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自然災害と家とお金:4-4.高潮。津波・高波と何が違うの?

「父さんが4歳くらいのころかな、伊勢湾台風って大きな台風が来て、夜に家族全員で屋根の上にのぼって水から逃れたんだよ。本当に屋根まで水が来ていて、落ちたら命がない状態だったから今でもよく覚えているよ」

父は名古屋出身。子供のころ、よく自分が体験した伊勢湾台風について話してくれました。子供ながらに台風で溺れそうって怖い……と思いました。



今だから白状します。
なぜ、台風なのに屋根の上に避難したのか。
なぜ、屋根の上まで水が来ていたのか。

実はよく分かりませんでした。

これが高潮の被害なのかと知ったのは、今の本業を始めてからしばらくたった数年前。父よ、台風で「高潮」が発生したと教えてよ……。

伊勢湾台風
 1959年(昭和34年)9月26日夕刻に紀伊半島先端に上陸した台風15号(伊勢湾台風)によって、台風災害としては明治以降最多の死者・行方不明者数5,098名に及ぶ被害が生じた。この台風による犠牲者は全国32道府県に及んだが、その83%は高潮の発生によって愛知・三重の2県に集中した。
伊勢湾台風によって伊勢湾奥部に既往最高潮位を1m近く上回る観測史上最大の3.55mの高潮が発生し、それが不十分な防災対策のまま市街化して来た日本最大のゼローメートル地帯に来襲した。
出典:内閣府(1959年伊勢湾台風)

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こんにちは、あじさいです。
地学を学びなおしたい!と思い、先日、仕事上がりに大きな本屋で地学の本を立ち読みしていたら、
「お姉さん。こっちの本もいいけど、この本の方が絶対にお勧め!」
「内容が難しいけど、この本すごい方々が書いているんだよ!」
学生さんらしき方(多分、博士課程かポスドクの方?)お勧めされました。

地学の本についてアドバイスをもらえる機会、大変貴重でした。
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前回までは、5回にわたって河川氾濫についてお伝えしてきました。
前回の記事はこちらから↓

今回のテーマは、「高潮」

洪水とか、土砂災害とか、津波……というと、映像がイメージできるのですが、「高潮」となると頭の中に「?」が出る方多いのではないでしょうか。

私も、以前、「高潮」と「高波」の違いはなんだ?って言われて困ったことがありました。なので、今日は高潮についてお話ししつつ、高波や津波にについても触れたいと思います。

高潮

高潮とは、「台風や発達した低気圧が通過するとき、潮位が大きく上昇する」現象です(「」は気象庁より引用)。

高潮は2つの効果、気圧が低いところ空気が海水を吸い上げて上昇させる吸い上げ効果、沖から海岸に向かって吹く風により海岸付近の海面が上昇する吹き寄せ効果により発生します。

吹き寄せ効果では、遠浅の海や、風が吹いてくる方向に開いた湾の場合、地形の影響により潮位が高くなります。

出典:気象庁「高潮」


地形の影響を見るために、東京湾周辺の高潮と津波の浸水想定区域図を比較しました。何か違いはあるのでしょうか?



出典:重ねるハザードマップ(左:高潮、右:津波)*
*いずれも想定最大規模の浸水図


明らかに浸水範囲と深さが異なっていますね。
想定最大規模といっても同じシナリオではないので多かれ少なかれ差異は発生するものの、高潮の浸水範囲が広いですね(赤枠付近)。

東京都港湾局によると、やはり地形が影響しているようでした。

東京は、東京湾の最奥部に位置しています。南西側に外洋との出入口があり、また水深も比較的浅いために、高潮の被害を極めて受けやすい地形になっています。
出典:東京都港湾局「東京港の津波・高潮対策」

原因が違う高潮、高波、津波

さて、タイトルのお話。
高潮、高波、津波の違い……、これら3つは発生原因が異なります。

高潮は主に「低気圧」、高波は主に「強風」が、そして津波は「地震」「火山噴火」が原因です。

高潮・高波は気象(空)が影響して発生する現象
津波は地下(陸)が影響して発生する現象

これですっきり現象が整理できました。

出典:気象庁の情報を元にあじさいが作成


波の違い・被害の違い

津波って、波が建物を押し寄せるくらい強いエネルギーを持っていて、とても速い波です。一方、高潮や高波は波が高い状態なので、津波ほど強いエネルギーはありません。

なので、どちらも波ですが被害の様子が異なります。
どちらも浸水は起こりますが、津波による被害は波によって建物が押し寄せられたり、建物自体が倒壊する可能性もあります。

noteを始めたころに津波と波浪の違いを簡単にまとめてみました。
記事はこちらから ↓


それでも、海・港湾周辺に住む

高潮には○○を対策!津波には○○を対策!という風には考えないのかぁ……と思います。もし、私が海沿いに住むとしても「波」「浸水」による対策ってまとめて考えると思います。

高潮は低気圧、台風によっておこるものなので、それらが近づいてから時間的余裕は津波に比べてありますよね。
ニュースで気象予報を頻繁に確認して、早め早めに行動することが大切だと思います。

参考:津波と家の話はこちらから。


まとめ

最後に、今回のポイントをまとめます。

・高潮は、低気圧によって生じる潮位の上昇
・地形や、満潮・干潮に影響をうけ、潮位が一気に上がることもある
・高潮の被害が起こりうる場所では、天気予報を確認しながら早めに避難することが大切!



あっ、冒頭の地学の本のお話。
……地学の本を決め切れず、地盤工学の本を買って帰りました。
もう少し検討して今度こそ決めます!

あじさい

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