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陽炎【第三章 神の舌】

ふっくらと、しっとりとした柔肌の温もりがタオル越しに伝わってくる。

無言で抱擁を続けるしずく。

ひ「本当に今日も会えてよかった」

なんだろう。不自然だ。

温かさは伝わってくるのに顔が見えない不安からだろうか。
抱擁の静寂に耐え切れなくなったからだろうか。

上手く感情を乗せて話せない。
しずくはどんな顔をしているんだろう。

抱擁を解き、改めて直視。
くりっとした黒目がこちらを捉えている。

し「ベッド入ろっか」

不安を察してくれたのか、掛け布団を手際よく剥がしエスコートしてくれた。

なんで不安になってるんだ!一緒に過ごせる時間は少ないんだ!今を楽しめ!

そう自分に言い聞かせてベッドの中でしずくのバスタオルを一気に取り去る。

邪念を振り払うようにりこの上にまたがり接吻。

首に再びしずくの腕が絡んでくる。

先ほどよりも強い。

それと同時に彼女の舌が頬を伝い耳へ。

優しく耳たぶを愛撫される。

思わず声を出してしまう。それに呼応するかのように彼女の息遣いが激しくなる。

こちらの身体を横に押し倒ししずくが上に跨る。

その舌はしっかりと耳をとらえて離さない。

再び頬をつたい顎、首、鎖骨、そして第一の性感帯である乳首へ。

彼女は垂れた前髪をかき上げる。

しずくの表情と舌づかいが見たい。まくらをしっかりと首の後ろへ配置。

再び目があった時、彼女の表情に先ほどまでの笑顔はなかった。

光を失ったトロンとした黒目、緩んだ口元。

妖艶という表現がぴったりだろうか。

吸い込まれてしまいそうだ。

しずくはゆっくりと舌を円を描くように動かしながら乳首の周りを愛撫していく。

指先が痺れてきた。快楽への一歩目だろうか。

丁寧に円を描いた後には舌先で素早く乳首を愛撫。

緩急のついた舌捌きに思わず喘ぎ声が漏れてしまう。

再びしずくがこちらを見る。

艶やかな表情がニコッと笑う。いたずらっ子のようだ。

乳首だけでこんなに喘ぎ声でちゃうの?まだ気持ちいいところ触ってないよ?

そんなことを言いたいのだろう。

ダメだ、耐え切れない。雄としての本能が理性を超えてしまいそうだ。

しずくの全てが欲しい。自分だけのものにしたい。

なんと伝えるのが適切なのだろうか。

ひ「本当にヤバい。今まで経験してきた中でしずくちゃんが一番上手い」

口をついて出てきた言葉がなんとも陳腐だ。

ありきたりだがこれ以上の伝え方が見つからない。

この状況で最上の口説き文句があったら逆に教えていただきたい。

し「嬉しい」

たった一言。

それでいいのだ。この期に及んで形式的な会話はいらないと気づいた。

しずくの舌が下腹部に向かって這っていく。

向かう先は太ももの付け根。

舌先で細く繊細に太ももの裏から付け根を往復する。

彼女の吐息もかかる。

ゾクっとする感覚を覚えつつも快楽である。

そして柔らかい手が陰部を握る。

その手には唾液がたっぷりと付けられている。

しずくの仕草を一部始終捉えていたはずなのに、どのタイミングで唾液をつけたんだ。

すでに彼女のスピード感に置きざりにされている。

このスピード感こそが高級店たる所以なのだろう。

彼女の手はゆっくりと陰部の付け根から先までを包み込むように動かしている。

彼女の舌は次に睾丸へ。

しずくの真骨頂はこの睾丸舐め、と言っても過言では無い。

クポっと咥えるようにして口全体に包み込む。

口の中に佇む神の舌が睾丸を捉える。

余計な音を出すことなく静かに這う。

二流の風俗嬢だと引っ張ったり、ズボボっと音を立ててしまうのだが、そんなことはしない。

徹底的に無駄が削ぎ落とされている。

睾丸を咥えたままこちらを上目遣いで見てくる。

プロの表情だ。目が合った時間はたった1〜2秒だろう。

しかしなぜかとても長い時間のように感じられた。

10秒にも、30秒にも感じられたのだ。

まるで蛇に睨まれた蛙のようだ。

そして彼女の口はついに陰部をまるっと咥え込んだ。

完璧である。

全く歯が当たらないのはもちろん、ローションかと思うほどの大量の唾液を蓄えているのである。

ゴポッ、ゴポッ、っと音を立てながら頭を上下に動かしていく。

再び髪が垂れる。表情が見たいのに髪がかかって見えない。

もどかしい。非常にもどかしい。

しかし非常に気持ちがよい。この上なく最高の快楽である。

快楽といえば、どこかでこんな言葉を聞いたことがある。

快楽よりも感動を。

この言葉を提唱した者は本当の快楽を得たことがあるのだろうか?

否。

どんな感動も圧倒的な快楽の前には意味を成さない。平伏すしかない。

極限の快楽を与えてくれる彼女こそが、至高であり、初めて感動を覚えるのである。

快楽の先が感動。世の中の真理である。

そんなことを考えているとふと、絶頂に達してしまいそうだ。

一瞬の油断も許されない。まだまだ楽しみたい。

ここでイキ果てるわけにはいかない。

しずくの口から陰部を外し彼女を押し倒す。

さあ、攻守交代だ!

【第四章 快楽のその先へ】へ続く

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