見出し画像

7歳、2人でジャンヌダルクになった。

これは7歳の時に私が体験した奇跡のエピソードだ。

「なんでお悩み相談載ってるの?」とよく聞かれます。
他にいろいろやってることとかも「なんで?」って。
このお話はその理由のほとんど全てです。
前ESのためにメモしたものがあったのでそれをここに貼ります。
(小説風に書いてありますが全部事実です。当時の自分の体験した目線、聞いた声、音、景色、すべて思い出しながら書きました。)


これは7歳の時に私が体験した奇跡のエピソードだ。

小学一年生の時、出席番号が一つ後ろにいじめっ子の女の子がいた。
私も隙あらば意地悪な言葉をかけられたし、腹が立つとすぐ私の胸ぐらをつかんで怒鳴った。
その結果クラスみんなから怖がられて、なんだかいつも一匹狼でいるような子だった。
それでも私は可能性を切り捨てるのが苦手な性分から、
「この子ともなんかミラクルが起きて仲良くなれるかもしれない、、、、」と彼女のことを嫌いになれずにいた。

そんなある日、事件は起こった。

連絡帳に担任教師がハンコを押してもらう列で彼女と前後になったのだ。
しかも、先生がハンコを職員室に忘れ、取りに戻るから座って待っているように、という。

周りの子たちが文句を言いながらも座りながら隣の子と雑談をし始め、教室中がざわざわしはじめた。
しかし彼女は話の輪に入らない。
そこで、私は勇気を出して話しかけた。

「私ここに引っ越してきたんだよね。」

当然「だから何?」と返されるか無視されるかそんなところだろう。
いや、もしかしたらもっときつい言葉を返されるかもしれないな、、。

そう考えて、沈黙に耐え兼ね、萎縮し俯いた時に、
「わたしも引っ越ししたことあるよ。」という彼女の声がした。

驚いて顔を挙げて彼女の顔をみながら精一杯の声でこう答える。
「、、そうなんだ。前はどこに住んでたの?」
「アメリカ。」
「そうなんだ!いいなあ、、アメリカ、、」
アメリカにいた自慢話ができるから、答えてくれたのかな。
様子を窺うようにそっと彼女の顔を見ると彼女の表情は予想に反して暗かった。
そして彼女は一言、
「全然よくないよ。」

その後「なんで」と私が言ったか言わないかで彼女は次々に当時のことを話してくれた。

ご両親が二人とも共働きだったこと。上二人のお兄ちゃんはかなり年が離れていて、外で友達と遊んでいたが、自分はまだ幼かったから外に出ることも許されず、家の中でずっとひとりぼっちだったこと。外から聞こえる知らない言葉が、大きな一軒家に響いて怖かったこと。外の足音にもおびえていたこと、、、。

彼女の話を聞くたびに私はまるで自由の国アメリカの中で孤独に押しつぶされそうになっていた彼女の中に入り込んだかのようだった。

次々と脳内で映像が流れる。
見たこともない、彼女の家のカーテン。そのなかでうずくまる自分。目線が低いからカーテンと床のフローリングの間の隙間がよく見えていて、その隙間の窓には知らない人の大きな足がたくさん行き交っている。何を言っているかわからない言語。自分のことを話しているわけないのに、それでも何か不安になってしまう。怖かっただろうな。不安だっただろうな。

「怖かったんだね、、、。その気持ちはお母さんとかに言ってたの?」
「言ってない。言えない。今まで誰にも話してない。」
そういって彼女は口をきゅっと強く結んだ。

そんな表情見たことがなくて、もう十何年もたつのにずっと忘れられない。
恐怖におびえていて、でもそれを親のことを思って、なかなか言えずに強がっていたのかもしれないな、、。海外で働くというのは簡単なことではないだろうし、きっとご両親もバタバタしていたのかもしれない。

自分も幼稚園時代、両親がそうだったから少しわかる。父が入院して母がその面倒を見て、たまにひとりで留守番を一日することもあったし、友達のお母さんに預けられることもあった。
「私もそういうことあったよ。」と少し自分の話をして共感を示し、そのあと「何で言えなかったのかな、」と話をつづけたところで連絡帳のハンコを押される順番が回ってきて、会話がやんだ。
先生に連絡帳のハンコをもらうと彼女はそのまま無言で教室を出ていった。
私の番が終わって教室の外に出ると、彼女はもうそこにはいなかった。

なんだか狐につままれたような、そんな気分と、彼女の全く今までにしらなかった表情を見てなんだかドキドキと心臓の鼓動を早くしながらその日は帰った。

すると、翌日革命が起こっていた。

クラスの教室についたら、なんだかいつもよりざわざわしている。
クラスの女子グループに何かあったのかと声をかけると、
「○○が急に優しくなっててみんなびっくりしてるんだよ。」
「笑顔でおはようって言われたよ」
「どうしたんだろう~あかりちゃん何があったか知ってる?」
思わず彼女のほうに目をやる。
彼女と目が合った。
何も話さなかったけど、その表情は昔より優しくなっていた。
この子こんなにかわいかったけ。そう思うくらいまるで別人だった。

「ううん、、何にも知らないや。」と真顔で答えながら
私の胸の鼓動は速くなっていた。

もしかしたら、昨日の話が関係しているのかもしれない、、。
本当はずっと話したかったのかも。
孤独な気持ちがずっと心の中の冷たい氷のようにあったけど、もしかしたら私に話せたことで、
少しその氷が解けたのかもしれない。

言葉の持つ力。話を聞くこと。話すこと。人のココロのおもしろさ。
馬が合わなかったとしてもいつか仲直りできる可能性はやっぱり確かにあったということ。
言葉で誰かの役に立てたかもしれない、ということ。

これは革命だ。
言葉はあったかい革命を起こせる。

頭の中で想いがあふれて、想いがエネルギーになり、
エネルギーがあふれて、思わずスキップしながら家に帰った。

学校の授業で習う歴史に比べたら、取るに足らない本当にちっぽけな出来事かもしれない。確かに世界は何も変わっていない。

でもあの日のちっぽけな革命は私の中ではずっとずーっと、
今でも思い出して奮い立つくらい、大きな出来事のままだ。

P.S.
本当のジャンヌダルクは彼女だと思う。
私の人生に確実に革命を起こしてくれた。
あの日以来結局二人で話すことは1回もないまま、私は引っ越してしまって連絡先も何もないけれど、いつかあって笑顔でお話できたらいいな。
Mちゃんへ、
この記事をもし見かけたらよければ連絡してね、、!(届かんか、、笑)


この記事が参加している募集

スキしてみて

もし、万が一、サポートしたいと思って下さったら、本当にお悩み相談「屋」として嬉しいです。ますます頑張ります!