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『クリスとみちる』 13話 : 嵐のおと

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・・・僕、いま泣いてる?


 そう思った瞬間、ごしごし、と何度も目をこすった。


 クリスがそうっとティッシュをくれた。


 一所懸命顔を隠そうとしたけど遅かった。


 どんどん出てきて止まらなかった。


「・・・わたしはここにいます」


 そう言って、クリスはふわっと僕の肩にふれた。まるで羽のように。


 そこから一気にあったかいのが流れ込んできて、

 頭で考えてたことが一瞬で吹き飛んでしまった。



 気づくと、声を上げていた。



 僕は子どもだけど、もっと小さな子どもみたいに。


 床に突っ伏す、けもののように。



 それはまるで、ごうごうと、


 びゅうびゅうと、


 大きな台風が音をたてて

 体を通り過ぎていくようだった。

 

 いろんなものが目にも止まらぬ速さで、

 僕の中を全力で通り抜けていく。

 

 筒みたいだ。

 

 空っぽの体を、嵐が荒れ狂いながら通り過ぎていく。

 筒の僕は、それをただ感じている。

 

 声を上げて、涙と鼻水を流して、いまそれを感じてる。

 

 これが僕だ。


 

 なんだこれ? なんだこれ?


 一体なんなんだこれは?

 

 僕はいま何をしているんだ?

 


 わからない。

 


 でもしていることはわかる。

 

 でも何が起きているかはわかんない。 

 


 そんな考えさえも一瞬で巻き込みながら、

 何かが体をごうごうと通ってく。



 こんなふうに泣いたのはいつぶりだろうって

 頭の隅っこで考えながら、


 僕は筒になった自分をずっと感じていた。


〜続く

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