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「『庵治石』はもう採れない。」という噂の本当の話。

いきなり結論をお伝えしますが、噂は間違いで「庵治石」はたっぷりあります。

庵治石についてまとめた本に以下の記述があります。

讃岐の霊峰ともいわれている五剣山の山麓に、これから先、まだまだ何千年採り続けていけるだけの量の庵治石が眠っています。

「庵治石の魅力教えます。」(日本石材工業新聞社)より

何千年…っていうのは、ちょっとボクは分からないのですが、大丁場や石置き場にある石を見て、目で確認できる範囲で考えても、ボクらが生きている間の分は十分あります。つまり、噂は間違いです。でも、噂があるのは事実。ではなぜ「『庵治石』はもう採れない。」という噂があるのか…ということを少し考えてみたいと思います。

かつて「庵治石」は入手困難な石だった!?

”ひとっさん”に聞いた話ですが、”ひとっさん”が若かった頃は、お墓さんの需要がすごくて、毎日毎日朝から晩まで作り続けても、注文に応えるのが難しいくらいの注文があった時代があるそうです。当然、”ひとっさん”だけじゃなくて、どの加工屋にも「庵治石」のお墓の注文がたくさんあって、原石を手に入れるのが難しかった…ということです。

なので、”ひとっさん”は原石を手に入れるために、毎日、大丁場に通い詰めて、ずっと石が採れるのを待っていた…という時代もあったとのこと。石が採れるのを待っていた人がたくさんいて、順番に石を分けてもらっていたんだそうです。その時代に「『庵治石』はもう採れない。」という話があったと聞きます。それは、実は「採れない。」のではなく、「需要がすごくて、供給が間に合わなかった…」という方が正しい言い方になります。

おそらく、この時代に「『庵治石』はもう採れない。」という間違った認識が広がってしまったことが噂の原因の1つだと思います。しかしながら、今はそこまでの需要はないので、石はしっかりあります。供給が間に合わない時代に比べると、しっかりと見極めることができるので、石の質も昔より良くなっています。つまり、いい石がしっかりと準備できる状態です。

「庵治石」は一筋縄ではいかず…段取りが難しい。

「庵治石」はキズが多いことで有名です。そのため「庵治石」なのでお墓さんを作るということは、手間との戦いになってしまいます。採掘している時もなかなかキレイに原石が採れなかったり、大きな原石を採るのが難しかったり…。挽いているとキズが見えてしまったり、磨き終わってから細いキズが見えてしまったり…。そして、加工が大変なだけではありません。色の濃さ、目合い、斑(ふ)の浮き具合も全てが一定ではないので、色合わせや目合わせがとても難しい…という特徴があります。

実は加工する職人も、庵治石でお墓さんを作ることは、他の石を加工するのとは比べ物にならないくらい大変な仕事になってしまいます。一筋縄ではいかず、加工屋泣かせの石である…っていうことも「庵治石」を加工する庵治産地の職人では周知の事実です。つまり、段取りするのが大変になるってことです。

知り合った石材店さんと話していると、「『庵治石』で見積もりをお願いしたけれど、なかなか返事が返ってこなかった。」「『庵治石は、今、段取りすることが難しい。』という返事があった。」などの話を聞くことがあります。おそらく、一筋縄ではいかない「庵治石」の難しさから返事が重かったことが「もう『庵治石』は採れない。」という噂に繋がった原因の1つだと思います。

庵治産地で作る「庵治石」のお墓さんには温度がある。

「『庵治石』はもう採れない。」という噂も、実際に庵治産地を見に来ていただければ一目瞭然です。見ていただければすぐに分かります。「庵治石」は十分にあります。そして、その「庵治石」を使って、こだわりの職人のみなさんと一緒に心入れてお墓さんを作らせていただいています。

石屋になってから5年目。大丁場から石を採らせていただいて、素敵な職人さんと一緒にお墓さんを作っているこの雰囲気がとても好きです。ただただ加工しているだけじゃなくて、石を採らせていただいていることへの感謝や自然に対するリスペクトする気持ち、思いを込めて丁寧にこだわりの仕事を仕上げていく職人さんたち…など、「庵治産地で作る『庵治石』のお墓さんには温度がある。」と感じています。そして、そうやって出来上がった「庵治石」のお墓さんの美しさを見ていただければと思います。石は嘘をつきませんので…。

”ひとっさん”と、日々「庵治石」に向き合っています。機会がありましたら、ぜひ庵治産地にお越しいただいて、「庵治産地で作る『庵治石』のお墓さんの温度」を感じていただければ…と思います。庵治産地でお待ちしています。

庵治石細目「松原等石材店」3代目 森重裕二


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