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消費増税の影響をNHKのスクランブル化で相殺できるか試算してみました

 消費税増税まであと半月。社会保障の充実を目指した増税により、日本全体でみると年4.6兆円の新たな国民負担が生まれます。こうしたマクロ的な数字だと肌感覚として分かりませんが、政府はキャッシュレス決済時のポイント還元などで負担軽減を図り、景気対策も同時に行っています。
 そこで今回は、
 「NHKスクランブル化により、消費増税分の国民負担をどれだけ軽減できるのか」
 について簡単な試算をしていきたいと思います。

 ただ、この試算は結構ややこしくて、マクロ的な数字で見ると大きなインパクトは分かりにくくなっています。というのも、現在のNHKの受信料収入は年間7,000億円程度であり、仮にその7,000億円負担が丸々なくなったとしても、増税負担4.6兆円の15%程度にとどまり、大きな負担軽減とまでは言えないからです。また、増税した税金は何かの使途に使われるわけで、国民経済全体でみれば、増税の負担は発生していないとも考えられるためです。
 そこで、今回はもう少し突っ込んで考えてみました。そこで焦点を当てたのが、NHKの受信料制度は一人当たりの負担を無視しているという事実です。というのもNHKの受信料制度では、世帯ごとの受信料負担を求めています。極端なことを言えば、一人暮らし世帯と、三世代同居10人世帯では、一人当たり10倍もの負担の差が出ているのです。また、消費税も同様で、今回の増税はその大半を幼児教育無償化や高等教育の無償化、社会保障の充実に充てられるため、実は税負担が増えてもその恩恵は大きいという焼け太り層だっています。
 そのため、今回は、消費税増税で最も負担を強いられている一人暮らし世帯と年金世帯で試算をしてみます。

 本当にごく簡単な試算です。
 一人暮らし世帯がNHKに支払う受信料は、支払い方法にもより多少増減しますが、今回は6か月前払い継続振り込みであると仮定します。その場合、一年間の受信料総額は26,030円です。

 一方、消費増税の影響はどうでしょうか。最も税負担が大きくなる一人暮らし世帯の負担を試算をします。総務省による全国消費実態調査によれば、一人暮らし世帯の平均消費支出は13万6千円。つまり増税負担はおおよそ、
 13万6千円×12か月×2%になります。
 しかし、これは軽減税率を加味した数値ではないため、2%部分に軽減税率導入の影響を加味することにします。マクロでみると
  軽減税率導入1.1兆円/今回の増税の影響5.7兆円≒19.3%
になりますので、税率2%のうち5分の1は軽減税率により負担がないと試算されます。
 すると、一人暮らし世帯の増税負担は、
13万6千円×12か月×1.6%(軽減税率を加味した実質増税率)≒26,112円

 となりました。
 最も増税負担が大きいとされる一人暮らし世帯では、26,112円の増税負担増があると試算されました
 
 それでは、NHK受信料と増税負担を比べてみましょう。一年間の受信料総額は26,030円でしたので、NHKのスクランブル化により、NHKの受信料支払いをしなくてすむようになれば、一人暮らし世帯は、受信料26,030円-増税影響額26,112円=82円の負担増だけですんでしまうことになります。しかも、これはこの一人暮らし世帯が、増税を原資とした社会保障の充実等の政策のうち、軽減税率以外は一切受けないことを想定したものですので、正確にはさらに増税負担よりNHK受信料の方が大きいことが想定されます

 また、一人暮らし世帯だけでの試算であると恣意的になってしまうことも想定されるため、増税により、一人暮らし世帯に次いで2番目に大きく影響を受ける年金暮らし世帯で想定してみます
 年金暮らし世帯ですので、老夫婦を想定し2人暮らしとします。
 総務省の家計調査(2017)によれば、世帯主が60歳以上の無職世帯(2人以上の世帯)の1月の消費支出は237,682円とのこと。

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 そのため、増税による影響は、先ほどの試算でいえば、
237,682円×12か月×1.6%(軽減税率を加味した実質増税率)≒45,635円
 となります。
 ここで一人暮らし単身世帯と事情が違うのが、年金暮らし世帯の場合は、負担軽減を軽減税率と年金生活者支援給付金のメリットが享受できると試算します。日本総研の調査によれば、それが年金世帯平均では軽減税率と合わせて平均で年3万円程度になるとのこと。
 それも加味すれば、おおよそ増税の影響額は27,044円程度と試算されます。
 そしてその増税負担増27,044円と、NHK受信料26,030円と相殺すると、1,014円の負担増となり、増税負担と受信料がほぼ相殺されていることが分かります。また、試算では、かなり余裕のある生活を想定した消費支出(1月237,682円)となっていることから、実際には受信料負担の方が大きいように思われます。

 今回の増税において、見解の分かれることのない事実として、単身者世帯と年金世帯の負担増が懸念されています(逆に他のタイプの世帯では増税以上の見返りがある世帯もある)。しかしながら、その負担増が最も大きい世帯において試算してみても、消費増税による負担増に比べても、NHKの受信料負担が大きいものということが分かりました。つまり、スクランブル化により受信料負担がなくなれば消費増税の負担部分を補って余りある、という試算になるのです。
 やはり、増税反対と叫ぶ前に、NHK受信料について考えるのも現実的な選択肢の一つなのではないでしょうか。

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