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私の「神戸」は『神戸在住』【#あなたの神戸をおしえて】

『あなたの神戸をおしえて』

というフレーズを見たときに、最初に思ったのは「神戸ってオシャレな町のイメージだし気になる企画だ。でも私、神戸に行ったこともないし、この企画にはご縁がなさそう」というものでした。

しかし。

唐突ですが私にはひとつの野望がありました。
とても小さくて、すぐにでもかなえられそうなものなのですが、きっかけがなく、もう何年も前から心の下の方に温めている野望です。

それが「木村紺さんの『神戸在住』という漫画を、死ぬまでには全巻本棚に揃えたい」というものでした。

そう。はからずもつながってしまったのです。……あ、神戸だ、と。私にとっての『神戸』がここにあった、と。
気が付いてしまったからには、参加してみよう。「神戸をテーマにした作品のレビュー」というくくりになりそうなので、ダメだったら素直にダメ出しをもらって引っ込もう(笑 

そんな気持ちでこれを書いています。
私にとっての『神戸』。それが今作、『神戸在住』という漫画なのです。

主人公は、神戸は北野にあるとされる大学の、文学部美術科課程に通う女の子、辰木 桂(たつき かつら)。彼女の日常を、その大学生活や友人との交友を、多くの独白とともにお送りする、そんな日常系漫画です。

多くの友人に囲まれているので、まったく「孤独」ではありませんが、どんな状況でも一貫してモノローグが挟まれる様は、「孤独のグルメ」を彷彿とさせます。

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(画像は神戸在住第1巻から引用)

特筆すべきは、本作には、実在の店や観光スポットなどが多数出てくることではないでしょうか。

主人公が通る街並みや、立ち寄る店、そして神戸ハーバーランド、神戸MOSAIC、神戸市立王子動物園など大部分の施設は実在するものなのです。

本作は、そういった街並みや施設を紹介することが主旨の漫画ではありません。しかしそういった神戸を紹介することに心血を注いでいる漫画であることも間違いありません。また紹介を主旨とした漫画でないがゆえに、その目線はどこまでも『等身大』なのです。

主人公、桂がふらりと立ち寄った街並みを、桂自身の目線で紹介し、注釈をつける。

まるで「探検僕の街」のような、ごく個人的な目線。そのおかげか、まるで自分がそこを歩いているかのような気分にさせてくれます。

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(画像は神戸在住第1巻から引用)

主に描かれるのは、出来事も時間の進み方も突飛なものではなく、神戸の一人の学生の日常です。

等身大の目線もあって漫画に没入しやすく、パラパラとページをめくるだけで気分はまさに「神戸在住」。
また「日常」といはいえ、様々な変わった人が沢山出てきますし、神戸に行ったことのない私にとっては、そこは未知の街。美術科課程という経歴も、私にはなじみがありません。

このなんの変哲もない「日常」と、その中の「未知」の塩梅が素晴らしく、好奇心を満たすとともに心地よさを生み出します。世の中には、すごく興奮する作品や、ただ安心する作品は沢山ありますが、これを同時に……、興奮と安心を一緒に味わうことができる作品は多くないと思います。

この二刀流こそ、『神戸在住』の最大の魅力なのです。

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(画像は神戸在住第1巻から引用)

本作は1998年から連載され、全10巻ですでに完結しています。
作中の時間と現実は、ゆるやかにリンクしており、1995年におきた阪神・淡路大震災についても触れられます。

仮設住宅に住んでいたり、後遺症に悩む友人がいたり。作品の序盤では、そんな様子も描かれますが、これもまたこの作品の主題ではありません。

それは多くの人にとって非日常でありながら、神戸にいる人にとって「日常」と地続きのもの。「神戸の日常を描く」と決めたときに、震災についても触れないわけにはいかなかったのでしょう。

そんな震災の記録としての要素も、この漫画は持ち合わせているのです。

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(画像は神戸在住第1巻から引用)

そんないろんな要素をはらみながら、どこまでも等身大の目線で神戸の「日常」を描いた漫画。それが本作『神戸在住』です。

私は、神戸に行ったことはありませんが、いつか『神戸在住』を片手に、自分自身の目で、神戸という街を見て回りたいと思っています。そんな願いも野望の一つといっていいでしょう。

そのころには、いろいろ様変わりしているかもしれませんけれど、そんな変化すらもきっと楽しむことができるでしょう。なにせ日常とは常に変化するものなのですから。

私にとっての神戸。
漫画『神戸在住』の紹介でした。


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