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未来のかたまり

「こっちの世界へようこそ」

それが,わたしが最初に娘にかけた言葉だ。

去年の今頃,わたしは抜け殻のようになって仕事をしていた。

夏の終わりに仕事を辞めたいことを職場に伝えてからというもの,憑き物も,ついでにやる気も,きれいさっぱり落ちてしまったのだった。

意地になってがんばっていた時の方がまだ楽だったかもしれない。何がツライって,やる気が無くても仕事はこなせてしまうこと,それゆえにどんなに仕事をこなしても達成感が湧かないし,仕事にキリが無いように感じることだった。

そうしてしばらく自分がスカスカになっていたら,すぽんっとお腹に赤ちゃんがやって来たのだった。当時,抜け殻もいいもんだなあなんて思ったことを覚えている。

数か月前にお腹から出て我が家にやって来た娘は今やぷくぷくに太っていて,泣いたり笑ったり,しかめっ面をしてみたりまた笑ったり,とにかく忙しそうだ。

その姿を見ていると,そろそろ首がすわるかな,寝返りがうてるようになるかな,離乳食はいつ頃食べてくれるようになるかなと,先へ先へと想像が膨らんでいく。

わたしはもともと過去にあんまり興味を持てないタイプなのだけれど,娘のおかげで本当に「後ろをふり返る」ということが無くなってきた。

どうみても赤ちゃんらしい顔をしていて,正真正銘赤ちゃんなのに,目の前に入園式を迎える娘とか初めての七五三を迎える娘の姿がくっきりと見えるのだ。実際に顔がどう変わるかは想像がつかないけど。

なんと言えばいいのか難しいけれど,娘を見ることは時計を見るよりもくっきりと,過去と現在と未来を,時間そのものを認識させてくれる気がする。

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