見た/映画「神は見返りを求める」　90分で手軽に味わえる地獄

ネタバレあり

岸井ゆきの可愛い

なぜ、ゆりちゃんは田母神への態度を変えたのか？

作中では語られないけど、見る人によって解釈が変わりそうだなと思った。

ゆりちゃんが途中から急につっけんどんな態度を取りはじめて、でも田母神は突然のことで戸惑って、みたいな、そういう人間関係の不可逆な動き、わたしにも身に覚えがある。

自分自身の3年前の出来事を思い出す。

わたしは27歳で会社の異動で東京に出てきて、異動先の部署の課長（50歳）にプライベートで仲良くしてもらっていたことがある。具体的には、ずっとLINEをしたり、時々電話をしたり、休日に遊びに連れて行ってもらったり（しかも課長のバイクに二人乗りで）といったことがあった。プライベートで仲良くしていることもあり、仕事のやり取りもスムーズで、「癖の強い人」と周囲から敬遠されている課長とうまくやれている自分に自信を持っていた。

もちろん、プライベートで付き合いがあることは一切誰にも言ってなかったけど、わたしと課長の仲の良さをいぶかしがった先輩に「え？〇〇さん、課長と寝たの？笑」なんて、酒の席で下世話にいじられることもあった。

配属後半年くらいはそんな感じで、プライベートでは仲良く、仕事もスムーズで問題なし、憧れていたバリキャリ東京生活を謳歌している自分に大変満足していた。

事態は少しずつ嫌な方に進展する。

なんとなし、課長からのあたりがキツくなっていた。それは、憎くてあたられてるというよりは、「これくらい言ってもいいだろう」というよくもわるくも配慮しない「君と私の仲なのだから」みたいな、そういう免罪符の元に物を言われることが増えた。

わたし、割と喋るし、冗談も言うし、おどけるし、だから気づかないかもしれないけど、内心すごく傷ついてた。他の子は配慮されるのに、わたしは配慮してくれないの？と。

※悪い癖というか特殊能力みたいな物だと最近思うのだけど、あまり相手に構えてほしくなくてわたしから気楽な空気を出したら、相手が「親しみやすさ」と「舐めていい」を読み間違えてズケズケくるようになる。いや、そこまでしていいって言ってないんですけどって毎度なる。

なんでこっちが敬意もって接してんのにお前は敬意なしでくんだよ。おかしいだろ。

実はゆりちゃんも内心嫌だったとか？

ゆりちゃんが途中で「結局ユーチューバーのことバカにしてるでしょ」って田母神に聞くシーンがあった。わからないけど、ゆりちゃんは田母神に手伝ってもらって恩義を感じながらも、内心なんか見下されてるなあとずっと感じてたのかもしれない。でも自分は売れてないし、手伝ってくれるし、じゃあいい関係続けとこうって思っていた。

それがたまたま他のユーチューバーとのコラボで大きく自分が取り上げられて、意外と自分っていけるんだ、やれるんだって気づいたことで「え、じゃあわたしのこと見下してたおじさんと仲良くする必要ってなくない？わたしこっちのコミュニティを大事にしてたらそれで大丈夫そうじゃない？」と方向転換をとったのかもしれない。

少なくとも私はそうだった。課長にあれやこれやズケズケ言われる中で、でも上京したばかりで友だちもいない、うっとうしいけどまあ頼りになるしなってズルズルLINEで連絡とかを続けていたし、会っていた。

でも、その生活の中でマッチングアプリを始めて、気軽に遊べる男の人だったり、最終的に彼氏もできたことで、「え、無理にズケズケ言ってくるおじさんと関係続ける意味なくない？」となったのだ。

そして、LINEの連絡の頻度も減らして、徐々に会わなくしていった。あちらからしたら、え？突然なんで距離取るの？って感じかもしれなかったが、わたしとしては随分前から「この関係あんまり好きくないな」って思ってた。辞めるきっかけがなかったから続けてただけで。

まあさすがにゆりちゃんのあの態度はひどいと思うけど。わたしはあそこまで搾取してやろうって体質でないから、見ててちょっと田母神に同情した。（でもそのあとの田母神の反撃でどっちもどっちかなとか思ったり）

相手との距離の見積りが食い違う

自分としては10段階中の5くらいの関係だなって思ってるのに、相手の男性が勝手に8くらいで来て、「おかしい、俺は8（で、絶対彼女も8ないし9くらい）の関係だったはずが、いきなり距離置かれた…」みたいな距離感の見積りの食い違いって割とよくありそう。

おまけ：課長との今

付かず離れずでやってます。2ヶ月に一回ペースでLINEも来るけど、そこまで鬱陶しくないから返す。会社でもたまにズケズケっとしたこと言われたら、わかりやすく「そういうのは嫌ですね」って顔に出すようにしてる。

でもこういうことあるから、人と親密になるのが怖くなるんだよね。初対面の人にすぐ距離詰めて仲良くしようとするのやめたいなと思う今日この頃です。