見出し画像

【赤の少女と白い虎】 13夜. 禁術の書

前回のお話はここから

最初からはこちら

。・。・。・


わたしは生まれてすぐに、ある人の元に預けられてね。


そこでは多くの子どもたちが、その師のもとで

世界のありようを学んでは旅立っていった。

その中でね、わたしは落ちこぼれもいいところだったんだよ。


星とも、風とも、石とも、花とも。

鳥ともうまく話せずにいた。とても長くだ。


まわりの子がどんどん上達してゆく中で、

自分だけが取り残されていく惨めさをいつも味わっていたんだよ。

2歩も3歩も出遅れ、その差は開くばかりでね。

まだ幼かったわたしは、人にほめられたくて仕方のない、ただの子どもだったのさ。


なんとかして師に認められたかった。

仲間に「すごい」と言われたかった。

誰かに自分を見てほしかった。

とにかく、それだけを考えていたんだよ。


自分は愛されていない。

だから愛されたい。

そんな夢をみていたんだ。


いまとなっては笑うしかないが。

なんて幼く、なんてまっすぐだったんだろうね。


ある日、書庫の掃除を任されていたわたしは、

棚の裏側で埃まみれになっていた本を見つけたのさ。


つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?