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自分とはまるで違うのにどうして共感するのだろう【わたしの読書道②〜10代・思春期〜】

『Web本の雑誌』の人気連載『作家の読書道』に感化されて、わたしも自分の読書遍歴をまとめてみたくなりました。幼少期編に続き、今回は「思春期編」です。

恐ろしいことに、10代のころ読んだ本というのは、内容はもちろん、その当時の状況や空気感、匂いなんかも鮮明に覚えているものなんですね。わたしの場合、おもに授業中、教科書に隠して読んでいたときの記憶がぶわっとよみがえってきて、甘酸っぱい気持ちになってしまいました。

『TUGUMI』(吉本ばなな 著)

なにはなくとも、吉本ばななですよね。13歳、はじめて彼女の本を読んだ前と後では、自分がまるっと生まれ変わったような気がしたものです。あたかも自分にも繊細な感受性が備わっていて、「自分は特別な存在である」と錯覚させられた女子中高生はわたしだけではないでしょう。『アムリタ』も大好き。

『ぼくは勉強ができない』(山田詠美 著)

吉本ばななに並んで、わたしを新世界に導いてくれたもう一人は山田詠美です。高校生が主人公なのに、なんでこんなにわたしと違うの? 周りにもこんな子いないよ。都会的で達観している(ように見える)登場人物に憧れ、やけにリアリティがあるのに決して現実的ではない世界に夢中になったことを思い出します。この一冊をきっかけに、よりディープな山田詠美ワールドへと足を踏み入れることになったのでした。

『兎の眼』(灰谷健次郎 著)

灰谷健次郎を最初に読んだときの衝撃たるや。同じ国なのにまるで違う世界の住人のような子どもたちの姿は、目を背けたいのに目を離せない存在として、今でも心の奥底にべったりとこびりついています。kindle unlimitedに入っていたので、懐かしさから読んでしまいましたが、やっぱり2〜3日引きずってしまいました。

『アタシはジュース』(延江 浩 著)

『アタシはジュース』って名作だと思うんだけど、わたしの周りでは読んだという人がおらず、「あまり一般ウケしない話なのかな……」と思っていたのですが、実写映画化されていたんですね。青春のみずみずしさや、一風変わった恋愛に酔ってしまう未熟さが伝わってきて、胸がキューーーっとなった記憶。読んだ当時、主人公と同年代だったからこそ響いた話なのだろうと思います。

『皮膚と心』(太宰治 著)

短編集『女生徒』の一編『皮膚と心』は、確実にわたしの恋愛観・結婚観に大きな影響を与えました。今でも理想としているのはこの小説に出てくる「旦那さま」。主人公は卑屈で自己肯定感低め、高望みなんてしないわきまえている女性ですが、控えめでありながらプライドの高さをうまく隠している様子は、まるで自分を見ているみたいで心がギュッとなります。そこに旦那さまの不器用な愛情がパズルのピースのようにぴたっとハマる瞬間が、とてつもなくドキドキさせられるのです。

『ゲルマニウムの夜』(花村萬月 著)

これまで読んだことがないほど刺激的で衝撃的、エロス&バイオレンスにまみれているのに、ページをめくる手が止まらなかったことを覚えています。花村萬月の他の作品も同様ですが、読んでいる間じゅうずっと動悸が止まらない感覚で、「ああもういやだ。こんな世界観に入り込みたくない」と思いながらも読んでしまう。それを味わいたくてまた読むーー。そんな沼にはまったはじめての作品です。

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自分の青春時代を振り返って、自虐的に「中二病(笑)」とか「ダセー」とか言って予防線を張るのって、過去の自分を否定しているようで悲しくなります。別にいいじゃん、はやりもの追っかけてたって、芸術性のない大衆娯楽に夢中になってたって。それは間違いなく今のわたしを創り上げてくれたものなんだから。読書遍歴なんて、かっこつけようと思えばいくらでもかっこつけられるけど、やっぱり自分に嘘はつくもんじゃないと思うのです。なので、正直に。

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