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カレーを初めて一人で作った日記〜二日目カレーは幻へ〜


(初料理から始まったお料理日記の4回目です)

いつも通りだらだら過ごしていたら、兄が部屋をノックした。

「VC中?」

「いや?なに」

「台所にあるりんごのワイン、あれどうしたの?冷蔵庫入れておこうか?」

「あぁ、あれ使った油だから気にせんでええよ」

「え、なに作ったの」

「唐揚げ」

「……料理ハマった?」

「そ、そこまででもないけど」

「唐揚げ粉余ってるんだよね」

「自分で買って作っちゃった」

「あ〜、カレー食べたいなぁ」

「ふーん」

「食べたいなぁ」

「……え、作ったら食べるの?カレーとか、唐揚げとか」

「食べるよ」

「ダイエットとか気にしてらっしゃるんじゃないんですか」

「いや?なんでも食べるよ」

「お、おう、さいですか……」

カレー。カレーか。そろそろ挑戦するのはアリかなあと思ってたんだけど、作ったら絶対量が多い。一人じゃ食べきれない、もしくは野菜が余る。野菜が余るのは嫌だ。
まぁ、兄が食べるというのなら作るか。幸い兄の胃はブラックホールだし、なんとかなるだろう。

夜、布団の中で材料とレシピをググって気づいた。ブラックホールと言っても、さすがに4人前とかは……多くない……?わたし1人前食べれるか怪しいのに。
いや待て、カレーの具には色々と派閥がある。それを聞いてから考えるべきだ。兄はまだ起きてるので、自室のドアを開けて顔を出す。

「やる気あったら明日カレー作ろうと思いますが、カレーの具は何派ですか」

「ん〜……」

悩むそぶりを見せたあと、一番困る返答。

「なんでも良いよ」

「え、えぇ……あの、肉はどの肉がいいとか……ないの」

「牛肉、豚肉、鶏肉、ラム肉、なんでもいい」

「ほえぇ」

「そもそも俺じゃがいも入れないしな」

「え、マジ?」

「無水カレー作ってるんだよいっつも。だからまぁ、スタンダードでいいよ。お前が好きなように作りなさい」


──困った。わたしは兄のこういうところが一番苦手で、でもそれが一番信頼している所以でもある。そうだ、こいつはそういうやつだった。

ま、余ったら2日目カレーになるのか。2日目のカレーはおいしいと聞くし、私は同じ食事を毎日摂ってても余裕なタイプ。問題なんて最初からなかったのだ。


ぐっすり寝て、午前の終わりかけに起きた。さぁ、買い物に行こう。

スーパーについて、まず探すのはカレールーだ。少しだけ手間取ったが、無事に発見。今回はだいたい5皿分くらいの分量で作ろうと思っているから、小さい箱のカレールーを選ぶ。種類はどれにしようかな?中辛は確定だけども、色々と種類があって困る。
少し悩んで、ブイヨンがルーとセットで入っている「ザ・カリー」にした。作る時に手間がかかる方が美味しいと思ったので。

カレールーの箱の裏を見る。ルーを最初に選んだのは、材料をどれくらい買うべきかを作り方説明から判断するためだ。
まず、何かしらの肉を300gくらい。これは確定でいいだろう。問題は野菜の量だ。レシピでは玉ねぎ2玉というシンプルな構成だけど、お好みで人参やじゃがいもなどを足してくださいみたいなことを書いてある。
う〜ん。今回は人参とじゃがいも、使いたい。玉ねぎも含めて、それぞれ小さめサイズのを1個ずつにしよう。人参はちょっと多いかもだけど……まあ、それはそれで。

野菜をカゴに入れて、肉売り場へ。さて、実はまだ何の肉を使うか決めてない。ひとつひとつ肉売り場の肉を眺める。
まずは牛肉。売り場に並んでいるのは焼肉用ばっかりだ。この中でカレーに入れるとしたら小間切れ一択かな。う、でもちょっと高いぞ。学食のカレーの値段が頭を過ぎる。
次に豚肉。こちらもそうだなぁ、やっぱり使うとしたら小間切れだな。ちょうどいい量だし。明らかに牛より安いし。
鶏。鶏肉は……いいかな。気分的には牛か豚だ。
──豚だな。うん。牛行くにしても、2回目以降にしよう。豚の方がたぶん、安くて扱いやすい。

材料はこんなもんか。あとはいつも通りカップラーメンと野菜ジュースをカゴに放り込んで、買い物終了。

家に帰ると、LJLの決勝の前番組が始まっていた。……カレー作ってたら一試合分は見れなそうだな?まぁ仕方ないか。

BO5、つまり3本先取。推してるチームが連続で2本取って二試合目が終了。時間的にはちょうどいいので、今からカレーを作ろう。カレーを作り終わる頃には三試合目が終わっているかな?推しチームが勝ってたら優勝だし、負けていたらまだ試合が見られる。どっちにしても悪くない。

よし、調理開始だ!

まずは具材を切るところからだ。
じゃがいもも玉ねぎも一度使ったことがあるから、新顔は人参。お前からいこう。
ヘタと先端を切り落として、ピーラーで皮を剥く。……うわめっちゃ剥きやすい!?なにこの野菜、じゃがいもの100倍剥きやすいじゃねえか!綺麗に剥けたのでハッピーになった。
あとは適当に乱切り。根本部分で太くなってきたら一度縦半分に切るといいってGoogle先生が言ってた。そうしたらめちゃくちゃ均等なサイズに切れたので、なるほど、これは叡智だなぁと感心。

次、玉ねぎ。今回はくし切りだ。上下を切り落としてから皮を剥いて、半分に切る。で、そこから4等分くらいにすればいいかな。真ん中を切って、斜めに包丁を──むずいわ!?イケるやろって思ってたけどこれむずいわ!!斜めに包丁を入れるのは高等技術である。学びを得た。

そしてじゃがいも。くっそ、この野菜やっぱり皮剥きづらい。人参と玉ねぎを見習え。あいつらめちゃくちゃ剥きやすかったぞ?

じゃがいもの大きさだけど、大きすぎるのは好みではない。というのも、実家のカレーに入ってるじゃがいもがめちゃくちゃデカかったのだ。
……こう言っちゃなんだが、母のカレーはお世辞にも美味しいとは言えなかった。彼女は料理うまい方だと思うんだけど、なぜかカレーだけは成功しているものを見た試しがない。

じゃがいもも乱切りにする。小さすぎるともしかしたら煮た後消えちゃうかもしれないけど、そうなったらそれはそれでいいかな。人参とだいたい同じサイズにした。

最後に肉を食べやすいサイズに切る。小間切れ肉を初めて触ったが、なんというか……不揃いで面白い。たしかにカレーに入れるのはいい活用法だ。この細長い肉はどのくらいで切れば食べやすいんだ?とか、あ、ここもう手でちぎるか!ってなったりしたので、わりと使ってて楽しい。

具材の準備はできた。あとはだいたい火と具材とのにらめっこである。

唐揚げを作る時に使った油を消費したいので、ちょっと多めに敷いてから玉ねぎを炒める。これだけでだいぶ良い匂いだ。それから人参とじゃがいもと肉を入れて、適当に炒める。…………やっぱこれ、具多くない?大丈夫かなぁ。

玉ねぎに火が通ってきた感じがするので。水を……レシピ曰く600ml。いつもは分量なんか適当だけど、今回はある程度計ろうと思う。ここの水の量は大事な気がするのだ。多分母はこれで失敗している。
使うのは紙コップ。容量は210ml。普段は野菜ジュースを適量飲むために使っている。
つまりだいたい3杯分の水を放り込めばちょうど良いわけだ。かしこい。

3杯の水を入れて、そして思う。具、多いわ。でも今回は具沢山なカレー。そういうことにしていい。言うてギリギリ普通のカレーとして許される範囲かもしれない。親子ゆえの確信があるが、これが母だったら絶対水を足していることだろう。見た目不安だもん。うちのカレーが不味い理由を完全に理解してしまった瞬間である。これが煮物とかだったら味の調整ができるんだろうが、カレーはルーの都合上難しいからなぁ。

しばらく中火で煮ていると、灰汁が出始めた。これをしっかり取り除くのがポイントだと先人が言っている。結構丁寧にやった。でもうちには普通のお玉しかないから、丁寧にやった結果だいぶ水分持っていかれた気がする。
……。
ちょっとだけ水を足した。誤差。誤差だから。全体量はむしろ減ってるくらいだから。きっと大丈夫。

灰汁をとったら、ルーについてきたブイヨンを入れる。うわー、良い匂い。水だけで煮込むより絶対美味しいわ。これにしてよかった。箱の裏に書いてある規定の時間を確認して、しばらくは煮込みの時間だ。その間に包丁やまな板を洗ってしまおう。

たまにかき混ぜながら、待つこと十分と少し。
そろそろいいんじゃないかな?人参に菜箸を刺してみる。スムーズに貫通した。謎の感動。ついでにじゃがいもも同じく貫通。これは──ちゃんと食えるものが出来ている気がするぞ。

一度火を止めて、カレールーを取り出す。ちゃんと一回火を止めること、そして具材をちょっと端に寄せてルーを溶かすスペースを作ること。あと、ルーは入れる前に割っておくこと。これらがうまくルーを溶かして、美味しいカレーにするポイントだと聞いた。せっかく作るなら少しでも美味しいものが食べたいよな。

ルーが溶けると、一気に匂いがカレーになった。これは間違いなくカレーだ。私はカレーを作っているのだ。すごい。
あと10分煮込めば完成らしい。煮ているうちにじゃがいも小さくなったし、具沢山問題はそこまでヤバくないかも?水分の透明度が無くなって、具があまり見えなくなったせいという説は大いにある。

後片付けを大体終わらせて、お皿の準備をして、時計を見る。10分経った。完成だ!キッチンの仕切りを開ける。

「カレー、多分できたよ〜」

「おっ」

兄が様子を見にくる。

「あれ、量こんなもんか。水少なくない?」

「ちゃんと分量通りやったよ」

「味見した?」

「……あっ」

「濃い分には水足せばいいから、薄いの作るよりは濃い方がいいんだけどね、はい」

差し出された爪楊枝でカレーをすくって、ぺろりと舐めてみる。

「んー、多分大丈夫だと思うよ。わからん」

「それならいいけど」

少なめのご飯をチンして、皿に乗せる。そしてカレーをご飯の量にしては多めにかける。やっぱり具はちょっと多いかもだけど、うん、おいしそうだ!

「あっ、今試合めっちゃいいとこだぞ!見たほうがいい!神試合だよこれ」

「うっそマジで!?見るわ!」

カレーの皿を抱えて、ダッシュで部屋に戻り、ヘッドホンをつけた。

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食べた感想、いつもは雑だけど今回は比較的真面目に書くね。めっちゃ美味かったわ!天才かもしれない!!
具材の大きさ、食べやすくてグッド。カレーの味を損なわない。火もしっかり通っててやわらか。じゃがいもがほろほろ解けてよい。百点。
肉も良い。ビーフカレー派だけどポーク派になりそう。やわらかくて食べやすいし、油の感じがとてもよい。豚小間切れ万歳。
具の量は多分大正解だった。ドロドロすぎないルーにうまく実体を持たせてくれている。
……いやマジで美味かったんだって。私のカレーに対する期待が低すぎたのかもしれない、だけど美味しいのはほんとなんだ……!


自分の分を食べ終わって皿を洗っていたら、鍋のもとに兄がやってきた。──ご飯が残り、ルーが消えた皿を持って!

「本当は明日お前が食べる分くらいは残すつもりだったんだけど……おかわりしてもいい?」

「え、マジ?いや、それはいいんだけど……腹ブラックホールか何か?昼ごはんも麻婆丼食ってたんじゃ……」

「明日は肉じゃがが食べたいなぁ」

「気が向いた時しか作りません!」

5皿分だったはずのカレーは、一晩で『全て』消えた。家に住んでるの2人だろ。私そんなに量食べてないし、単純計算したって2日目は確実にあるはずなのに。こわい。

私の明日の夜ご飯はどん兵衛に決定した。

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