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本当に幸せ?子どもと犬のいる暮らし。

イギリスには「子供が産まれたら犬を飼いなさい」という言葉があるのをご存知でしょうか?

日本人でも、子供が犬と一緒に暮らすことのメリットを感じている方は少なくないと思います。

ですが、本当に「子どもと犬の暮らしは幸せなもの」なのでしょうか?

ここではタナカの体験を元に、「子どもと犬のいる暮らし」の本当のところをお伝えしたいと思います。

■子どもが産まれたら犬を飼える?


我が家は私と夫、そして一人娘という、よくある核家族です。

以前一緒に暮らしていた愛犬「コロ」を亡くしたのは、娘が生後3ヶ月の頃で、私はまだ産休中でした。

ドッグトレーナーとしての経験はあっても、赤ちゃんと犬との暮らしは初めてだったことと、コロは日本犬系の雑種で、決してフレンドリーなキャラクターの子ではありませんでしたから、娘との接触にも気を遣いながら新生活を始めたのを覚えています。

ですが、娘の出産からコロが亡くなるまでの約3ヶ月間、私の記憶のほとんどは残っていません。

初めての育児は思った以上に睡眠時間がなく、体力的にも精神的にも追い込まれ、自分が気分良く過ごすためのセルフコントロールと育児で手一杯!!

夫は周囲からも「良い旦那さま」と言われるほどの、家事にも育児にもとても協力的な人でしたが、それでもやっぱり新生児との生活は大変でした。

大変さにうっかりおぼれてしまうと、幸せと感じる気持ちさえ見失ってしまうような、そんな余裕のない生活が続きます。

そんな中で、すでに10歳という年齢で、私たちとの関係や関わり方など十分にお互いに「知った仲」であったコロの存在は大きな負担となることなく逆に私や私たち夫婦の心の支えとなり、家庭をサポートしてくれていたと思います。

そんなコロを10歳で亡くした時、娘はまだ生後3ヶ月。

職業柄、できるだけ早く犬を迎えたいという気持ちもあったのですが、あまりの余裕のない生活に、「これでは当分の間は犬を迎えることはできない」と自覚せざるを得ない状況が続きます。

個人的な主観だけで言わせていただくと、「子どもが産まれたら犬を飼いなさい」には大反対です。

子どもが産まれた母親が第一にしなければならないことは、切れ目ない赤ちゃんのお世話の生活の中でも、なんとかして自分自身のメンタルヘルスを整えるための活動です。

家族や他の誰かの力を借りて、ゆっくり一人でお風呂に入ることや、赤ちゃんと離れてゆっくりお茶を飲むこと、読書や映画を楽しむこと、友人と語り合うこと。

決して犬のお世話に時間を費やすことではありません。

そしてそれは迎えられる犬たちにとっても迷惑なこと。

満足なお世話を受けられなければ、犬たちも心身共に健康を害してしまいます。

子どもが産まれたら犬を迎えることは、お互いにとってのプラスにはならないと思うのです。

■子どもと犬のいる暮らし、予行練習。


ですが私は職業柄、「できるだけ早く犬を迎えたい」と思っていました。

娘が2歳を過ぎた時、新たな愛犬を迎えるための予行練習をと思い、保護犬のフォスターボランティアをはじめました。

地域の愛護団体の方からのご紹介で、人慣れしていて安定した高齢の保護犬の子をマッチングしていただき、愛護センターから引出してもらいました。(フィラリア陽性だったので、その当時は一般譲渡の対象にならなかったのです)

その子の新たな里親さんが見つかるまでの間、我が家での借りの生活を送ってもらうのです。

その時我が家に来てくれた子が雑種犬のソラくんでした。

日本犬には珍しく、とても穏やかな性格でフレンドリーな気質のソラくんでしたが、幼い娘との共同生活には様々な工夫が必要でした。

特に気を遣ったのが、娘のおもちゃやソラくんのおもちゃや食べ物などの資源の管理。

リードでの係留などでソラくんの行動範囲を制限しつつ、娘にも犬が嫌がる関わりやトラブルの原因になるような関わりの教育を行いながら過ごしました。

ソラくんを家族として迎えたいという方が現れたことで、ソラくんとの生活は半年ほどで終わりましたが、この経験が我が家にとってとても大切で重要な時間となりました。

これなら大丈夫。

安定した成犬であれば大きな問題なく生活していけるだろうと感じることができたのです。

ソラくんには今もとても感謝しています。

このとき娘は2歳半くらいだったと思います。

社会化やたっぷりのエネルギー発散のための活動など、さほどお世話に手間のかからない安定した成犬で、さらに飼い主が未然にトラブルの原因を取り除き、子どもに必要な教育を行うことのできる環境、家族や家族以外のサポートの手が複数あるのであれば、子どもが2歳半でも新たに犬を迎え入れることは不可能ではないのかもしれません。

ただし、そのような条件が揃うのは容易なことではないので、オススメしませんが。。。

■同時進行は大変です


ソラくんを新たな飼い主さんにお譲りし、そろそろ我が家にも愛犬をと思い始めた頃、たまたま付き合いの長いトレーナー仲間が、日本犬の雑種の仔犬を保護しました。

それが「まお」です。

見た目もかわいく仔犬なのですぐに里親さんが見つかるだろうと、我が家にはご縁がないかな?と思っていたのですが、なんといいますか見る度に愛おしい気持ちが増してきてしまい。。。(笑)

さらに野犬の血を引いていることもあり、性格的に一般の方が飼いやすい子ではないことが決め手となり、我が家で約2週間ほどのトライアルをさせてもらい、晴れて我が家の一員として迎えることとなりました。


(娘と初めての面会)

安定した成犬ならば大丈夫。
しかし、まおはまだまだ手のかかる、しかも社会化や管理やトレーニングがたくさん必要な仔犬。

まおがまだ幼いうちはまだ寝ている時間も長く、甘噛みの力も強くなく、さほど大きな問題にならずに対応することができていたのですが、どんどん行動範囲も広がり、力も強くなり、それと比例するように娘の行動範囲や活動も活発になっていき、管理や教育があっても難しいと感じる場面もたくさんありました。

子育てと犬育てを同時進行するということは、時にマニュアル通りにいかない、できないことだらけなのです。

いま娘は4歳になり、まおは1歳半になりました。
段々と管理も楽になってきましたが、それでもたまにふたりの間でのトラブルが起ります。

個人的な主観ですが、トレーナーなどの犬の仕事に携わるプロや、それと同等の知識や技術を持つ方でない限り、赤ちゃんでなかったとしても、幼児とパピーを同時に育てながら暮らすということは難しいと思います。

■子どもと犬のいる暮らし、理想のはじめ方。


これまでたくさんの犬と暮らすご家族に出会い、関わってきました。

個人差はもちろんありますが、子どもが犬への適切な関わり方や責任を理解し、安全にお世話ができるようになるのは、小学校高学年くらいからと思います。

犬を理解すること、衝動を抑えて他者を思いやりながら関われること、身体的な機能を考えるとどうしても子どもの成長を待つ必要があると思うのです。

そして新たに迎えるのが仔犬なのであれば、なおさら子どもの成長を待ってほしいと思うのです。

私の個人的なおすすめは、子どもが思春期を迎える中学生になる頃、手のかかるパピーを迎え入れ家族で育てることです。

パピーに十分に手間暇をかけることのできる体力と、人の手数が多いことが犬の心身の健康に役立つのはもちろんですが、家族にとっても難しい年頃の親と子を繋ぐ架け橋として、犬たちが一役かってくれるというのはよくある話です。

初めて犬を飼うというご家庭は、地域の愛護センターや動物愛護団体から、安定した成犬を迎えることをおすすめしています。

犬とのマッチングが上手くいきやすいことや、犬を飼う上での必要な情報を与えてもらえるという利点もあります。

犬を迎えてしまってからでなく、迎える前に様々に生活を検討できるご家庭が増えてくれればと思います。

私たちが犬を迎え、犬と暮らすのは、互いに幸せになるためです。

そのためには、「どんなタイミングで、どんなところから、どんな犬を迎えるか」というのがとても重要です。

それでも完璧なことなどありませんし、苦労がまったくないということはないでしょう。

ですが、それだけ検討した後に迎えることができたら、その苦労すら受け入れられる覚悟は決まっているはず。

きっと家族で乗り越えていけます。

それぞれのライフスタイルやライフステージに応じた、犬との暮らしをデザインすることができれば、「子どもと犬のいる暮らし」は幸せで豊かなものになるのではないでしょうか。


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