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馬の合わない店長との折り合いについて2

私はイタリアンレストラン『サーラ』で約二年働いていました。学生の頃から飲食店のバイトばかりしてきて、事務などの会社勤めをした年数より、飲食店勤務の年数の方が合計すると長いくらいです。

私は接客業が好きです。特に、お客様に「おすすめは?」と聞かれるとき。お客様の雰囲気や、今どれくらいおなかが空いているか、お連れ様のオーダーとのバランスなど考えてお答えするときに、自分の「お店の中での存在意義」みたいなものを感じます。ようするにやりがいです。

『サーラ』は個人経営の小さなお店です。カウンター5席、テーブルは12席(本当は16席ですが、狭いのであえて使わないテーブルをつくり、お客様が狭さを感じないようにしています。)
店内は、店長の上田さんがイタリアで買ってきた雑貨やポスターと、小さいながらも存在感があるピザ窯があり、上田さん曰く、「ナポリの人たちが通う地元の食堂」をイメージしたんだそうです。

お客様に少しでもイタリアの空気を感じてほしいとのことで、私たちはオーダーをとったりするときは「ターブラ、セッテオット、コマンダー!(テーブル7・8番 注文です)」「ベーネ!(了解!)」とイタリア語でコミュニケーションをとるように言われました。

バイトの人数は、私が入った時は私以外に4人。みんなオープン当初くらいから務めている人たちで、「勘で動ける」人たちでした。4人中2人は学生で、私が勤務し始めて1年たったころに、就職のため退職していきました。

その後、残った主婦パートの1人が体調不良で退職し、最終的にはベテランの主婦パート石田さんとペーペーの私、そして店長、この3人だけでお店を回すことになりました。もちろん、パートのどちらかがいないときは2人、パート2人とも休みのときは、店長1人が調理もオーダーもサーブもしていました。

上田さんは、イタリアで行われるマルゲリータ世界大会にも出たことのある人で、彼の作るまかないのマルゲリータは仕事のモチベーションを上げるものの一つでした。本当に絶品です。

今考えると、上田さんは私たち従業員が、やる気とやりがいを持てるよう、いろいろと気を遣ってくださっていたなと、しみじみ思います。私はパートながら、本当に『サーラ』で働けてラッキーだったし、従業員が少なくて、仕事はきつかったけど、毎日仕事が楽しかったし、友達や家族にもどんどんお店に来てほしかったので、よく招待していました。それくらい、誇れる職場でした。

でも、その職場はある日突然、本当に突然、なくなってしまいました。
今年の4月末日から、店長は来なくなってしまいました。

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