落ちるのがオチだったんだ。

早速だけど、昔テレビで観た映画のネタバレをしたい。
ずっとタイトルを知りたかった映画のネタバレをしたい。
是が非でも、ネタバレをしないと最後まで話が出来ないし、そんなの全然気にしないという剛の者は読み続けて欲しい。

そして今回、どうしてもその話をしたいから、どうか怒らずに聞いて欲しい。





先日、映画のタイトルが『アイスマン(1984年制作)』だというのがようやく解ってスッキリしたのだ。あらすじを読んでみると、北極で氷漬けのネアンデルタール人が発見され、現代の科学者たちが蘇生し、動物園のような場所に閉じ込めて生態を観察しながら徐々に触れ合い、互いに心を通わせていくとある。amazonでVHSでの販売は見つけたのだが、DVD化はされていないみたいだった。時間は110分。

この映画をテレビで観たのは十年以上前になる。いつ観たのかすらもう朧げな記憶になっているが、多くの学生にある気怠い休日の昼下がりだった。遅い昼食を済ませ、リモコンで適当に番組をザッピングしていた。たしか午後のロードショーだったと思う。原始人が動物園の広い檻のような場所に閉じ込められていて、なんだか退屈そうな映画をやっているなと感じた。そんな訳で、自堕落な僕は裏番組でやっていたドラマを優先し観ていた。
さて、ドラマも観終わったし、原始人が出ている映画もちょうど終盤だ。どれどれ。どういった終わり方をするのだろうとボンヤリ観ていた。


広い檻から原始人は逃げ出し、一人を槍で刺殺しながら脱出に成功する。
雪原を歩く原始人。それを追いかける科学者らしき人が居たのだけれど、逃げていく原始人との間に大きな地割れが起こり、後をそれ以上追えなくなる。
原始人は丘のような場所を登って進んでいく。丁度その先に後から飛んで来たヘリコプターが現れ、原始人は機体の足にしがみつく。空高く上昇していくヘリコプター。
そして最後の最後で力尽きてしまったのか、原始人は機体から悲鳴をあげて落ちて行き、映画はそのまま終わってしまったのである。

落ちてすぐCMに入ったので僕は唖然としていた。
CMが終わり通販番組が始まってしまったので、エピローグすらなかった。

時々、記憶の隅をつつく。
タイトルが解らないけれど、何だかとても気になる映画。
「あれは一体なんだったのか。わたしは夢でも観ていたのか」
そう親しい友人に問いかけると、
 
「落ちるのがオチなんて、非道い映画があるもんだな」と笑って答えてくれた。
その言葉でようやく合点がいった。

落ちるのがオチ。

そうだ謂われてみれば確かに非道いオチだ!
はっはっは。傑作ではないか。ずっと映画の題名ばかりが気がかりで、オチが落ちる事にすら考えが至らなかった。それ以後、落ちるのがオチでそのまま終わってしまった映画はこれしか知らないし、「いいのかそんなんで?」という湧き上がるツッコミが胸中を占有していった。

きちんと視聴していないのに感想をいうのは、正直はばかれる。

いやでも、オチにそれはないよ!
いくらなんでもあんまりだよッ!

氷漬けから復活したネアンデルタール人が、最後はヘリコプターから落下するなんてッ!



心温まる話じゃなかったのか? 実はコメディ映画だったのか?
もしかしたら、続編が練られていたのではないか。
世の中にはクリフハンガーというドラマのプロットがある。いわゆる物語の最後、崖から落ちそうになっているところで終わる引きのテクニックである。週刊少年ジャンプなどの連載で見られる続きが気になる様なアレだ。北極だし。地面は積雪で助かっていたかもしれないし。原始人なら普通の人間よりも耐久力ありそうだし。
ひょっとして、作っている最中にこれ以上話を続ける事が難しくなって、制作を途中で投げたんじゃないかという疑念すら沸いてくる。

5千年前に死んで、イタリアのエッツ渓谷で発見されたアイスマンが元ネタというのは少なからず承知している。アメコミならキャプテンアメリカだし、週刊少年チャンピオンのバキならピクルだろう。
つい色々と勝手な推測をしてしまったが、そんな話はもうこの際どうでもいい。

ただ伝えたいのは、アイスマンは落ちるのがオチの映画だったって事なんだよッ!! 畜生ッ!


この事を声を大にして伝えたい。
今後何度でも話をしたい。何故そうなってしまったのかという意見を交わしたい。タイトルが解ったので今度はキチンと最初から最後まで観たいのだけど、販売はVHSでDVD化されていない。ビデオデッキが家に無いので、有料でのネット配信が成されるのを待つばかりだ。


南極には物体Xが。北極にはネアンデルタール人がいる。
『宇宙よりも遠い場所』は良いアニメで、綺麗に終わって非常に感動した。
伝えなければずっと解らないままだと他人はいうけれど、ただひたすらにどうでもいい事を伝えたい時がたまに有る。いや、結構ある。
それは相手にとって迷惑でしかないというのも重々理解している。だけど、どうしても伝えたいのだ。アイスマンの映画の事を。

話がちゃんと落ちないと気が済まないだとか、伏線を張ったものの大風呂敷を広げ過ぎて収集が付かないとか。そんなのはみんな杞憂に過ぎない。
物語はみんな奈落へと落としてしまえばいいのだと、アイスマンは教えてくれた。落ちるのがオチだとアイスマンは教えてくれた。ありがとうアイスマン。ありがとうネアンデルタール人。ありがとうジョン・ローン(特殊メイクでアイスマンを演じた俳優)。

ふぅ。言いたい事は全部言い切った。満足したので、地獄に落ちろと言われても、それがオチなら構わない様な気がしてきた。
ああそうだ。話のオチをまったく用意していなかった。これといって特徴のないオチだが、パソコンの電源を落として今日は終わりにしたいと思う。


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