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愛か?勝利か?ミラが最後に選んだ回復魔法物語

『最後の回復魔法』

ミラ達は死の淵にいた。

とても強敵なモンスターだ。
私たちのレベルでこの敵出現する?くらいのモンスターだった。

ミラは回復魔法をパーティーにかけ続けた。
自分は攻撃する暇はない。ずっと勇者、戦士、武道家と順番に回復魔法をかけ続けた。

私たちはこの強力なモンスターに勝てるだろうか?

そんな時、ミラは昨日の晩のことを思い出す。

勇者テベスに話があると森の奥に呼び出された。
そしてテベスに告白させたのだ。
「好きだー!付き合ってくれ」
あまりにも大きな声で、ミラはモンスターが来ないか辺りを見渡した。

「ダメ?」とテベスは言った。
まずはそういう問題ではなかった。
モンスターの気配はなく一安心した。

そしてミラは改めてテベスの話を聞いた。
テベスは本気らしい。
しかし、ミラには疑問な点があった。
それはテベスがミラの事を好きになった理由だ。

「いつもいつも俺の傷治してくれて、お前の優しさに惚れた。だから付き合って欲しい」

ミラは魔法使いだ。
魔法使いの役目はそういうものだし、あなただけじゃなく、みんなの傷も治しているし。
ミラは少し時間が欲しいといった。

そんなことがあった昨日の晩。
気まずい今日を迎えるはずだった。
しかし、今、そんなことを思っている状況ではない。
パーティーがピンチに陥っている。

もうミラのマジックポイントも底を付いた。
もう回復魔法使えるのは一回だけ。
誰を回復させるか?
一番素早い武道家か?一番攻撃力がある戦士か?一番バランスが整っている勇者か?
誰を回復させるのが一番いいか?
モンスターも流石に弱ってきている、あともう少し。

そうすると攻撃力が一番ある戦士。
戦士だったらあと2回攻撃すればモンスターを倒せるだろう。
論理的に考えれば、最後の一回は戦士に回復魔法を使うのがベストな選択。

よし、戦士だ。

ミラは杖を戦士に向けた。

…しかし戸惑う。
ミラはテベスを見つめた。

自分でも驚いた行動に出た。

ミラは回復魔法をテベスにかけたのだ。

なぜ?
説明できない。
なぜテベスに最後の一回を…。
どう考えても戦士に回復魔法をかけるべき。
その時ミラは初めて気付いた。

私もテベスが好きだと。

…パーティーは全滅した。

ミラは勝利より愛を取ったのだ。

これは正しかったのか?

テベスはミラの想いを受け取った。
しかし、モンスターには勝てなかった。

テベスは倒れる時、ミラを見た。
笑顔だった。
死ぬ直前とは思えないほどの笑顔だった。

しかし、ミラの脳裏にはそんなテベスの愛の幸せそうな顔より、テベスに回復魔法をかけた時の戦士の顔が…。
「なんでテベスやねん」という顔。
その顔がミラの脳裏に焼き付いたのだった。

人の愛、人の怨念。
ミラは同時に味わいながら複雑な顔をして倒れたのであった。


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