目標とは何か?なぜ設定する?必ず設定すべき?良い目標とは?
はじめに
おつかれさまです。坪谷です。
今日は「目標」についてお伝えします。目標を立てることに悩んでいる方、より良い目標を立てたいと考えている方のご参考になれば嬉しいです。現在執筆中の『図解 目標管理入門』(2023年春にディスカヴァーより出版予定)の一部分を先出ししたものとなります。
ちょっとしたオマケもご用意しましたので、ぜひ最後まで読んでいってください。
Q1.目標とはなにか?
A1.目的を達成するために設けた「目じるし」
そもそも目標とはなんでしょうか。
その位置づけを知るために、周辺の概念を整理します。
目的と目標、そしてObjective
まず目的とは「成し遂げようと目指している事柄」です。そして目標は「目的を達成するために設けた、目じるし」のことです。例えば、目的が「家族が安心して生活できること」であれば目標は「安定した収入を得られる会社に就職すること」です。目的が「地球の温暖化を防ぎ未来の子供達を守ること」であれば目標は「CO2の排出量を25年後までに25.4%下げること」です。目的が「幼なじみの彼女のハートを射止めること」であれば目標は「彼女を甲子園に連れて行く」です。目的が「世界に平和な暮らしを取り戻すこと」であれば目標は「悪の魔王を倒すこと」です。
目的と目標は、どちらも英語でObjective。そしてObjectiveには「客観」という意味があるように、客観的にどのようなことを成し遂げようとしているのかを表現したものなのです。
目的をビジョンと言うこともあります。Visionとは英語で視覚、つまり目に見えるもののことです。その言葉のとおり、ありありと色づいて目に見える形で描かれた目的のことです。
目標を狭義ではターゲットと呼びます。「目じるし」であり、弓矢の的のことです。
役割と価値観、そしてSubjective
あなたが果たすべき役割・使命のことをミッションと呼びます。ミッションスクールがキリスト教の伝導学校であることからもわかるとおり、キリスト教の言葉です。もともとは「神の言葉を送り届ける」という使命を表していました。つまり大切な任務のことです。例えば「子供を育てる親」「プロジェクトを完遂させるマネジャー」「熱狂を届けるクリエイター」「社会のインフラを守る技術者」など。
あなたが大切にしたい価値観をバリューと呼びます。決して外してはならないこと、自らの行動指針(自己基準)であり、目的や目標を達成する制約条件となるものです。例えば「売り手よし・買い手よし・世間よし(近江商人)」 「死んでも女は蹴らない」 「常に謙虚であらねばならない(稲盛和夫)」「個をあるがままに生かす(大沢武志)」など。
役割と価値観はSubjective(主観)であり、 Objective(客観)と対をなす概念です。主観がなければ目標を達成するためのエネルギーはどこからも湧いてきません。
そして主観と客観の全体を束ねる概念が「理念」です。理(客観)と念(主観)とを統合することで理念となります。
目標とは目的を達成するために設けた「目じるし」だとわかりました。次に、なぜ目標を設定するのかを考えます。
Q2.なぜ目標を設定するのか?
A2.集中・協働・フィードバックが得られるから
なぜ目標設定を行うのでしょうか?得られるメリットは3つ、集中・協働・フィードバックです。順に見ていきましょう。
①「集中」が成果を最大化する
目標を設定することで、自分の力を集中することができます。 P.F.ドラッカーは「成果をあげるのは能力ではなく、集中するという習慣である」と言い、エリヤフ・ゴールドラットは「すべてに集中するのは、どれにも集中しないのと同じだ」と言っています。
つまり、目標を設定すると、集中することによって成果が最大化するのです。また、集中が没頭を通じて夢中に進化したとき、あなたはフロー体験を味わうことになります。これは仕事の内的報酬の中でも、もっとも純度の高いものです。
②「協働」がやり切る力をくれる
目標を設定して公開することで、同じ目的・目標を目指す仲間や、あなたの目標を応援してくれる支援者と出会える可能性が生まれます。必ず協働が生まれるとは限りませんが、目標を設定していなければありえなかった関係性が、生まれるかもしれないのです。ゼロとイチはまったく違います。
共に進む仲間がいることはお互いを高めあい、やり切るための大きな力になってくれるでしょう。
③「フィードバック」で自覚し成長する
目標を設定すると、2つのフィードバックを得ることができます。
1つ目は、目標自体からのフィードバックです。自分の内側にある考えを言語化する過程で「自分はこんなことをやろうとしていたのか」という気づきが必ずあります。言葉にしなければ知らなかった内的・外的な事実が、あなたの成長を促します。目標が書けなくて苦しいのは、まさに成長痛なのです。
2つ目は、成果からのフィードバックです。多くの人は、実は自分の「強み」を知りません。目標を置き、実行してみて、実際に「できたこと」があなたの強みです。成果を目標に照らしてみると、想像していたのとは全く異なる「できていない」こと、そして予想もしていなかった「できている」ことに驚かれると思います。この2つのフィードバックを受け止めて「自覚」することが、成長の第一歩です。
最終的な狙いは「夢を叶える」こと
集中・協働・フィードバック、これらを続けた結果、あなたは自分自身の力で「夢を叶える」ことができます。それが目標設定の最終的な狙いです。
では目標は必ず設定しなければならないのでしょうか?
Q3.必ず目標を設定しなければならないのか?
A3.無理に設定する必要はない。強要は逆効果
必ず目標を設定しなければならないのでしょうか?
無理に設定する必要はない、と私は考えています。その理由は3点あります。
1つ目、無理やり立てた目標では効果が低いからです。2つ目、目標を立てることには一定以上の心の負荷かかるものだからです。3つ目、目標を立てなくても進める場合もあるからです。順に見ていきましょう。
①無理やり立てた目標は効果が低い
目標は自ら設定するものであって、誰か他者から強要されて設定するものではありません。魂の入っていない目標なら立てないほうがマシです。無理やり設定した目標では、自分を集中させることも、他者からの協働を得ることも難しいでしょう。そしてフィードバックは苦痛しか生みません。自分の心が動いていないのであれば、目標を設定する必要はありません。いや、むしろ設定してはならないのです。
②負荷が重すぎるときは中止する
目標を設定することは、元来ワクワクする楽しいものです。しかし、コンディションによっては苦痛を伴うときもあるでしょう。自分の内側を見つめ直し、外部環境や周囲の期待と統合する目標設定という行為は、心に一定以上の負荷がかかるものです。
適度な負荷はあなたが成長するために有効ですが、負荷が重すぎると感じた場合は危険です。中止することをおすすめします。また誰かに強要することは、絶対にやめましょう。
③なくても進めるならば必要ない
目標は自分を方向づけるためのものです。多くの人にとっては有効ですが、目標を設定しなくても前に進めるのであれば、無理やり設定する必要はありません。とくに「価値観」を大切にしている人は、特定の目標を置くよりも、瞬間瞬間に起きていることを自分の基準に照らして対応して行くことで、前進し続けることができるでしょう。
しかし、少しでも興味があれば一度、あなた自身の手で目標を設定してみることをおすすめします。あなたの知らなかった新しい世界が開けると思います。
会社の目標シートを埋めるには
いまは目標を設定しないほうがいいとわかったとしても、会社のルール上必要だから目標シートを埋めなければならない、ということもあるでしょう。その時は、真の目標ではなく、方便であることを自覚した上で、ご自身が一番損をしない形で記入しておきましょう。
次は、良い目標設定について考えます。
Q4.良い目標の特徴は?
A4.努力しがいがある・うまくできると思える・誰かに語りたくなる目標
良い目標とは、どのような目標でしょうか。
①努力しがいのある目標
まず1つ目は「努力しがいがある」と思える目標です。困難であっても、努力する価値があると思える、実現してみたいと思える、そんな魅力ある目標が、良い目標です。魅力を感じる目標は、あなたの主観が強く反映されているはずです。
②うまくできると思える目標
2つ目は「うまくできる」と思える目標です。大変かもしれないが、自分が努力すれば達成することが可能だと思える目標を設定しましょう。
上司や会社、もしくは家族などの期待に応えようとして、または無理やりに要望されて「到底、自分には実現できない」と感じる目標を立てても、それはプレッシャーという苦しみしか生みません。無理やり立てた目標は効果が薄いのです。
逆に、一見無謀なほど高い目標であっても、あなたが「自分にできる」と思えるなら、追いかける価値がある目標です。
③誰かに語りたくなる目標
3つ目は「誰かに語りたくなる」目標です。仲間にとっても面白いのではないかと感じられる、つい語ってしまうような目標が、良い目標です。
あなたが組織を通じて成果をあげるために、周囲の仲間にとって魅力的であり、思わず応援したくなるような目標を目指しましょう。
理解可能で影響の輪に集中していること
前提条件として、まず理解可能な目標であることです。組織の仲間からの応援や上司からの支援をもらうために、誰が読んでもわかる表現になるように、言葉を磨きましょう。
次に「変えられるもの」に集中していることです。例えば景気や天候、自分では関与できない顧客の状況や経営層や上司の動向などは、あなたの目標にしてはいけません。それはただの関心ごとです(関心の輪)。目標は、あなたの努力によって結果が左右される内容(影響の輪)に集中しましょう。
おわりに
おわりまでお読みいただき、ありがとうございました。
以上の文章は、はじめにでもお伝えしましたとおり、現在執筆中の『図解 目標管理入門』(2023年春にディスカヴァーより出版予定)の一部分を先出ししたものです。
書籍全体の構成は下のとおりです。
原稿の締切は12月31日で、ただいまの進捗は83%と予断を許さない状況の中、私自身も目標を達成するため頑張っております。感想などお寄せいただけると励みになります。
私のお伝えしたいことは、以上です。
オマケ
最後に、これらの背景にある目標設定の理論をオマケとしてご紹介します。
目標設定理論
目標設定理論は、メリーランド大学のエドウィン・ロックらによって1960年代から研究されてきました。研究者たちに強く支持される重要な理論です。その内容は大きく2つ。
ただし、その前提として本人のコミットメントが得られている必要があります。つまり無理やり高い目標を持たせても、うまくいかないということです。
という調査結果が残されており、この理論は目標設定を行う際の常識と考えて良いでしょう。
社会的認知論
社会的認知論は、アルバート・バンデューラらによって1960・70年代から研究されてきました。目標設定理論の発展形と言えます。その特徴は「自己効力感」にあります。自己効力感とは、自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できると、自分の可能性を認知していること、つまり「うまくできる」と思えることです。
自分は「うまくできる」と思えているほど、より高い目標にチャレンジしそしてやり切ることができる、これは皆さんも実感があることではないでしょうか。そして自己効力感を高める要因は4つあります。
1.達成経験:自ら行動し成果をあげた経験
2.代理経験:他の人の行動・成果を観察することで、自分にもできるはずだと感じること
3.社会的説得:「君ならできる」などのポジティブな言葉を、周囲からもらうこと
4.生理的状態:精神的・生理的に安定していること
オマケは以上になります。