎをするのはみっともない。行動を改めろ」と迫る大人が、この社会にはとても多いのです。

自分が大人になったら、この声を聞き入れてもらえるのかと思っていました。
ところが、大人同士であっても、他者を窮地に追い込んで気付きもしない大人がたくさん居て、残念なことに、そういう勘違いをしている大人の方が、正常な感覚を持っている大人よりも強いのです。

政治という権力を握った大人が、明らかに悪いとわかることを堂々とやり、それを咎められる機関が無いことからもわかると思います。

私が子どもの頃から感じてきたこと、考えてきたことは、同じ道筋を辿ってきた人たちとの出会いによって、『正常』であったことがわかってきました。
その気づきによって、ようやく自分という人間の感覚を信じられるようになってきました。
自信というのは、こうやって築かれていくものだったのだとわかってきました。

自分をジャッジするのは、他人でもなく、社会でもなく、世間でもない。自分以外には居ないのです。

しかし自分に自信を持つことと、世論に耳を傾けたり譲歩することは違います。

同じような試練を背負った方とか、同じような感覚を持った方と会うと、本当は自分を開示して、受け入れてもらう経験を積んだ方が良いんだろうなと思うのですが、これまで親という権力者と、親に味方する世間の圧力から、「お前の判断は間違っている。黙って言うことを聞け!」と口を封じられてきた体験は、かなり根深く私の中に突き刺さっています。
そうすると、開示して傷つけられることを何よりも恐れるのです。

そもそも、自分を開示して、相手も心を開いてくれたとして、それで何が得られるのでしょうか?
本当に欲しいものは、他人からもらうものでは無い。
そう考えると、他人に言わなくていいことを守っておくことが得策なのかもしれません。

福祉的な支援をおこなうとき、どうしても相手が本心を明かすことを強制しがちになってしまいます。
けれど、どの人にも言いたくないこと、言わなくていいこと、があるはず。
自分自身をそうやって守ると同時に、相手の尊厳も守らなくてはならない。
そんな自戒をしていきたいです。

世の中に毒親か居なくなったら、みんな自分の気持ちをあけすけにできるハッピーな世界があるのかもしれませんが、現代社会は残念ながら、親や権力の毒にやられている人が多い。多すぎます。

それなら、傷口が見えていても、あえてそこには触れない節度を大切にしないといけないなと感じます。


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