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【赤の少女と白い虎】 14夜. 欲望のありか

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。・。・。・


その書の中には、龍にまつわる儀式がいくつも書かれていた。


龍は知っているだろう?

そう、世界のすべての方向にかかわる力のありかだ。

だから門外不出の禁忌になっているのも知っているな。

その全てがそこにあったんだよ。


なんという不運だろう。笑ってしまうくらいにね。


ほの暗い書庫の片隅で、わたしは夢中になって読み進めたのさ。

すると、紅龍と青龍を腹に呼び込む秘儀が

目の中へまっすぐに飛び込んできた。


それを成したものは、人の巡りを見通すだけでなく、

世界の礎の一部になる、とあった。

その一文に、幼いわたしの心は釘付けになった。


これでもう、人にバカにされないですむ。

世界の礎という存在になれば、師も喜んでくれる。

わたしの世界の色彩は、この時に変わった。


その日から、心に一筋の希望の光が指したのさ。

そして誰にも言わずに、密かに準備を始めたんだ。

儀式に必要な材料を、根気強く集めたのだよ。


山のいただきに3日間だけ開く、男神の花。

地中深くから自分の手で掘り出す、星色の水晶。

おっと、材料の話はここまでにしておこう。


とにかく、儀式に必要なものを手に入れるには、

それはそれは気の遠くなるような時間がかかったのさ。


いつもこっそり夜に抜け出しては見つかって、

炎のように怒られた。


そんな時間でさえ、わたしにとっては希望そのものだった。

望む自分になれるならと、

どんな厳しい仕置きにも耐えられた。


そんな風に相変わらず、落ちこぼれてはいたのだけれど、

少しずつ変わっていったこともあったんだよ。


〜つづく。

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