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今年200本以上映画を見た私的に誰かに刺さったら嬉しい映画5本【レビュー】【映画】

大層な数字を出してしまったものの、実は証明できるものがない。

……というのも、私は今でこそ映画を『filmarks』というレビューサイトに見た映画を端から書いているけれど、それは今年の4月からしか書いていないのだ。とはいえ4月からで186本だったので、年間200本以上と言っても決して嘘ではないだろう。

映画はDVDかサブスクで見ているため、新しいものを映画館で見たりはあまりしない。話題作はともかく、邦洋も新旧もジャンルもほとんど意識したことがない。

そんなあまりにも雑多な『今年見た映画』の中から、"誰かに刺さったら嬉しい"作品を5本紹介しようと思う。



【1本目】ジョジョ・ラビット(2020年)

今年のアカデミー賞「脚色賞」を受賞した作品。ちなみにその映画が初出である場合は「脚本賞」。原作などがある場合は「脚色賞」となる。

時は第二次世界大戦中。孤独なドイツ人少年のジョジョは周囲からいじめられており、そんなナチス・ドイツに憧れる10歳の少年の“空想上の友だち”は、アドルフ・ヒトラーその人だった。
しかしある日、母親が屋根裏にユダヤ人の少女を匿っているのを発見したことをきっかけに、少年の考えが変わっていく……

実際に描かれている内容はかなり過酷だったりもするけれど、映画では少年の目を通じて描かれており、そのせいもあって全体としてコミカルで軽妙といってもいい雰囲気があふれている。それが群を抜く見やすさにつながっていると言ってもいいだろう。

この映画ではまず「戦争」を肯定する。

主人公の10歳の少年はナチス・ドイツに憧れ、ヒトラーは彼にとってヒーローなのだ。ストーリーが進むにつれ、徐々に考え方は変わっていくものの、そんな肯定的な戦争観を描写するのは挑戦と言ってもいいだろう。しかしそれは当時を生きる少年にとってみれば、ごく普通で、当たり前の価値観だったのかもしれない。

単にコミカルで楽しいだけではまったくない。様々な感情の奔流にあなたもさいなまれるはずだ。



【2本目】スプリング・ブレイカーズ(2012年)

『世界を挑発する、無敵のガールズムービー!』というのがうたい文句なのだけれど、そういうイメージで見てしまうと中途半端で楽しくないのではないかと思う。A24という私が好きな制作会社の作品。

「スプリング・ブレイク」とはつまり「春休み」のこと。

春休みにマイアミまではめを外しにきた女の子たちの話で、前半部分で描かれるいわゆるアメリカ版『リア充』で『パリピ』な様子は、セックスドラッグロックンロールで我々の想像を軽く凌駕する。これが本当にポロリどころの騒ぎではない。

しかしその明るい雰囲気は、逮捕されたことをきっかけに急変する。

超えてはいけない一線をそこで超えてしまったのではないか。そんな不穏な恐怖感が画面を支配するようになる。この静かなる恐怖を描きたいがために、あれだけ前半をはっちゃけさせる必要があったのだろう。

考えが浅く、無思慮、と言っても過言ではない少女たちは、どんな状況に陥ってもどこまでもまっすぐで純粋だ。「いい子になるわ」と言いながら、次の瞬間には強盗に押し入ることができる。そういう意味では確かに彼女たちは『無敵』だ。

――そして、そのあまりにも無防備な姿に私たちは『恐怖』するのだ。



【3本目】プラン9・フロム・アウタースペース(1959年)
【3本目の2】エド・ウッド(1994年)

急な2本立て。今となってはこの2本はセットで見るのが正しいと思うので2本立てで紹介する。

「史上"最高"の映画監督」と言ったらあなたは誰を想像するだろうか。

スピルバーグなのかクロサワなのかキューブリックなのか、意見の分かれるところだと思う。誰にもそんな優劣をつけることはできない。

しかし不思議なもので「史上"最低"の映画監督」というのは決まっている。それこそが、本作『プラン9・フロム・アウタースペース』の監督であり、2本目に紹介した映画のタイトルになっている男、エド・ウッドだ。

もちろん明確な指標があるわけではない。……ないけれど誰が言い出したか、「史上最低」と言われだし、そんな不名誉な評価が定着してしまった男。そんな男が作った映画の代表作であり、その男の半生を描いた映画である。


私は『エド・ウッド』(監督はティム・バートン)を先に見ることをオススメする。なぜなら作中で「プラン9~」の笑いどころを懇切丁寧に教えてくれるからだ。
「プラン9~」という映画は、非常にまじめに作られている。いや、まじめに作られているのだと"思う"、多分。……でも、その作りはあまりにもひどい。予告編を見ればすぐにわかる。学芸会でもやらないような演技に、シナリオに、特撮のオンパレード。
でもそれをおおまじめにやられると、人間、意外と笑っていいのかわからなくなるのだ。「なんだか……今、おかしかった気がする」という煮え切らない感情を抱えたまま、よくわからないけどヒドイ映画だった気がする。という感想の終始して終わってしまう可能性が非常に高い。古い洋画であることもそれを助長する。

――つまり、このヒドさを「楽しむ」ところまでいきつかないのだ。

だからこそ、まずは「エド・ウッド」の方を見て予習をするべきだ。その上で、史上最低の映画監督の代表作「プラン9~」を堪能するべきだ。

そうすることによって、この史上最低の映画を、普通に見るときの何倍も楽しんで見ることができる。ちなみに、バートンさんの「エド・ウッド」は普通に面白いので、見て損にはならない。

「史上最低」という冠には、なかなかお目にかかることはできない。
それがこんなに身近に転がっているのだがら、一度は手を出してみない理由がない。



【4本目】キング・オブ・コメディ(1983年)

『ミッドサマー』の元ネタとされる、『ウィッカーマン』にしようか悩んだけれど、こちらで。今回ご紹介するのはこちら。映画『ジョーカー』に影響を与えたとか言われている映画、『キング・オブ・コメディ』。

もしかしたら私は"主人公"が強い映画が好きなのかもしれない。

ここで言う「強い」というのは物理的な強さではなく、画面に対して、映画に対して支配力が強いということ。その人がいるから成立するような映画。しかもよくしゃべる映画が好き。あーなるほど。これは我ながら発見だな(勝手な自己完結すみません

とにかく、今作における主役ロバート・デ・ニーロの存在感たるや。Mステにおけるタモリさんくらい欠かせない。そしてよくしゃべる。ロバート・デ・ニーロのために作られたような映画であり、ロバート・デ・ニーロの圧倒的なすばらしさを余すところなく感じられる。

圧倒的な主役が真ん中にいる。それだけで映画には見る価値が生まれる。

本作は、興行的には成功しなかった映画だ。POPとは言い難く、正直エンターテイメントには欠けると思う。それでもこのロバート・デ・ニーロは一度見ておく価値があるロバート・デ・ニーロだ。




【5本目】A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017年)

こちらもA24作品。5本選んで2本も入ってくるなんて。

愛した人を残して死んでしまったら、化けて出てもおかしくないだろう。でも"ゴースト"は生者の誰にも見えない。ただそこに居るだけ。そこで残された人が一人寂しく時を過ごすのを、何もできず見つめることしかできない。それがゴーストという存在なのだ。

この映画は一言で言えば、そうやって愛しい人をずっと見つめ続けるゴーストの話だ。ただ、ただ、見つめる。彼には見つめることしかできないから。

ほとんどセリフはなく、ただ見つめるだけのゴーストと見つめられている人の映像が、長々と……あまりにも長々と映し出される。その永遠にも感じる長さは、ゴーストが感じるそれを表しているかのように。

決して派手な作品ではないし、わかりやすい作品でもない。こちらが好意的に解釈しないのであれば、長くて地味で暇な作品だと断じられても仕方がない。しかしこの作品が強く心に刺さる人はきっといる。

心構えはした上で、気になる方は一度見てほしい。もしかしたらあなたの側にもゴーストはいるのかもしれない。そんな気持ちになるかもしれない。



【まとめ】

今年、見た映画から5本選んでみました。

サブスクで見られるものもありますので、年末年始などお時間のある時に手を出していただいてい、まんまとどれか刺さってしまったら私は大変嬉しいです。

来年も沢山映画を見るつもりです。
映画は本当に楽しいです。



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