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今日の孤独そして満月

これはただの日記である。画像とタイトルだけみたらなんだか粋な感じがする、と思う。

今日は、なんでもないただのバイトの一日だった。先週から新しく始めたリユースショップの店員のお仕事。初日は正直覚えることが多すぎ&忙しくてやっていけるか不安になり少しだけ泣きそうになった。

今日は初日から数えて3日目の勤務だったが、思いのほかお客さんも多くなく、落ち着いて仕事をすることができた。この店で働いている方々の雰囲気は良い意味で堅くなく、基本的にピリピリしている感じがない。そして私がちょっとミスをしても、誰かがフォローしてくれて「大丈夫だよ」と声をかけてくれる優しい環境。

私自身も、勿論何かミスをしたら謝るし反省はするけれど、過度に謝ることはない。切り替えができる。

元々の私は、ちょっとしたミスでも自分が深刻なことをしたような気になり、過度に謝ったり、一つのミスの反省にとらわれすぎて柔軟な対応をするのが難しい人間だった。

ミスをした上で、それを当の本人が軽く扱うのは何よりも良くないことであり、最大限に深刻に捉えて大反省しないとどこかで罰があたるかもしれないなどという過度な強迫観念にとらわれていた時期もあった。なんなら、自分のせいでないことでも、とりあえず自分のせいにすることで丸くおさまり報われると考え、とにかく本気で「自分のせい」を強調し謝っていた。そして自分なりに頑張って反省していた。自分のミスも他人のミスも絶対に見逃さず、なんでもかんでも自分の反省に繋げれば、どんなことも成長のための学びになる、そうも思っていたが、過度なそういう姿勢はいずれ、ただの疲れと恐怖に繋がっていくのである。

ええ、まあそういう感じで、過去を振り返ると、今の自分は少しは良い意味で軽く柔軟になっているのだろうなと思う。

ところでリユースショップというは、普通のお店と違って、店内でモノが巡る様子を感じられるから面白い。数日前にどこかの誰かから買い取った品物が、今日には商品として並べられ、またすぐに別の人が買ってゆくのである。

いや、本題はそこではない。今日感じた孤独について書きたいのだ。

私はいつもお昼ご飯を家から持参している。毎度同じ簡単なスープとおにぎり、そして+アルファのエネルギー源として最近はおせんべいを1枚持って行く。それから心の栄養としてカカオ72%のチョコレートを2枚デザートに食べるのだ。

リユースショップのスタッフルームは、狭い。一人でも休憩時間にそこで過ごす人が居れば、なんとなく自分は外に出ようという気になるわけだ。

車通勤でもないから、車内という自分だけの最高なプライベート空間も持ち併せていない。

私は、近くの公園までチャリを走らせ、誰も居ない静かな冬の昼をベンチで過ごした。陽差しが強めで、寒くはなかった。だがしかし、私はこの上もない孤独を感じたのである。近くで工事関係の仕事をしていたたった一人の作業員をぼーっと見つめていた。なぜか言い様もない寂しさだった。その作業員を自分の仲間と捉えることはできず、なんだか自分だけが浮世離れしたような感じだった。きっと、それが異国の場所だったなら、興奮が併存していたのであろうが、5年間住んだ見慣れた街、都会でもない田舎でもないありきたりな日本の風景の中で感じたその孤独は、ただどうしようもない孤独だった。この街には友人も多く居る。なのに、今その時間に寂しげな公園で一人で昼食をとっているということ自体が、とにかく寂しい。まあ良く言えば孤高な感じがした。これから年末年始でしばらく知り合いと会えないということも私の孤独を助長させたのかもしれない。少し前に大切な人と過ごした幸せな時間も、やっぱり幻想だったかという思考にまた陥った。ああこんな自分で、こんな生き方でいいのかという疑念もまた起き上がってきた。途中で公園に現われて気づけば消えていた楽しげな親子の姿も光り輝く別世界のように感じられた。思えば、一人で真夜中にでも公園で過ごせばそれこそ孤独に浸りきれてむしろ楽しいとまで思うのだが、真昼の公園というのが、浸りきれない独特の孤独感を生み出したのかもしれない。孤独に居座れないというのもまた孤独なのか。

私は昼食をとった後、最近中盤に差し掛かり面白さを感じてきていたサマセット・モームの「人間のしがらみ 上」を開いた。どうも一人だけの爽快感ある公園で読書というのは、私が求めていた理想の時間の過ごし方であるのだが、この後仕事に戻らなければならないという義務感が強まってしまい心置きなく読めなかった。

あっという間に時間は過ぎる。イヤホンから聞こえる6人組アイドル(アイーティスト)の歌声は私を安心させてくれた。

自転車を漕ぎながら、この先もっと寒くなったら、公園ではとてもじゃないけど辛いな、とか、まあ雨が降ったら公園は無理だな、夏が来たら暑すぎてもっと無理だなと考え、これからは近くのコンビニかスーパーでお昼を買ってイートインを利用しようという思考に至った。

意地でも、仕事の日の昼食代に金をかけたくないという気だったが、まあ快適で孤独が和らぐ空間にいさせてもらえるならいいだろう。

カフェやファミレスで一人過ごすとか、周りに知らない人が少しガヤガヤとしていて、その中で一人でいる感覚というのは、全然寂しくない孤独であり、自由でもあり一番良い環境だと思っている。

とはいえ、公園の開放感と自然、そしてあの独特なさびしさもそのうちまた欲するのだろうと思う。


気づけばバイトが終わり、再び外に出たら夜空に今年最後の満月が輝いていた。

月はいつでも私の心を潤してくれる。言い様もない孤独はもうなかった。



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