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私の一張羅、学芸員資格

私が持っている少ない資格の中で、一番素敵なものは間違いなく学芸員だ。

学芸員資格とは、簡単に言うと美術館や博物館で働くことができる資格で、動物園や水族館への就職もこの資格があると有利らしい。

大学では西洋史(主に宗教史)を専攻しており、必修科目のほとんどが歴史に関わる授業だった。

古代ローマの賢人たちの問答を読み、
タペストリーに描かれた英雄伝の解釈を考え、
「カノッサはさすがに屈辱w」とか沸き、
ライトなオタクとしてキャンパスライフを謳歌していた。

そんななか、学芸員資格を取るための授業もひっそりと1年生からコツコツ履修していた。

学芸員の必須授業もめちゃくちゃ楽しい授業ばっかりだった。

長い巻物の正しい巻き方や、出土した土器を紙にトレースするやり方を勉強し、
夏休みの課題は「縄文人よろしく石や木だけを使って高麗石から勾玉を削り出す」だった。

こんなことを仕事にしたらさぞ楽しかろうと思ったが、美術館や博物館への就職は非常に狭き門で学芸員資格を持ってたところで易々と雇ってもらえるものではないのが現実だった。

まぁ就職については別として、だいぶニッチな知識を得ることが純粋に楽しかった。
普通なら知り得ない博物館の裏側というか、なんか分からんけどアカデミックな感じが厨二病を長らく患った私にはめちゃくちゃ刺さったのだ。

学芸員資格も、教職免許のように実習が必須だった。
美術館や博物館で2週間程度の実習。

私がお世話になったのは小ぢんまりした私立美術館で、竹久夢二をはじめ、大正から昭和にかけての日本人画家の絵を多く所蔵していた。

朝、美術館に着いたらまずガラスケースの拭き掃除。
ガラス用のスプレー洗剤をシュポシュポかけてひたすら指紋やらホコリを拭いていく。
これが一番しんどかったw
当然だけど美術館ガラス面多すぎ問題!

そして敷地内の池の鯉にエサをあげ、
花壇の花にじょうろで水をやる。

開館中は作業部屋で寄贈された絵の仕分け。

夢二はコレクターが多いからか、コレクションしていた方やそのご家族からの寄贈も多いようだった。
送られてきた絵を額装から外し、絵のタイトルや制作時期を調べる作業を行う。
もちろん素人の私は判別なんてできないので額を外すだけ要員。労力で報いるタイプ。

軍手をはめて、年季の入った古い木の額をトンカチでコンコンやって外していく。
気持ちだけはまじ匠。

ちなみにそこは女性職員3人くらいで回していたと記憶している。

午後も花に水をやり、
閉館後は各フロアの電気やスポットライトを消して終わり。

無事2週間の実習を終え、
「次来る時は入館料半額でいいよw」
など冗談を言われながら帰ったのを覚えている。

学芸員に必要な単位をなんとか取りきり、
大学卒業を以て晴れて学芸員資格を取得した。

全然関係ない職種に就いたし、学芸員にまつわる知識を活用する機会は皆無だけど、たまに思い出してニヤつくにはなかなかいい経験だったな。

昨日たまたま会社で「竹久夢二」というキーワードが出てきたので書いた日記でした。

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