音楽の聴き方 その1


 今回のnoteのテーマは“音楽の聴き方”です。ちょっと風呂敷を広げすぎかもしれないですが(笑)、そりゃもちろん音楽の聴き方は人それぞれですし楽しみ方は自由です。今の若い人には若い人なりの聴き方もあるでしょう。ややもするとオジサン特有の “昔は良かった話”に陥る危険性も孕みつつ、好きな音楽の見つけ方や、沼のはまり方なんかを提案できればと思って書き進めた次第です。

・ 音楽メディアの変革

 一昔前まではCD、それよりも前の時代はレコードを売ることで音楽ビジネスが成り立っていたわけですが、現代は御存知の通りインターネットが発達して、Youtubeや各種音楽配信サービスによって手軽に様々な音楽が聴けるようになりました。音楽ビジネスの在り方に関する議論はさておき、リスナーにとってはとても便利な時代になりましたね。CDやレコードなど音楽メディアを買う時代から、音楽そのものを楽曲単位で買う時代になったともいえますが、いずれにしても音楽の聴き方そのものが変わりました。

・ 組曲や曲順の良さ

 各種音楽配信サービスによって便利になった反面、失うこともあるわけで、そのひとつはアルバム単位での楽曲の良さや組曲的な楽曲が評価されにくくなったことではないかと思います。LPレコード時代は片面約20分以内でA面とB面という時間的制約などがあった関係で、曲順はとても重要な意味がありました。レコードは聴くのに手間が掛かるし曲を飛ばしにくい……。聴き手に自由が与えられなかったからこそ、生きた楽曲もあります。

 筆者的には、例えばジャクソン・ブラウンのセカンド・アルバム『フォー・エヴリマン』は、最後の2曲が繋がっていて、流れで聴いてこそ感動できる作品だと思います。Apple Musicなどで最後のアルバム・タイトル曲だけを聴いても何のことやらです。じゃあ9曲目から聴けばいいかというとそれも微妙で、A面の5曲目を終えてB面にレコードを裏返しする作業を経てアルバム全10曲を聴かないと感動が半減してしまいます(笑)。余談ですが、このアルバムにはベースでリーランド・スクラーも参加しているし、ラス・カンケルのドラムのアレンジも最高です。とても良いアルバムなのでApple Musicで楽曲を気に入ったら是非レコードでも聴いてみてください。

 もうひとつ余談で、CDの時代になって洋楽は特にボーナス・トラックが追加されることが多くなりました。たくさんの楽曲が聴けて嬉しい反面、ボーナス・トラックがあることでアルバム全体が無駄に長くなったり、アルバムとしてのまとまりがなくなったりしますよね。例えばそうですね……やっぱりジャコ・パストリアスのファースト・アルバム『ジャコ・パストリアス』は9曲目で終わって欲しいなと(笑)。あのピアノで終わってこそなわけで。いや、別テイクとかが聴けるのは嬉しいんですけどねぇ……。

 そういえば、自分がバンドでアルバム作品を作った時のことを思い出してみても曲順は拘っていたなぁ……と。曲数に関してはまた別の問題が生じたりするんですけど(笑)。

・ アルバム・ジャケット


 さてもうひとつ、各種音楽配信サービスによって良さを失ったと思えるのがアルバム・ジャケットです。純粋に音楽データのみに対価を払えるほうが健全だと考える人もいるし、アルバム作品は楽曲だけでなくアルバム・ジャケットを含めてのトータル・アートだと考える人もいるでしょう。楽曲作品の特性によっても色々な考え方があると思います。

 各種音楽配信サービスではアルバム・ジャケットなどのヴィジュアル情報も付随しますが、付加価値としてはLPレコードのアルバム・ジャケットが断然優位だと思います。例えばレッド・ツェッペリンのアルバムは小窓の中が変わったり、封筒に入っていて買って開けてみるまでジャケットのデザインが分からなかったりと音楽を聴かずとも楽しめるギミックが詰まっていて、デジタル・データにはない“物”としての魅力がありました。レコードはほどよい大きさがあるので単純に部屋に飾っても“映え感”が高いですね。

 今となっては死語か、別の意味で使われることも多い“ジャケ買い”ですが、自分は実際にこれで何枚かレコードを買ったことがあります。例えばケイト・ブッシュのデビュー・アルバム『天使と小悪魔』はジャケットが6種類あるそうですが、その日本盤(ケイト・ブッシュ本人のアップ)は目力が凄いのが気に入って、かなり長いこと部屋に飾っていました。「嵐が丘」、すごく好きな曲なんですが、今となっては某テレビ番組のテーマ曲で有名みたいですね。

・ クレジット


 クレジットというのは誰が作曲したとか、演奏しているのは誰とか、そういう楽曲に関する情報ですね。各種音楽配信サービスでは作詞作曲者のほか歌詞が出る楽曲もありますが、クレジットの詳細が出るのは稀だと思います。現代はインターネットに情報が溢れている時代ですから、欲しい情報があればリスナーが自発的に取りに行けばいいだけかもしれませんが。レコードやCDなど、文字情報があるアルバム作品は、その音楽を聴きながら参加メンバーなど付随する文字情報を読むことで、その楽曲に深く入り込んで聴きこむことができたり、新たな情報を得たりできました。

 前回のnoteでも紹介したリッキー・リー・ジョーンズのデビュー・アルバムがまさにこんな感じで、筆者としてはクレジットに書かれたウィリー・ウィークスのFender Bassという記述でアルバムをより深く楽しめたわけです。

 洋楽全般の日本盤に封入されていた解説(たまに駄文もありますが)で有益な情報を得ることも多くありました。また、作品を作る側としても、協力して頂いた方に感謝の意を表するスペース(いわゆるスペシャル・サンクス)があるのは有り難かったです。

 因みに音楽作品の付随情報に関してはインターネット上にたくさん散らばっていますが、中でも(洋楽中心ではありますが)過去の音楽作品のクレジットをデータベース化したサイト、Discogsにてかなりの確率でアップされているので、こういった情報を探している方にはオススメです。

・ 続きますが、まとめます


 文字数が多くなってきたので、今回もまた次回に続きますが、ひとつ断言できるのは音楽の聴き方は人それぞれですが、好きでないと聴き続けることはできない、ということです。他人に強要されたり、音楽の勉強のために無理やり聴き続けたりしても結局は興味を失ってしまいますよね。あと、今回の記事はレコード万歳な懐古主義のように読めるかもしれませんし実際に筆者はレコードも好きですが、音楽配信サービスも否定はしません。どちらも良いところがあります。時代に合わせて音楽の楽しみ方も変化していくのだなあと実感しています。

 いずれにしても筆者のnoteが深く音楽を楽しむキッカケのひとつになれたら幸いです。

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