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フルチン、だめ!ぜったい!!

今回のかきあつめのテーマは「部活の思い出」なのだが、ふと大学の登山サークルの友人を結婚式に呼んだ際、「こいつらとの写真、ロクなのないなぁ」と途方に暮れていたのを思い出した。というのも、彼らと写っている写真がすべて全裸であり、披露宴に出せるような代物でなかったからである。

彼らは酒が入ると無性に脱ぎたがる。山男と言えばカッコつくが、自然の中だけでなく街なかの居酒屋でも平気で脱ぎだすのだから厄介だ。特徴として男子校出身者であることが多く、恥ずかしながら僕もその1人であった。

君の周りにも「なぜかフルチンになるヤツ」がいないだろうか。飲むたびに大声を出しフルチンになる彼らを君は不思議に思うかもしれない。しかし一方、彼らからしたらむしろ君に「なんでフルチンにならないの?」と不思議に思っていたりするものである。そう。そこには大きな壁がある。

今回の記事では、そんなフルチンになる人達の生態と思考回路を、フルチン御馬鹿大学生から一般エリート社会人へと成長した筆者が、体験をもとに説明していくとする。どうか最後まで優しい気持ちで読み進めていって欲しい。

【フルチンコミュニティの形成】フルチンは「敵意がない」という意思表示である

思い返すと僕のフルチンの始まりは男子校時代からだった。おそらく他の高校でも共通してなのだが、男子校出身者にとってフルチンすることは比較的普通のことであり、ウケるという意味でポジティブな行為として捉えられる。率先して脱いでいたわけではないが、女性に怒られることもないので、日常的にそれを見ては笑っていた。

そんな男子校出身者が大学生になり、成人女性がいる環境に入り込むのだが、そこには大きな環境のギャップが生じる。これまでの生活に女性がいなかった彼らにとっては、日常生活ですら試行錯誤の連続であり、一部の男子校出身者はその環境に疲れて「登山サークル」のような男子校出身者コミュニティに所属するのである。

女性がいる環境に疲れてしまった彼らがサークルの門をくぐるとき、例の事象が起こる。そう、『フルチン』である。

男子校出身者にとってフルチンとは共通言語であり、「私は男子校出身者で、あなた方に敵意はありませんよ」という意味を持つ。そして、フルチンをされた他の男子部員はその彼を迎え入れ、その意思表示として「大爆笑で盛り上がる」のである。

この共通言語をもったコミュニティが『フルチンコミュニティ』であり、ここで生活することによって、フルチンという行動はよりポジティブな意味合いをもつようになる。

フルチンはむしろ積極的に出してもいい「安牌」となる

このように、フルチンがウケるコミュニティで育った人間にとってフルチンとは「挨拶代わりのようなもの」であり、「安牌、かつ確実にウケる最強のカード」となってくる。言わずもがな、これは問題である。

上でも述べているように、フルチンコミュニティでのフルチンの爆発力と安定感は凄い。この文化圏では「フルチン」という挨拶に「爆笑」という挨拶を返すのが礼儀だからだ。

だがしかし、フルチンコミュニティで育った人間が他のコミュニティと交流を図る(異文化交流)と、大変なことが起こる。そう、ジョークのような話だが、挨拶としてフルチンしてしまうのである。

思考回路はこうだ。フルチンコミュニティで育った彼も、同じ人間である。交流するからには相手に楽しんで欲しい。けど文化が違うから盛り上がることができない。うーんしまった。そこでこう思いつく。

「そうだ、フルチンしよう!」

このように、彼らにとってフルチンは『困ったら出すカード』なのである。

普通の感覚を持つ人なら、ここで「他にも安牌となるカードがあるんじゃないか?」と、疑問を抱くかもしれない。違うのである。悲しいがな、フルチンするようなやつに他の手持ちカードなどないのである。

フルチンするようなやつに他の手持ちカードなどない

あぁ、当時の自分を思い出すと、恥ずかしいという感情を通り越して申し訳なくなっていく。

以前別の記事で「男子校出身者は男子校出身者同士でツルみがちだ」という話をしたが、これは結構根が深い話である。というのも、「普通のコミュニティに馴染めない→男子校出身者コミュニティに入り込む→より普通のコミュニティに馴染めなくなる」という悪循環が生じるからだ。この悪循環にハマるようなやつに、もともと他の手持ちカードなど持ち合わせていない

これは僕の話である。この悪循環から脱しようと他のコミュニティに出向くのだが、手持ちが「フルチン」というカードしか持っていないから出さないというか、ださざるをえないのである。(このカードを「出さない」という選択肢の存在は、だいぶ経ってから気づいた。)そうやって僕は居酒屋だけでなく多くのサークルやコミュニティから出禁を喰らってきた。

それでもフルチンコミュニティの呪縛は強く、一度の説教でやめるようなことはなかった。1人でも笑っている人間がいれば、喜んでしまうのである。そうして3回くらい本気で怒られて「あれ、フルチンはダメなのかもしれない」と思うのだ。恥ずかしいが、本当の話である。

【最後に】公共の場でフルチンになってはならない

当たり前の話だが、読者の中にはこの事実にピンときていない人もいると思うのでもう1回言おう。フルチンは、ダメである。今回の記事ではフルチンを面白おかしく書いてきたが、結論は「ダメだ」としてまとめよう。

もちろん、当時の男子校コミュニティや楽しかった思い出・当時の感情を否定するものではない。やれるコミュニティでのフルチンほど楽しいものはない。ただ、君が気軽にやっているフルチンは、相当気をつけないといけないキケンな代物だし、公共の場でフルチンになるのは絶対にダメであることを認識して欲しい。

学生の頃、僕は飲むたびにフルチンになっていたのだが、「それがどうしたーー!!!」と跳ね返したのが前の彼女であり、「マジでお前!ありえないわー!!!」と本気説教をしたのが今の奥さんである。僕の交際歴はこの2人しかないので、フルチンによって人生は開かれたとも言える。しかし、これを言うには失うものがあまりにも多すぎた

フルチンは、基本的にやってはならないのである。君の知人・友人にフルチンをやっている人がいたらこの記事を紹介して欲しい。

この記事が、フルチンという奇妙な行為に対して、世の中から理解される一助になれば幸いである。

記事:アカ ヨシロウ
編集:彩音

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