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禁じられた遊び【ショートショート】【#12】

「君のことが好きなんだ」

 ついに言ってしまった。溢れ出てしまった、という方が正しいだろう。これまでも自分の気持ちには気がついていたし、その気持ちがどんどん大きく育っていることも自覚していた。同時に、その気持ちを表に出してしまうことは、破滅への始まりであることも知っていた。

「ダメよ。わかってるでしょ」

 彼女は言った。なんの気概もないその返答は、いつかはそんな日が来る事を織り込んでいたように平坦だ。実際にそんな日が来た時のことは何度もイメージしたのだろう。

「知ってるだろう、僕には君しか居ない。純粋に君一筋だし、今後もずっと君のことが好きだ。君のために働いて、君が笑ってくれるのを楽しみに家に帰る。君のために生きていると言っても過言じゃない」

 彼女は僕の言葉を遮る。

「あなたが私を思ってくれてるのは良く知ってるわ。私にとってもあなたは大切な存在よ。でも聞いて。世の中には『出来ること』と『出来ないこと』があるわ。これは『出来ないこと』なのよ。……無理なのよ」

「僕はこんなにも君を愛しているのに……!」

「だめ!それ以上は言っちゃダメ!お願いだから!やめて!」

「……いや、もういい。この気持ちを隠しておくぐらいなら僕はもうどうなっても構わない。辛いんだよ!君を僕のモノにしたい!君にこの気持ちを受け止めて欲しい!知って欲しい!自分が愚かな事をしているのはわかってる!でもダメなんだ!本気なんだよ!君を愛してるんだ!」

 彼女の頬をつたい、涙が一筋だけこぼれた。そして、うなだれたまま彼女は動かなくなった。

 束の間の静寂ののち、部屋にアラームが鳴り響く。

 他ならぬ彼女から。そして、今までの優しくて愛嬌のある声とは全く違う、機械の音声が鳴り響いた。

「No.704625143974 〇〇殿。貴殿は、法第〇〇条、種の保存及び人類発展の促進の為の法律における第2項(アンドロイド、ヒューマノイド等無機物との恋愛を禁止する)に反する為現行犯逮捕いたします。直ちにそちらに向かいますので、その場を動かないで下さい。対象となる無機物は回収、当局で検証の上破棄させていただきます……」

 窓の外からパトカーのサイレンが近づいてきている。


#小説 #掌編小説 #30年後あったらいいな #ショートショート

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