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Weekly Quest <電力問題・蓄電池>

(2022年6月27日号)


毎週月曜日にWeekly Questと称し旬な話題を深く掘り下げて投資のヒントにしていければと思います。


電力問題・蓄電池


先週は直流送電技術でスイスのABBという会社を紹介いたしました。今週は電力問題を語る上でなくてはならない蓄電池について見ていきたいと思います。

電気は長い期間貯めておくことができないことは皆さんご存知ですが、この性質のために人類は電気の発見以降、電力問題で四苦八苦しています。iPhoneも必ず充電しないといけませんね。長時間の外出時は予備のバッテリーを持ち歩くことになってしまいます。

今回はその充電池について見ていきたいと思いますが、ここでいう充電池は非常時に使うものではなく自然エネルギーの電力過剰供給の受け皿としての充電池を見ていきたいと思います。

第一週のブログ記事で自然エネルギーによる電力過剰供給が全体の電力ネットワークにとって厄介なものになっていると言う現状を見ていきました。アナリストが机上の空論と金儲け主義に基づいた戦略を国や業界が技術的な理論を無視して実行した結果、かえって混乱を招いているというのが現実です。

しかし、脱炭素は世界的に避けて通れないことで自然エネルギーを既存の電力源に追加して使わざるを得ないのも現実です。そこで問題になっているのが自然エネルギーの電力供給調整をどうやってやるかということです。

○電力調整のための蓄電池

先のiPhoneの例ではiPhoneの電池がなくなった時のためのものでしたが、長い期間使わないでいると充電池の電気も放電してしまい肝心の時に役に立たないケースも多々あります。これが電気の厄介なところで貯金のようにそのまま取っておくということが電気では不可能なのです。

そこで今後考えられるのが各家庭で蓄電池を設置するか、もしくは地域単位で自然エネルギーによる電力を集約し蓄電池を併設しながら系統電力網に接続するという方法です。

アメリカでConsolidated Edison(ティッカー:ED)という会社があります。この会社はNY州にある電力持株会社です。NY州はカリフォルニア州と並んで環境ビジネスに力を入れており、今後のモデルケースとして注目されています。売上高は2021年で136億ドル、純利益13億ドル、配当利回りは3.6%です。


(Investing.comより引用)


Consolidated Edison社
は主に太陽光発電の余剰電力を蓄電池で管理し域内の周波数変動を抑え安定的な電力を供給しています。太陽光が余るときは充電池に回し余計な電力を放電して調節しています。各家庭の太陽光を集約し発電所的な運用を地域で行い系統電力網に接続しています。

ちなみに、Consolidated Edison社に家庭用蓄電池を供給しているのはTesla社ではなくSun Power社です。ティッカーはSPWRです。




太陽光発電と蓄電池というとなんとなく原始的な組み合わせのように思えますが、周波数変動を抑えるための供給調整や送電の最適化はやはりAIをつかったソフトを使うことになります。

しかし、単独の蓄電池やソフトを提供するだけでは安定的な電力供給を行うことは不可能です。ハードとソフトの両方を保有する総合的な電力プラットフォーマーが必要になりますが、日本と比較すると政府のバックアップ体制やファイナンスの機会が豊富だということも大きな利点であるとも言えます。


ところで、日本では蓄電池自体は素材も含めて家庭用から系統用までいろいろな企業が開発を行っていますが、価格をどうやって下げるのかが不透明です。価格についてはやはり政府の補助金をあてにするしかないですが、民間ファイナンスが弱いのが気になります。電力危機は国家の一大事なのにそれを回避するための技術やプロジェクトへの投資額はほんのわずかですよね。投資をするのに「リスク」がとれないというのは本当に致命傷だと思います。いつまでも苔が生えたような融資システムをさっさとやめて、アメリカのリスクテイクを少しは見習ったほうが良いと思います。

以上四週にわたって電力問題と投資のチャンスを探ってきました。現在市況は非常に不安定な動きをしていますが、こういうときは無理に買うことはせずに様子を見るというのも一つの手です。ゆっくりと投資対象を考えて買いのタイミングを探っていけば良いのではないかと思います。

ここで紹介した銘柄は将来の値上がりを保証するものではありません。投資は自己責任でお願いいたします。

最後までお読みいただきありがとうございました。


バックナンバー

Weekly Quest <電力問題> /(2022年6月6日号)
・Weekly Quest <電力問題・周波数変動> / (2022年6月13日号)
・Weekly Quest <電力問題・HVDC>/ (2022年6月20日号)

参考図書・文献

・デジタルグリッド / 阿部力也著 /エネルギーフォーラム
・電気学会誌 2019年7月号 / 「北海道の停電から電力系統を知る」438項
・SEIテクニカルレビュー・第181号 / 直流マイクログリッドシステム
・NEDO 直流送電技術におけるNEDOの取り組み 2019年6月4日
・日立評論 Vol.102 No.02 214-215 / 飛騨信濃周波数変換設備の特長技術 最新の直流送電プロジェクト
・日本風力エネルギー学会誌 Vol.41, No.2