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おすそわけ日記 150 「ナソナとイソニ劇場〜だし巻きエスパー」

ナソナこと、母、七十七歳。生粋のおとぼけ。
イソニこと、私、五十二歳。ボケとツッコミの二刀流。
そんな二人が繰り広げる、愛と笑いとちょっぴり心配も詰まった日常。

昨夜、ふと、明日はだし巻き卵を作ろうと思った。

それは、夕飯に大根おろしが使われていたせいかもしれない。

じゅわっとした卵焼きに、お醤油をかけた大根おろし。

すごくそそるなぁ。

だし巻き卵を作っている自分の姿を想像しただけで、いい女度が上がる。

家庭的で素晴らしいね!

ほんわか妄想の海で眠りに就いた。


明けて、今日。

そんなことはカケラも覚えておらず。

仕事の準備をしたり、漫画を読んだり。

そこへ、突然と母が言い出した。

「だし巻き卵、作ろうかなぁ。」

なんと、エスパー!?


お母さん、私もだし巻き卵がいいなって思ってたんだよ!

だし巻き卵作る自分にウットリしてさ。

母、くるりと振り向いて「作るの!?」

いえ、おまかせします。


「だし巻き卵の作り方って、すぐわかる?」

え、今更?

「ちゃんとした分量で作ってみようかと思って。」

即行でレシピ検索する。

レシピを幾つか確認して、卵を茶こしで漉すという行を見つける。

「えー、漉すの?」

漉しますよ。私はこう云う一手間が好きですからね。

でも、焼くのは暑いから、いや。

これもまた、分業の一つの形。


出来上がっただし巻き卵、密にさらっと仕上がっている。

母が甘みが足りなくないかと気にしていたが、ほんのりで丁度いい。

出汁の鰹節も香っているな。

美味しくて、満足。


母と私は食べ物の嗜好が違うこともあり、

基本、夕飯がその日の私のストライクゾーンにハマることは少ない。

にも関わらず、私が食べたいと思っていた物がドンピシャで食卓に上がることがある。

これはやはり、超能力だろうか。

この能力をもっともっと開発していくと、

我が家の夕飯の献立を、私が牛耳ることができるかもしれない。


だし巻き卵を食べながら、そんな野望に燃え立ち、

母にエスパーの訓練をしてみたら、どうだろうと提案してみた。

例えば、夕飯の後に、お母さんが『あつ森』で遊ぶ姿が私には見えます!とか。

「それは、毎日、『あつ森』してるからね。」

うん、まぁ、そうなんだけど。


私、昨日の日記に、

斬新で、ワクワクする、楽しいことをしたいと書いたのです。

母娘で超能力開発って、まさにそれだと今、確信してて。

かなり面白いと思うんだよ。

如何せん、どうやっていいのかわからないんだけど。


そして、この訓練を続けたら、

私の食べたい物が毎日、夕飯の食卓に出てくるなんて、素敵すぎでしょ。

でも、それを口にしたら、きっと母はこう言うのだ。

「自分で買い物行って、作ったらいいんじゃない?」

目は『あつ森』の画面に向けたまま、私に言い放つ母の姿が、ありありと思い浮かぶ。


だから、私は口には出さない。

それがわかっている私って、やっぱりエスパー?


【今日の一枚】ほぼ母が作っただし巻き卵です。私は書いた物は全て音読してリズムを確認する癖があるんですが、母に聞いて貰ったら「ふはー」と云うため息の後に鼻で笑われました。「ま、文章はうまいけどね」うおー、褒められた気がまるでしない。

【#つづく日々に】のタグをつけて、日常で心ときめいたことを投稿する企画をはじめました。日常のよろこびをみんなでシェアしあって、笑顔が増えたら嬉しいです。

今日もおつきあい頂いて、ありがとうございます。

毎日、書く歓びを感じていたい、書き続ける自分を信じていたいと願っています。