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【考え方・プロセス編】とあるエンタメ企業のカルチャー推進担当の実践メモ

この記事は、『アカツキ人事がハートドリブンに書く Advent Calendar 2020』 の 4日目の記事です。 前回はアカツキ広報室江本さんの「zoom朝会(#good_morning)1年のありがとう」でした。

人事広報部・HEARTFULチームのリーダーをしています小能(おのう)といいます。

アカツキという、ゲームやIPを軸にエンタメをプロデュースするベンチャー企業(創業10年目・東証一部)で、文化づくりや社内コミュニケーションにまつわる仕事を、かれこれ5年ほど行っています。中でも直近3年は「文化づくり」の色が強いです。

カルチャー推進の仕事はまだ一般的ではないかもしれませんが、CCO(チーフカルチャオフィサー)やカルチャー推進室など、一部の企業では極めて重要なものとして設けており、事例も出始めていますね。

ただ、社内コミュニケーションやカルチャー推進の仕事に絶対解はなく、あったとしても抽象的で、そもそも企業ごとに大切にするものや前提が違うので、イマイチふにおちないこともしばしば。

そうした曖昧性を含む領域でもありますが、言語化もこれからどんどん発展していくところではないでしょうか。

この記事も例にもれず曖昧な点も残りますが、実際に推進している目線をもって、一つの企業の一担当の例として、できる限り具体的に紹介していきたいなと思います。

本記事は、大枠の考え方とプロセス編。次回(明日)は、実践・心得編です。

カルチャー担当の仕事は、「理念・哲学を絵に書いた餅にしない」ことではないか


どの企業にも企業理念はあると思います。哲学や社訓、あるいはミッション・ビジョン・バリューなども用意していると思います。

が、本当に大事なのは、それがひとりひとりに息づいているかどうか、実利面・精神面の両面から意味のあるものになっているかかどうか。

そしてそれらが意思決定や行動に現れて、その人の人生の自己実現・幸せや、企業の成功につながっているか、そこまでいって強烈に意味をなし始めると考えます。

入社時推薦図書になっているビジョナリー・カンパニーでも、このような記述があり、これは本当に大事なことだと思っています。

ビジョナリー・カンパニーには、共通した「正しい」基本的価値観があるのではない。基本的価値観に「正解」と言えるものはない。
決定的な点は、理念の内容ではなく、理念をいかに深く「信じて」いるか。
会社の一挙一動に、いかに一貫して理念が実践され、息づき、現れているか。「われわれが実際に、何よりも大切にしているものは何なのか」という問いを立てる。

「餅の絵」が、みんなが食べたくなる、仕事の支えになる美味しい餅になっているのか。みんなの元気の源になる、成果につながるパワーフードになっているか。

それがカルチャー推進担当の仕事の指標の一つとも言えるのではないでしょうか。

アカツキの場合は、創業者2人が100時間以上かけてつくったアカツキハートなるものが根底に存在します。そこで、社会ビジョン・ミッション・組織ビジョン、チームで大切にしたいスタイルなどを記載しています。

組織ビジョンを例にとると

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こうして公式に定義されている言葉を見たときに

「言っているけど、いまいちピンとこないんだよな・・」

「いいかもしれないけど、現実問題、目の前の人の言動みていると、そんなこと大事にしているとは思えない」

となっていると、なにかしらの地道な取り組みが必要な状態。

一方、

「あの時のあのシーン素敵だったなあ」

「もちろん大変な瞬間もあるけど、今年もそう思える毎日作って、いい仕事するぜ」

と一人ひとりが思えていると、順調に息づいていると言えると思います。

いわゆるビジョナリー・カンパニー2にある概念「弾み車をまわす」というやつですね。

カリスマリーダーが声高に叫んでモチベートするのではなく、基本的価値観を大切に、ひとりひとりが規律の文化をもって、進歩を促す。

まるで大きな石車を押しているよう。初めはゆっくりだけど、いずれ猛スピードでとまらなくなるサイクルをみんなで回し続けよう、という概念。

ひとりひとりが、餅の絵をみて、「現実にはないんだよ」と嘆くのではなく「今年も美味しい餅を作って、自分たちの信じるいい仕事しようぜ」って、向き続けるためのきっかけを届けるのが、カルチャー推進担当の仕事だと思います。

認知→共感→理解→内在化→行動→成果 の橋渡しを意識する

「社として大切にしていること」が「個々の意思決定・行動」に落ちたときに、偉大な文化が回りだし、望む成果につながる。

とは言っても、「これ社の大事なことだからよろしく」「はい!明日からやります!」とは大抵なりません


認知→行動には、大きな隔たりがある。


だから、そこを丁寧に体験設計していく必要があります。


わかりやすいところだと、バリューやクレドをカードにしてみたり、CEOメッセージを社内報で発信したりする施策があると思います。

これらも重要な一つのピースです。

しかし「認知・理解」できれば、「即行動」できるわけでもない。

完成した考え方ではないですが、ざっくり下記のようにプロセスがあると踏んで、どこにアプローチするのか、あたりをつけていくようにしています。

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【認知】:社としての考えを知る。記号としての理解
【共感】:何かしらの機会を通じ、自分の中のセンサーに触れ、共感を覚える。この人達を、いい未来を一緒に実現したいと思うようになる。
【理解】:記号として覚えているだけでなく、背景の考え方、大原則、実践知などを参考に、実現したい未来にむけて、意味ある運用をするために、深く理解していく。
【内在化】:「社が大切にすること」が「自分が大切にすること」に変わるプロセス。実際の、自分の行動に影響を与える
【意思決定・行動】:判断が難しい局面が続く中でも、基本的価値観をベースにしながら、実現したい社会・ユーザーへの価値・ありたい自分たちの組織にむけたアップデートを重ねつづける

ざっくり、このようなプロセスがあると捉え、ひとりひとりの、進歩を生む活動に、何を添えたらいいのか、考えていきます。

なお共感と理解は、人に寄って差があり、順序は逆だったりするかもしれません。

「そもそも共感しないと、理解しようともしない」という人もいれば、「全体的に理解できてはじめて、共感の扉を開ける」人もいるでしょう。

必ずしも1対1で、上記プロセスと施策が紐付いているわけではないのですが、HEARTFULチームで行う各施策は、およそどのプロセスにアプローチするのかを意識はしています。

ここからは、STEP別の施策例と意図を紹介しますね。

社内メディアで認知・理解を促す

根本の哲学「アカツキハート」や、アカツキらしさを掴む言葉&物語集としてのカルチャーブック「アカツキのコトノハ」

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これらのものはあくまで「認知」をベースとしたツールとなります。

中には、読むだけで、「うおおおおおお、自分の人生がつまっている、共感の嵐」なんて人もいますが、大抵の場合「アカツキというチームではこれらを大切にしているのだな、まあいいこと言っているな、ふむふむ」どまりだと思います。

アカツキのコトノハは、実際のひとりひとりの物語も添えることで、理解・共感にもすすめられるといいなという願いから、「言葉&物語」を一緒に伝えています。※2〜3年に一度のペースで更新中です

カルチャーブックについては昨年のアドベントカレンダーで書いたこちらを

2020年になってカルチャーポータルも新設

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リモートワーク中心になってから、主戦場を「オフィス」から「slack&ポータル」に移しつつあります。オフィスにいけば、雑談も含め、その風景から多くのことを感じ取っていました。

人は1秒あたり1100万ビットもの情報を受け取っている。しかし40ビットほどを意識的に選択して認識しているといわれていますが、その受け取る情報のほとんどが「PCのモニター越し」になりました。

よって、2020年は、モニター越しに見える内容の充実が重点テーマになってきています。

カルチャーポータルでは、「実現したい未来」と「現在進行系のアカツキ」「これまでの歩み」が更新され続けます。

上述のアカツキハートなどの根底で大切にすることや、中長期方針などのゴール、発表時の経営陣のメッセージ。

各ギルド(事業部や部にあたるものの社内呼称)からの振り返り&方針発表。各プロジェクト一覧や、月次のKPI共有など、あらゆるものがLIVEで生まれるたびに、ポータルにストックさせていくようにしています。

ミッションや哲学が、アカツキの文脈や背景の考え方、日々の歩みと重なることで、単体で見ると「記号」でしかなかったものが、生きたものとしての運用するものとしての統合的理解をすすめていくヒントになればと思っています。

週1回、全社で集まる週次報告や、月1回の新チーム発足共有、各PJTのKPI共有などを通じて、アーカイブをslackに投下することで、導線を確保しています。

なおこれは、GoogleSiteを活用しています。弊社はgmailベースで運用しているので、権限設定もセキュアに設定できます。社内人件費を除けば、セキュリティ面も含めて、0円でサイト運用できているので、とてもおすすめです。

イベント・場を通じて感じる、心と身体での共感。

頭で理解できても、心が納得していなければ、根気強い行動は生まれません。理解だけでなく共感も大事と考えます。

共感のプロセスは「べき(MUST)」が「したい(WANT)」に変わる瞬間づくり、とも言えるのではないでしょうか。

年に1回社会ビジョンで触れられている「ハートドリブンな世界」を、自分たちで創造する「周年祭 A Heart Driven Fes」

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みんなの抱負を日本の新年行事にのせて、鏡わり、餅つき体験や書き初めで楽しむ「新年祭」

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これらはオフ体験を通じて、ビジョンを形にしたり、楽しみながらそれぞれの思いをシェアする場です。

半年に一回の全社オフサイト「Akatsuki Mashup Day(略称マッシュアップ)」

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こちらはより仕事に近いオンの場です。

午前中は全体セッションで、ミッションなどについて深く潜る場を用意。午後は、メンバー発の複数のセッションに分かれて参加するカンファレンスになっています。

いずれも「ミッションや価値観を現実化し、体感覚で感じる」「実際の楽しさ・満足感がある」の両面を意識しながらイベントづくりに励んでいます。

※2020年11月はMASHUPをオンラインで開催しました

「分かち合い」「潜る場」を通じ、内在化を促進

これは、アカツキに特徴的なプロセスなのかもしれません。

せわしなく事業が進む中「感じていることを分かち合おう」「1時間潜ってみよう」ということは、発信側としては、とても勇気がいることです。

「そんなことしている暇があったら、目の前のトラブルを解決したい」

「リリースまで一刻を大事にしているのに、、そんな時間の使い方は・・」

実際こうした声も実際飛んでくることもある時間です。

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ともすると、仕事をしていると、左側のThink(Do)ばかりをつかっていて、右側のFeel(Be)を大事にする時間がとれないこともあるのではないでしょうか。

このExternal× Feelにあたる時間が意外と漏れがちで、本音レベルで潜って話す時間をとると、妙なすれ違いや、普段見えていなかった何かが明確になることがあります。

「自分にとってエンタメってこんな意味があったんだ」「全然伝わらないと思っていたけど、実は受け取ってもらえていたのか」「このメンバーで一緒によくしていきたい」「言語化できていなかったけど、モヤモヤの原因ここにあったのかもしれない」など。

場から起きるものは様々ですが、それぞれの感覚や体験談を語りあう時間を設けていると、言語化されたり、自分ごと化されていくことがあります。

なにかの発表の後など、意図的に「分かち合い」「潜る」場を入れる。

すると、「企業が大切にすること」「チームが大切にすること」「みんなが大切にすること」「私が大切にすること」と一貫性を帯び、内在化につながっていくことがある。

そう信じ、行っています。

「良い習慣」を通じ、日々の行動や意思決定を振り返り、向きなおる

また、アカツキにはプロジェクト発足時の「Great Question」、半年一度の振り返り「すごい振り返りアカツキver」など、Greatな弾み車をまわすための問いを、節目節目で用意しています。

プロジェクト発足の「why」にたちもどったり、ゴールにむけた論点をあらいなおしたり、チームの状況についてKeep Problem Tryを出し直したり、一定頻度で振り返り、向き直ることで、自分たちなりのペースメイクをしています。

イベントは、瞬間風速にすぎず、日常の仕事にひとりひとりがどう意思決定し、行動するのか、その継続性があることが、実に効果的。

習慣設計がまさに文化のリズムをつくると考えています。

新メンバーがオンボードできる90日を創る。

また新メンバーが会社に適応して、存分に仕事で価値発揮できるようになるまでのプロセスデザインとして、オンボーディングプログラムを設計しています。

「歓迎、人間関係構築、期待値、学び、成果、5つの壁があり、取り除く必要がある」と、元googleのピョートル・フェリックス・グジバチ氏も言っており、弊社でも参考にしています。

受け入れやコミュニケーションの道作り、目標設定など、90日間、受け入れ担当・トレーナーによる1on1はもちろん、人事担当によるヒアリングを重ねながら、順調にオンボードできているかをフォロー。社のシステムとして改善すべきところはあるかを、人事と職能GMとで月1の頻度でシェアしながら改善活動をすすめています。

その中で、文化面でのオンボーディングプログラムも、週1回で5週にわたり開催。

推薦図書(7つの習慣/ビジョナリー・カンパニー/新1分間マネジメント)やアカツキの根本の考え方を軸に、体験や思考を分かち合う機会を設けています。

アカツキの文化の考え方は、感情を丁寧にあつかったり、なんとなく青臭いとか宗教みがあって不安とかいう印象を頂くことも実際あるのですが(笑)、事業の成功や企業の長期的成功、人間の本質的な幸せを両立すべく突き詰めて、時折アップデートしながら作っているものでもあります。

時代を超えた原則や、グローバルエクセレントな企業が取り入れている考え方を参考に、ある種忠実に向き合い、自分たちなりにアレンジしている側面もあります。

そのベースの考え方を共有したあとで、アカツキの考え方を見つめると、「なるほど、そういう背景があったのね」と理解いただけることも多いです。

また、今後実現したいこと、これまでの体験、今目の前で見えている出来事をシェアしながらすすめるので、入社同期メンバーとの相互理解もすすんでいきます。

これらの場を経て、アカツキ文化の「認知・理解・共感・内在化」までのプロセスを2ヶ月ほどで1周回すことを意識しています。

常に未完成。アップデートし続ける

文化活動は改善を続けていますが、完成することはありません。5年間の仕事の中でたくさんのしくじりがありました。生み出した施策が過疎化したり、大スベリすることもありました。

文化を実際につくるのは、働くひとりひとり。しかし、花が咲きやすい土壌はある。その土壌をせっせと耕す。メンバーからのフィードバックももらいながら、文化の下地、システムを日々耕している感覚です。

ということで、一企業が取り組んでいる例をかいつまみさせていただきました。

今回はざっくりと大枠の考え方の紹介でしたが、明日は、事例も交えつつ、具体的な実践をもとにした「担当の心得編」を、お伝えできればと思います。

よかったらTwitterもフォロー・コメントなど反応いただけると泣いて喜びます。

明日もどうぞよろしくおねがいします!


人事アドベントカレンダー
【 クリスマス限定 】株式会社アカツキの人事広報部に所属するメンバーが、ハートドリブン&思いのままに綴った記事を毎日リレー形式で連載しています。
記事を読んでアカツキが気になった方は、ぜひこちらのHPへ遊びにきてください。▶︎ https://aktsk.jp/recruit/