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服が汚れるから、戦争はしない ~サプールというオシャレな紳士たち~

今回のかきあつめのテーマ「#粋(いき)」である。粋な人といえば、SAPEUR(サプール)を忘れてはいけない。最高にクールでオシャレな紳士たちのことだ。

今回の記事ではサプールについて、ただただ僕の感心するところを羅列していこうと思う。

SAPEUR・サプールとは

サプールについて、Wikipediaでは下記のようにまとめている。

サップ(SAPE)は、コンゴ共和国およびコンゴ民主共和国においてみられるファッションの一種である。サップを楽しむ人々は、男性の場合はサペーまたはサプール(Sapeur)、女性の場合はサプーズ(Sapeuse)と呼ばれる。

SAPEとはフランス語のSociété des ambianceurs et des personnes élégantes(日本語訳は「おしゃれで優雅な紳士協会」や「エレガントで愉快な仲間たちの会」などいくつかの訳がある)の頭文字をとったもので、一年中気温30度を越す常夏の両コンゴにおいて1950年代から1960年代のパリ紳士の盛装に身を包み、街中を闊歩するスタイルのことである。高級ブランドのスーツに身を包み、帽子と葉巻やパイプ、ステッキなどの小道具とともに街を練り歩く。

Wikipediaより
キメっキメのサプール(MONOCOサイトより)


僕がサプールについて知ったのは2016年に発売された『THE SAPEUR コンゴで出会った世界』という写真集からだ。

彼らのいるコンゴ共和国とは、平均月収が3万に満たない世界最貧国の一つとされる国である。そのコンゴ共和国で、年収の平均4割を海外の高級ブランド服に使うというサプールたち。

彼らは見栄っ張りの富豪なのか、いや、そうではない。彼らの多くは一般の庶民なのである。

休日のオシャレに全力を投じる

サプールは、平日は街の人と変わらない服装で仕事に励み、土日になると自宅から礼拝やナイトクラブまでの道を、気取ったポーズをしながら練り歩く。この週末のために、下着姿で満面の笑みで靴を磨くサプールの姿が写真集にはあった。

サプールはコンゴ人にとってヒーローのような存在であるらしく、常に注目を浴びているようだ。そんな彼らは、常に自分が紳士であることを認識して、人を敬い、人から尊敬される存在でなくてはならないと言う。

YouTubeで調べると彼らの生活がよくわかる。見栄っ張りといえばそれだけなのかもしれないが、彼らの所作はエレガントであり、誇り高いのだ。動画を見ているとよく「サプールは絶対に喧嘩をしてはいけない」というセリフが出てくる。彼らの信念のようだ。

服が汚れるから、戦争はしない。

コンゴはカトリック信仰が強く、1880年代にヨーロッパ列強国によるアフリカ諸国の植民地争いに巻き込まれたコンゴ人にとって、平和への想いは強いという。独立後も不安定な時期が続き、2003年まで内戦は続いた。もちろん、サプールの人たちも影響を受けている。

2017年に渋谷で写真展があった際に、来日したサプールがのコメントが良かった。

サプールであることは難しくありません。厳しい規則はありません。
色の組み合わせなど、少しオシャレに気をつけること。
そして平和を愛し、人に優しくすることです。

ファッションで平和の尊さ伝える「サプール」 コンゴから来日 渋谷を歩く より

サプールとはファッションを通して、非戦、反暴力、平和主義を貫く哲学者でもあるのだ。

紳士とは粋である

そんなサプールについて、個人的に好きなエピソードがあったので紹介したい。これは写真集を出すためにサプールに会いに行った日本人の話である。

事前にアポイントをとっておいた写真家は、サプールの家に行くと温かく歓迎される。自分の家族や自慢の服が紹介され、手料理をふるまわれ、楽しい時間が続いた。そうしていると、「ワインを出そう」と、主人が奥からボトルを持ってきて、目の前で開けてグラスに注いだ。
良いワインだ。写真家がボトルをよく見ると、ラベルがボロボロになっている。おそらく主人が周りに自慢だけして長くとっておいたものなのだろう。
だが、彼はそんなことを全く鼻にかけずに、気前よくボトルを開けたのだ。

そう、これがサプールである。決して裕福でない中、遠方からきた客人に喜んでもらおうと、とっておきのワインをさらりと開けるのだ。あぁ、これこそが「粋」というものだろう。かっこいい。


僕もオシャレは好きだと自負してきたが、彼らほど気高く着飾ることはなかなかできていない。サプールのように誇り高く生きてみたいものである。

粋で平和主義者である彼らの言葉を、大事にしていきたいと思う。


記事:アカ ヨシロウ
編集:真央
扉画:NewsWeekサイトより
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