あなたは今日もキスをくれる【＃言葉を宿したモノたち】

　両手で私を包み込んで、あなたは今日もおはようのキスをくれる。

　いつも朝はギリギリに起きてきて慌ただしい。でも私にキスをくれるのは忘れないでいてくれる。朝食をとっている間、私はずっとそばに居られる。その後、バタバタと準備をして出ていくあなたを、今日も一人寂しく見つめる。最後にお出かけのキスをひとつ。

　またこれから、あなたが帰ってくるまでの間。一人きり、長くて寂しい時間が始まるんだ。そう思って、いつも、毎日のように泣きそうになる。このままあなたが帰ってこなかったから、私は一人残されて、そのうちに捨てられてしまうのだろうか。いろんなイヤな想像ばかりが頭を駆けめぐる。

　それに、私は知ってる。たまに私以外の子を浮気していることを。思い出したように、その子にキスをしているのを見てしまったことがある。私は何も言わなかったけれど、内心は怒りがあふれかえり、何も手につかなかった。
　彼がうつり気なのはわかっていることだ。私はそんな彼が好きなのだから自業自得だ。そうやって自分を言い聞かせる。彼がいない間、私は妄想の彼に振り回され、ひとり寂しくたたずむだけ。彼がいない間はいつもそうなのだ。

　そうやって一人で沈んでいるうちに、やっと彼が帰ってきた。

　最近は急に寒くなってきたから、今日もあなたを温ためてあげられてうれしい。食事をし、テレビを見る彼をながめ、思い出したようにくれるキスに応える。彼といる間、私はなんと満たされているのだろう。これほど幸せなことがあるだろうか。

　そう思っているうちにもう寝る時間だ。歯磨きの時は、悔しいけれど別の子の担当だ。早く明日になればいいのに。あなたが仕事に行かなければいいのに。

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　そんなわけで仲さんの企画「＃言葉を宿したモノたち」に参加しております。

　エモ一辺倒でいったら、いまいちヒントの少ない話になってしまいました。そのままお蔵にしてしまおうか……とも思ったんですが、まあ供養のつもりで。

私が擬人化したものはなんでしょうか。
大喜利がメインらしいので、思いついても正解をそのまま書いたらいけません（笑

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