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片思いの女の子【#テレ東ドラマシナリオ】【月がきれいですね】

『#テレ東ドラマシナリオ』が形になったから上げよう。

いやもはや「形になる」とは? という気分になってしまうあたり、慣れないことをしている感満載(笑 選んだのはむぎちゃんの「月がきれいですね」です。

■登場人物

カワモト:女子高生。イシダが好き。ドルオタのイシダと話題を合わせるために、アイドルのライブについて行ったり、アイドル勉強中。イシダの芯がぶれないところが好き。

イシダ:男子高生。イシダのことは特になんとも思っていない。ドルオタ。言動はオタクっぽい。作中の「レーレ」はゼアゼア(旧ベルハー)の子。


■テーマ

「好き」という言葉がなくなってしばらく。イシダに対して、好きというアピールを繰り返してきたカワモト。その努力は今のところ報いられず、今日も放課後、教室に2人。言葉を交わす。


■内容

場所:放課後の教室。二人だけ。窓際の席に前後に座っている。そこがもともとの席だから。前がイシダ。後ろがカワモト。


カワモト:「(ファッション誌のページを見せながら)ねえ、イシダ。あんたこのグループ追っかけてるでしょ?」

ファッション誌に出ていたのは、新進のアイドルグループ。

イシダ:「(読んでいた本から目を離し、後ろを振り返り雑誌をのぞき込む)おお、そんなところにも出てくるようになったのか。まさに飛ぶ鳥を落と勢いだな。いや彼女たちの実力なら見つかるのが遅いくらいか……」

カワモト:「ふーん。前に私と一緒にライブ行った子たちは、もういいの?」

イシダ:「ばっ……そんなわけあるはずないだろ!人によっては、DDを否定するヤツもいるけど、俺は気にしない。推したいグループがあれば推すし、推したい子がいれば推す。それだけだ」

カワモト:「はあ。そもそもDDって何?」

イシダ:「DDってのは『誰でも推します』ってことだな。最近、俺の影響でいろいろ知識をつけてきたと思っていたが、カワモトのドルオタレベルはまだまだだな」

カワモト:「いやそんなレベル上げようと思ってないし。結局、浮気症ってことじゃん」

イシダ:「それは違う!どれも全力で推しているんだから、この気持ちには一片の曇りもない!つまりこれは浮気じゃない。本気だ」

カワモト:「(呆れた様子で)ああ、そうですか」

イシダ:「(ファッション誌の写真を眺めながら)それにしてもレーレは最近髪の毛を切って、また一段と可愛くなったな」

カワモト:「(自分をゆび指さしながら)ちょっとねえ。こっち見てよ。何か言うことない?」

イシダ:「……何がだ?」

カワモト:「いやだって、今髪の毛の話題になったでしょ?」

イシダ:「それが……?」

カワモト:「いやほら何か気が付かないかなーって。だってアイドルのちょっとした変化とかすぐ気が付くでしょ? そういう力がないわけじゃないじゃん」

イシダ:「もちろんだ。アイドルとは、チェキをとったり握手したりと、いろんな話題が必要だからな。短い時間にちゃんとアピールをしなければならない。そういう細かい変化には誰よりも敏感なつもりだ」

カワモト:「……あ、そう。その心がけは偉いと思うけどさ。いやほら、見てよ。私も昨日髪の毛切ったんですけど……」

イシダ:「ああ……いわれてみれば。うん、いいんじゃないかな」

カワモト:「今さら言われても、なんっにも嬉しくないです」

ふてくされて雑誌を奪い取る。

カワモト:「そもそも私が、昨日なんで自撮り送ったのかわかってるの?」

イシダ:「そういえば来てたな。でもまだ返事してなかったような……」

カワモト:「ええそのとおり。まだ返事は来てません。既読になってからすでに21時間が経とうとしてますけど、いまだに来てません。……あのね、これが女子グループなら完全にハブられてるよ」

イシダ:「幸い俺は女子グループに入ってるわけじゃないし、そんなくらいでハブられるグループなら、その程度の繋がりだよ。カワモトはもっと自分を大切にした方がいい」

カワモト:「……うん、まあ。それは確かに……そうかも」

会話にひと段落が付いて、イシダは前を向いてさっきまで読んでいた小説に目を落とす。いつの間にか、外からは夕日が差し込んでくる。


カワモト:「(雑誌から目を上げ、イシダの後ろ姿に呼びかける)ねえ」

イシダ:「(こちらを振り返ることなく答える)なんだ」

カワモト:「しばらく前に、ほら、なくなっちゃったでしょ?その……ある言葉が」

イシダ:「ああ、そうだな」

カワモト:「それでドルオタ活動には影響はないの?だって、ほら言えないわけじゃん?」

イシダ:「ああ、もちろん最初は戸惑った。これまで作り上げてきたミックスやコールのほとんどが使えなくなったりしたし、そりゃあ大変だった」

カワモト:「なんかよくわからないけど、大変そうだね」

イシダ:「……でもな。しばらくたってみたらわかった。結局あんまり変わらないなって」

カワモト:「え?どういうこと」

イシダ:「(後ろを振り返る)あのな……俺たちはどんな状況でも全力で推すだけなんだってことさ。言葉が封じられたら、それ以外のもので伝わるように頑張る。その子がハマってるものがあったらそれに詳しくなって、対等に話せるようにしたり、欲しいものがあればリサーチしてプレゼントしたり、今できることで精いっぱいの思いを伝える。カワモトが化粧を頑張ったり、髪の毛整えるのと同じ自分磨きみたいなもので、そういうのはどんな手段であっても向こうに伝わるし、それでいいんだって。言葉なんてなくても何も困らないなって、そうわかったんだ」

カワモト:「(目を見開く)……そうなんだ」

イシダ:「そうだぜ。その時やれることを全力でやればいいんだよ。そのうち伝わるもんさ」

カワモト:「じゃあ、もし伝わらなかったら?長いこと頑張ってきても、ちっとも伝わらない感じだったら?」

イシダ:「うーん。そん時は強硬手段かなぁ……いやホントにアイドル相手にやったら出禁どころか捕まるだろうけど(笑うイシダ)」

こちらを向いたイシダを無言でしばらく見つめるカワモト。


イシダ:「なんだよ?なんか付いてる?」

カワモト:「いや……うん、なんてゆうか、これまで結構頑張ってきて、でも全然だったからもう止めようかなって思ってたの」

イシダ:「……」

カワモト:「だけど、イシダの話聞いてたらそうじゃないんだなって。頑張ってることはきっと無駄じゃないし、時には強硬手段もいるのかなって……」

急に立ち上がるカワモト。驚くイシダ。

イシダ:「突然なんだよ」

カワモト:「うん……いやわかった。というか今、決めた。ここまでくれば強硬手段。強硬手段に訴えるしかない。いいよね、だってイシダはアイドルじゃないから……」

大きく息を吸うカワモト。
ゆっくりとイシダの顔に両手を添える。

そのあとカワモトはイシダにキスをする。


カワモト:「……どう?いい加減伝わった?私の気持ち」



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「欲しいものリスト」に眠っている本を買いたいです!(*´ω`*)