神経発達症(発達障害)の夫の障害者雇用での実際の働き方(アパレル系)
発達障害のある方の障害者雇用ってどんな感じなの?と疑問に思われる方も多いかなと思い、一例として、夫の職場の話を今回は書いてみようと思います。
※発達障害は個人差がかなりある障害なので、人によって必要な配慮等が真逆と言って良いほど違う事があります。あくまで夫のケースは一例と思ってください。
前提:夫の苦手な事など
障害者手帳は3級です。
夫はADHDとASDを併発しており、また、境界知能にも該当しています。
仕事での困り事はADHD的な事が多いです。
マルチタスクが基本的に苦手ですが、音楽やラジオを聞きながらのながら作業は平気です。
目から入ってくる情報より、耳から入ってくる情報の方が受け取りやすい様です。(いわゆる聴覚優位だと思います)
立体物や図形や文字の認識が苦手で、字を綺麗に書く事が苦手です。
算数も苦手で、単純な足し算引き算でも、答えを出すまでに少し時間がかかる、もしくは慌てると間違えてしまう事があります。
一緒に過ごす時間が一番長い妻の立場から見れば、ASDはASDなんだろうなぁと思うコミュニケーションの齟齬は多々ありますが(笑)、夫は親戚からの評判が良く、友達も多く、言葉のコミュニケーションで問題を感じる事はさほどないです。
興味のある事には、妙な記憶力の良さを発揮する事があります。(夫は、ファッションには元々興味がありました)
夫の職場:アパレル系
全国チェーンのアパレル系の会社です。
ハローワークで夫が求人情報を見つけてきました。
実際に夫が働きだして、障害者雇用に本気で取り組んでいる企業だと感じました。
特別支援学校の職業体験授業(?)の受け入れを行っていて、夫が対応した学生が嬉しい事に、
「将来ここで働いてみたい」
と言ってくれた事がありました。
その後、その子が本当に夫の会社に就職が決まったという話を聞いて、夫と二人で喜んだ事があります。
障害者雇用ではもしかしたら珍しいのかも?と思ったのは、それなりの規模の入社式があります。(私達が良く知らなかっただけかも?)
一般枠の新入社員と一緒に、都心の高級ホテルで行い、立食でホテルビュッフェを頂きます。(羨ましい)
採用が決まった時には入社式があるという説明はなくて、店舗で働き始めて数ヶ月たってから言われたので、
「え? 入社式があるんですか?」
と、障害者雇用だし新卒採用でもなかったし、入社式はないのだろうとなんとなく思い込んでいた夫には、寝耳に水でした。
夫の後輩の障害者雇用の方も、
「え? ここって入社式があるんですか?」
と夫と同じ様な反応をしていたと聞いて笑いました。
去年は状況が状況だったので結局中止になってしまいましたが、後輩さんは、
「自分はそういうの苦手なので、無くてむしろ良かったです」
と話していたそうです。(ホテルビュッフェ……)
夫の雇用形態:正社員
正社員で、年に二回ボーナス有。
定年は60歳で、退職金は無し。
ボーナスは基本は月給一ヶ月半分の金額ですが、本人の頑張り次第で増額される事もあります。
去年はボーナス自体が全社員カットの可能性もありましたが、会社の様々な努力の結果、なんとかボーナスが支給され、夫は、
「頑張ってくれたから、査定プラスしておいたよ」
と上司から面談で労われ、増額された金額を受け取りました。
月々の手取りは決して多くはないですが、ボーナスがあるので、東京で一人暮らしでもなんとかやっていけるかなぁ~という金額ではあります。
社員割で、お店で扱っているお洋服類がかなり安く買えます。この社員割が家計に与える影響がでかいです。凄くお得!
週休2日の変則シフト制で、実働時間は7時間か9時間の2パターン。プラス残業になる事もあります。
店が凄く暇な時は、勤務時間のバランスを見て、ごくたまに早帰りさせてもらえる事もあります。
※最近は諸々の事情で営業時間が短くなって、実働時間が7時間くらいの事がほとんどです。
夫の仕事内容
主な業務は在庫の検品ですが、店舗での接客も行います。夫は接客に向いていたようで、日によっては、ほとんど1日中接客をしている事もあるそうです。
他、ネット注文分の発送のため商品の梱包作業をしたり、店舗の清掃や、店内の飾り付けの手伝い(木の板をノコギリで切ったり等)をしたり、
「雑用全般なんでもやるよ~」
と言っていました。
在庫の検品とは、どんな事をやっているかというと、届いた在庫が注文と合っているか、伝票に間違いがないか、個数等のチェックをして、各売場担当に在庫を渡したり、倉庫にしまったりしているそうです。
接客は、とりあえず店舗の入口近辺にいて、お客様に質問されたら、
「トップスの売場はあちらですよ~」
と売場案内をしたり、試着したお客様のサイズが適正かどうかみたり、
「今の流行りはこういう服なんですよ~」
と説明したり、お客様の予算を聞いて予算内におさまるオススメの組み合わせを考えたりとか、結構細やかに対応している様です。
接客が上手くいった時は、1日に10万くらい売上を出せた事もあるそうで、
「大変だったぁ~」
と言いながらも、
「成果がわかりやすいから面白いね」
とも言っていました。
たまに、店舗の鍵を預かり、朝一で持っていく当番も回ってきます。
必ずもう一人当番の社員がいて、基本的にその方が店舗を開けるのですが、その方に万が一の事があった時の補助として、スペアの鍵を預かる役目だそうです。
その鍵当番の時は、夫は少し緊張する様で、良く私に、
「明日は鍵当番だから、朝一『鍵当番だよ』って声かけて!」
と頼んできます。
もしもひどく緊張する様なら、当番を外してもらった方が良いのでは……?とちょっと心配しましたが(過保護😅)、あくまで補助な事もあり、夫はそこまで緊張せずに問題なくこなせています。
会議もあります。
閉店後に障害者雇用も含む社員で集まり、売上アップのアイデア出しなどを行うそうです。
「改善案とか、売上アップのアイデアを何か一つ、なんでも良いから考えてきて~」
と言われて、夫も改善案を提案したりしていると言っていました。
合理的配慮
障害者雇用と言っても正社員なので、案外一般雇用とはそこまで区別はなく、基本的に『出来る業務はなんでもやってもらおう!』というのが夫の会社の方針のようですが、やはり配慮してもらっているんだなぁと思う事としては、まず、
★研修は噛み砕いて丁寧に
夫の職場はあまり紙のマニュアルがある環境ではなく、一般枠の先輩に一つずつ直接研修してもらって覚えていく形ですが、皆さん気を使ってくださって、
「丁寧に噛み砕いて説明してくれているなぁと感じた」
と夫が話していました。
★売上ノルマがない
ノルマがないのは、夫のメイン業務が接客ではないから、という理由もありますが、ノルマのプレッシャーがなくのびのびとやれる事で、かえって成果を出せている様です。
★レジ打ちはしなくて良い
一応入社当初、出来るかどうか試しに研修を受けてやってみたそうですが、何回教えてもらってもミスが出てしまったそうで、
「レジ打ちは俺には出来ないよ……。仕事行くの憂鬱になってきた……」
と、かなり落ち込んでいました。
結果、レジ打ちはしなくて良い事になりました。
今は、接客してお客様が買うものが決まったら、レジまで持っていって、レジ打ちは他の方に頼んでいるそうです。
★なるべく作業は中断しない
夫は集中力のコントロールが難しいので、作業を変なところで中断すると、続きを再開する時に上手く集中出来なくなる事があります。
なので、集中力が必要な作業の時はなるべく途中で話しかけない様にしてもらうとか、休憩を取る時間になっても作業が終わっていなければ、作業が終わってから休憩を取るようにずらしたりしています。
また、定時で上がると翌日に作業が持ち越しになってしまう時は、上司に残業の許可をもらって、その日中に終わらせる様にしたり……、と工夫しているそうです。
しかし、作業に集中しすぎて、休憩を取るのをうっかり忘れてしまう事もたま~にあるそうです( ̄▽ ̄;)過集中……
ただ、どうしてもお店が忙しい日は、作業途中や接客途中に話しかけられる事もあるそうです。そういう日はやはり、
「今日は疲れた~。忙しかった~。作業途中に話しかけないで~」
と、げっそりした顔で帰ってきます。
★ミスを責めない
夫はどんなに気を付けていても、仕事でミスをする頻度は他の社員さんより多いです。
ミスを責めないというのは、障害者雇用だからという事でもないかもしれませんが、ミスをした時に長々と注意されるような事はなく、サラッと注意される様です。
そういう時、夫はあまり顔には出ませんが、内心は、
「やっちゃった!!!」
と、物凄く落ち込んでいたりします。
ミスと言っても、チェック済みのリストを保管場所に入れ忘れただけで、夫がうっかり別の所におきっぱなしにしていたリストをしまえば終わり(もし見つからなくても、リストを印刷しなおせばそれでOK)……だったりするのですが、本人は結構落ち込みます。
それでも、ミスを責められる様な事はないので、なんとか気持ちを切り替えて頑張れる様です。
★飲み会等は無理に参加しなくて良い
人によっては、人が大勢集まる状況や大きな音等がかなりストレスになる方もいるので、飲み会等は無理に参加しなくても良いという事は最初に言われたそうです。
夫は幸い、大勢で集まる状況は平気だったので、積極的に飲み会等も参加していました。(今は状況が状況なので、飲み会はなくなっていますが)
端的に言ってノリがパリピな職場なので、アウトドア的な遊びの誘いも良くあり、障害者雇用の方達も区別なく誘われます。
断るのはもちろんOKですし、参加する場合でも、障害の影響で当日ドタキャンになる様な事があっても、
「また次回誘うね!」
とおおらかに受け入れてもらえるそうです。
後書き
夫の職場についてまだまだ書きたい事はありますが、今回はひとまずここまで。
いかがでしたでしょうか?
他の障害者雇用の現場がどんな感じなのか、私はあまり良く知らないのですが、夫の職場は比較的良い環境が整っているのではないかなと思います。
一度こっそり(?)買い物に行った時に、あっさり妻だとバレて、同僚の方々(結構な人数)とご挨拶した事があるのですが、障害者雇用と他の社員さんとの垣根がなくて、凄く明るくて、良い雰囲気のお店だなぁと思いました。
夫の上司の、
「彼がもしいなかったらと思うとゾッとしますよ! 彼はいつも良く働いてくれています! 助かっています!」
という言葉が嬉しかった事を良く覚えています。
何より、夫が今までのどの職場より楽しそうに仕事をしている事が私としては一番嬉しく、思いきって障害者雇用で職探しをして良かったと思いました。
ほんの一例ではありますが、障害者雇用で働きたい方や、雇う側で『もっと働きやすい環境を作りたい!』と考えている方の、何かしらの参考になっていれば幸いです。
夫いわく、取り分は8(私)対2(夫)という事なので、もしも夫の事を話題にしたnoteでサポートしてくださった場合は、夫にもきちんと分けます。「分け前はまだですか! 先生!」と笑顔で言われる今日この頃です。