大学4年間でn回読書会をした記録:The Final Season

この記事は続きものです。私は知識というものが連関を持つものであると考えているので、以下の記事をご覧になったことを前提にこの記事を書いています。しょうがないね(レ)。


第九回『民族とナショナリズム』

時期:3年秋
人数:3人(ここで後輩が抜けて、友人のツテで学部の先輩が参加することになりました)

 久しぶりにまともな歴史学徒っぽい本が選ばれましたね。歴史学とナショナリズムというのは切っても切り離せないもので、学究を深めるための思想的な理由だけでなく、教科書問題とか歴史戦のような歴史学と市井とが関わっていくためにもある程度その素養が必要だと思います。別に愛国心を捨てろ見たいなことを言うつもりはないのですが、多少はナショナリズムを相対化できるようになった方がいいんじゃないんすかね?(私はWBC日韓戦を大変楽しみながら見ていますが)

 しかし私はナショナリズムの相対化だけでなく、(とかく歴史学徒は)ナショナルな世界観の相対化もまた必要だと考えています。私はサークルの関係で所属していた文学部以外の人間と話す機会が多かったのですが、政治学科の後輩と話しているとそのことをよく突きつけられました。EUやASEAN、国連にグローバル企業など現代世界において主権国家の持つパワーは相対的に低下していますが、主権国家の全盛期である近代史をやっているとどうしてもそうした視点が抜けがちになってしまうものです。その後輩とも読書会をよくやったのですが、そうした自分にはない視点を提供してもらえるというのも読書会をやる大きなメリットの一つと言えるのではないでしょうか。

第十回:『リベラリズム 失われた歴史と現在』

時期:3年冬
人数:3人

 「また〜ismですか……やかましい思想クンですね……しかもリベラリズムとか、パヨク乙」みたいな声が聞こえてきそうですが、むしろタイトルにもある通り歴史の本なんですよね。「リベラルである」という言葉の意味を探るために、キケロにまで遡り、今ではアメリカのものとなってしまった「リベラル」という概念がいかにフランスで大いに発展したかということが書かれています。これを言うたびに友人から石を投げられるのですが、私自身は新自由主義よりの信条を持っているので「リベラル」の問い直しを行うためにこの本を読書会で取り扱うことを提案しました。あなた方の中でリベラリズムを学んだ者が、新自由主義者に対して石を投げなさい。上空に向かって放った石が私の頭に当たってしまいました。

 この本は読書会で選ぶにあたって、大学の先生にオススメされた本でもあります。「リベラリズム」について学びたいという話をしたらこの本をオススメされました(石の代わりに本を渡す者が本物の賢人なのですね……)。皆さんの地位がどのような状態かは知りませんが、読書会をするならその本は周りの賢人に薦めてもらうのも手です。というのも読書会と銘打って自分に合わない本を読むのは単純に苦痛だからです。そして「古典だから」「聞いたことがあるから」なんて理由で本を選ぶと大体失敗します。その本と格闘できるだけの前提知識を備えずに徒手空拳で難しい本に挑んでもそんなにいいことはありませんし、そういうことがしたいなら周りに迷惑をかけないように一人でやるべきです。幸いなことに賢人は基本的に本を読む若者が好きなので、読書会をしたいから本を探しているなんて餌を見せられたら必ず釣られてしまうものです。

第十一回:『ナショナリズムの歴史と現在』

どうでもいいけど第十回の本とめちゃくちゃ邦題が似てるね
時期:四年春
人数:3人

 なんでこんなペースでナショナリズムの本を読んでるんだ!もう書くことないよ!……嘘です。むしろ私のような様々なテーマにあっちこっちと定まらずに読書会をするよりも、一つのテーマの中で色々な本を選んだ方が良いのではないでしょうか。

 というのも私の場合は人徳で人を繋ぎ止められるので問題ないのですが、普通は自分に興味のないテーマの本が選ばれたらその人は去ってしまうものだからです(なんて言い草だ!)。そして同じテーマについて書かれた複数の本を読みこなすことは、そのテーマを深めることにも繋がります。前回も書きましたが、知識や本は決してそれ単独で存在するものではありません。ひろゆきが著した本ですら、彼がそれまでの人生で吸収してきた教養(敢えてこう言う)と確かに繋がっています。もちろん雑多なテーマの本を読み散らかすことで繋がる線も確かにあるのですが、そうそう起こるものでもないし、繋がってもしょうもない素人考えなことがザラです。でもさぁ!そういう最短距離で最大限の効能を出そうみたいなコスパコスパうるさい考えから抜け出したいからこうして読書会をして本を読んでるわけじゃん!ネオリベ的価値観を嫌っているお前らが、一番ネオリベ的価値観で学問と向き合ってるんだよ!!(←この人誰に対してキレてるの?)

第十二回『家父長制と資本制: マルクス主義フェミニズムの地平』

どうでもいいけど、高校生の時はガチで「うえのちづるこ」だと思ってた
時期:4年夏
人数:4人(後輩が復活しました。以後このメンバーで読書会は回ります。)

 「リベラリズムの次はフェミニズムとかwwwwwパヨク乙wwwwww」そんな声が聞こえてきました。まぁパヨクでいいんじゃない?でもやっぱり石を投げるからにはフェミニズムを学ばなきゃじゃんね。この本は僕じゃない人がオススメしてくれましたが、当然の如く読んでよかったと思います。上野千鶴子とか宮台真司とかイロモノ知識人枠になってしまった人でも初期の本ってちゃんとしてて面白いんですよね。最近の本ももちろん面白いんですけど(古市君はさっさと博士号取って)。

 さっきは喚き散らかしましたが、色んな分野の本を読むことは感情面だけでなく実利的な面でもやっぱりメリットに溢れています。というのもこの記事を読んでくれている人の年齢層はわかりませんが、あなたが今興味を持っているものが本当にあなたの興味を最大限引き出すものかどうかはわからないんですよね。そしてSNSというものが発達したいま、エコーチェンバーの中にいると自分の興味の外にある情報に触れる機会というのはなかなか無いものです。かくいう自分も2年の秋にとある本を読んで、ロシア史からアメリカ史へ転向しました(ロシア史の教授からは卒論提出後もお小言を賜りました)。私自身の身の上話はともかく、自分の興味の埒外にある本と関わる機会を逃さない手はないものです。読書会で薦めてくれるってことは一定の質が担保されているわけですしね。

もしもその本が、その男に出会わなかったら
もしもその男が、その本に出会わなかったら
天才を天才にした本、〇〇(←好きな本を入れてください)
本当の出会いなど、一生に何度あるだろう?

小括

 やっぱり終わりませんでした。The Final Season Part2 へと続きます。まぁこんなタイトルをつけた時点で薄々終わらないことは分かっていたわけですが……
例によって今回のポイントをまとめておきます。

  • 自分には無い視点を持つ人と読書会をしよう

  • 身近な賢人に本をオススメしてもらおう

  • 読書会では継続的に同じテーマについての本を読もう

  • 読書会では一つのテーマにこだわらずに様々な本を読もう

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