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圧倒的な優しい世界。映画『サイボーグでも大丈夫』と『パーマネント野ばら』のすすめ

本記事では映画『サイボーグでも大丈夫』『時計仕掛けのオレンジ』『パーマネント野ばら』『ナイトクローラ』のオチ(もしくはオチにつながる話)をさらりと書いています。その点を考慮して読み進めてください。

筆者にとって『#優しさを感じた言葉』で思いつくのは、ある2人の女性から紹介してもらった映画のセリフになる。

2人の女性とは、昔交際していた女性と、今の奥さんである。
思い返すと、この2人の献身的なサポートによって、筆者は鼻クソしか食べていなかった猿から最低限のモラルを有したサラリーマンへと、成長できたのかもしれない。

2人の共通点は「優しさ」であった。そんな彼女たちが勧めてくれた映画を紹介したい。

僕に映画『サイボーグでも大丈夫』を教えてくれた彼女は、優しい人であった

もう15年も前の事だが、当時交際していた女性に紹介された映画に『サイボーグでも大丈夫』(2006年)がある。

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当時、綾瀬はるかの『僕の彼女はサイボーグ』(2008年)があったり、高橋しんの漫画『最終兵器彼女』がなぜか実写化したり(2006年)とかで、「どーせその周りの話なんだろな」なんて思っていた。結論として、全く違う話である。精神科の病棟が舞台の本作は、自身をサイボーグと思い込んだ女性(チャ・ヨングン)と彼女に恋をする青年(パク・イルスン)を描いたシュールなラブコメなのだ。

「サイボーグである自分は電池からしか栄養が取れない」。そう思い込んだ彼女は、日に日にやせ細っていく。彼女のことが気になる青年はどうするかというと、「ご飯をエネルギーに変える変換器を作ったからそれを君に埋め込んであげよう!」と、彼女に背を向けさせ空想の手術を持ちかける。

ストーリーはその後なんやかんやあり、彼女はその手術の真似事を信じ込み、ご飯を食べることができるようになる。元気を取り戻したあとの彼女は、その後も空想をし続け、彼もその世界を否定しないで終わる。タイトル通り「サイボーグでも大丈夫」なのである。

15年前の筆者は「やぁー、こんな優しい世界があるんだなぁ〜」と感慨深くなっていたのを思い出した。というのも、筆者は当時からキューブリックの映画『時計仕掛けのオレンジ』(1972年)とかが好きな性分だからである。

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喧嘩・強盗・強姦などの悪戯を尽くしたマルコム・マクダウェル演じるアレックスは、とうとう警察に捕まってしまう。アレックスはルドヴィコ療法という、ゲロを吐くほどの徹底的な更生プログラムを経て、憔悴しきった体で釈放される。あれだけの更生プログラムだから、人間は変われたのか?と思ったら「治ってなーいじゃーーん!」というブラックなオチである。当時も筆者はケラケラと笑っていた。

そんな筆者と比べたら、交際していたその女性は優しい人であったし、そんな優しい世界を知らなかった筆者は感動をしていたのだと思う。

映画『パーマネント野ばら』に同様の優しさを感じた

当時の彼女とは別れ、5年後くらいに今の奥さんと結婚した。

奥さんもなかなか映画好きの人なのだが、彼女に紹介してもらった映画『パーマネント野ばら』(2010年)を見たとき、懐かしい感覚を覚えた。

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西原理恵子の漫画を原作とした本作は田舎の港町が舞台で、菅野美穂演じるナオコが娘をつれて戻ってきたところから話が始まる。西原理恵が描くクダラナく淡々とした田舎の日常を、夏木マリ・小池栄子(ミッチャン)・池脇千鶴らの演技派女優が支える。

劇中で、ナオコは高校時代から交際している江口洋介演じる高校教員のカシマとデートを繰り返す。ナオコにとって楽しい時間だ。あるとき家族が全員出払ったため、ナオコはカシマと温泉旅行へ向かう。2人で旅館につくと、ナオコはうたた寝をしてしまう。数時間たち、起きるとカシマが帰ってしまったことに気が付く。
そしてまた別の日、浜辺をデートしている2人。しかしミッチャンに声をかけられ振り向くとカシマの姿はない。

実はカシマはナオコが高校の時に水難事故で死んでいたのだ。そう、彼女の見ていたのは幻想だったのである。

幻想だったと分かったナオコはミッチャンに「ミッチャン、私狂ってる?」と問いかけ、それに対しミッチャンは「そんなんやったら、この街の女はみんな狂うちゅう」と、気にしないで生きようとコメントするのだ。

うお〜〜、なんて優しい世界なのだ。

この優しさ、知っているぞ。あぁそうだ。『サイボーグでも大丈夫』だ。
港町のみんなは、ナオコの幻想を知っていてかつ、「それでもいいよ」と普通に生活をしているのだ。うーーむ。奥さんもいい映画を知っているなぁ。

一方の筆者というと、相変わらず映画『ナイトクローラー』(2014年)なんかを好んで見ている有様だ。

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ロサンゼルスで落ちぶれた生活を送るジェイク・ギレンホール演じるルイスは、事件や事故の現場の映像を売る「ナイトクローラー」になろうと思い立つ。やがてスクープをものにした彼はそれを生業とするも、テレビ局の苛烈な要求に従ううちに分別を失っていく。

より過激な画を近くで撮ろうとする仕事熱心なルイスは、意図的に部下を事故に巻き込み、その有様を終始スクープ映像として撮りあげた。その部下は事故で死んだが、その迫力ある映像でルイスは地位を掴む。だがしかし、ルイスは歩くことを止めない。より過激な映像を撮るために、部下を増やし、今日も夜のロサンゼルスを奔走する。 ~ End ~

わー、やべー。どうしょうもないクズだけど、好きなんだよな〜。ケラケラケラ。

隣で奥さんが白目を剥いてこっちを見ている。あなたが結婚したのはそんな人っすよー。


以上が2人が紹介してくれた映画になる。

ここまで読んでもらえれば推測つくだろうが、筆者にとって紹介してもらった2作品は知りえない優しい世界の話であり、そんな世界の存在を教えてくれた2人の影響は絶大なものであった。

何度も伝えるが、驚くほどの優しさをもつ作品である。
観ていないのなら、是非、観てみてほしい。

(画像は全てAmazonより)

記事:アカ ヨシロウ
編集:真央

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