食と心

疲れたりストレスがたまったりすると食欲がなくなる、食べても胃腸の調子が悪い、暴飲暴食に走る、なんてことはないですか?1995年に米国のステファン・ポージェス博士によって発表されたポリヴェーガル理論の観点から、食と心について書いてみます。ポリヴェーガル理論とは、ポリ(Poly=多くの)、ヴェーガル(vegal=迷走神経)で多重迷走神経を指します。自律神経系が交感神経と副交感神経のバランスをとっているというのはよく知られていますが、ポージェス博士が発見した新たな神経が、哺乳類や人間のもつ社会神経系(もうひとつの副交感神経)です。

この社会系の迷走神経は、社交の腹側副交感神経で、他者と交流するために、話す(声のトーン、表情等)、飲み込む、聞く、呼吸、心臓など横隔膜から上の神経を司ります。落ち着き、休む、消化、聞く、新しいことを学ぶなど、「安心」「安全」な状態での活動です。

ところが、ストレスやトラウマなどにより、この機能が制限されると、交感神経が優位になり、呼吸や心拍数の増加、コミュニケーション能力の低下、食欲不振が起きてきます。身体が、戦うか逃げるかの準備をするため、緊張状態、呼吸が浅い、味がしないなどの状態です。血液も消化器官から筋肉へと流れ、胃腸の働きも悪くなります(のんびり食べている状態ではありません)。仕事が忙しいと会社ではずっとこの状態だったりします。

さらに、トラウマや過剰なストレスによって、逃げることも戦うこともできない場合、爬虫類のころからある原始的な古い迷走神経(背側副交感神経)となり、身体が閉じて、凍りつき、動かない、シャットダウン状態に陥ります。無気力、あきらめ、楽しみが感じられない状態です。この状態が進むと、うつ状態になることもあります。(爬虫類は死んだふりをして、不動、無呼吸という極端にエネルギー消費を抑えることで捕食される危険から身を守ります。)

以上のような、腹側副交感神経⇔交感神経⇔背側副交感神経の行き来を、自律神経が自分を守るためにやっていると思うと驚きです。

自律神経はコントロールできませんが、交感神経や背側副交感神経の状態を解除するものとして、歌や音楽を聴く、ヨガ・瞑想、セラピー、一番簡単なのは深呼吸(特にゆっくり吐くときに社会系の副交感神経が刺激されます)、などがあります。もし、身体がそういう状態になっているなと思ったら、すこし立ち止まって深呼吸してみてください。それでは、長くなったので今日はこのあたりで。



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