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次元の違い【ショートショート】【#102】

「『次元が違う』とはよく言う話だが、実際にはどういったことだと思うかね」

 博士は歩きながら助手にそう問いかけた。

「『次元が違う』ですか……。大幅に実力の差があるときなどに使われますよね」

「確かにそうだがここでは、実際の意味での『次元の違い』を考えてみようと思う。つまり1次元と2次元、2次元と3次元、そして3次元とそれ以上の次元の違いについてだ」

 博士はこうしていつも歩きながらでも何かしらを考えている。大抵は根も葉もない話だったりもするけど、たまにそれが実際の研究につながったりするのだから天才と呼ばれる人は違うな、と思わされる。

「我々は3次元に生きている。『幅』『奥行き』『高さ』の3つの要素がそこにあるから3次元だ。いわゆる立体だね。そしてその立体を、それとは別の独立した方向に並べると4次元の物体ができると考えられている。この4つ目の軸は『時間』であると考える説もある。SFなどではそれに基づいて、時間空間を超越したワープの考え方や、4次元ポケットなどに生かされているわけだ」

「4次元方向にワープすることで、同時に時間も超越するというヤツですね」

「そうだ。まあどれも今のところ想像の産物に過ぎないものだがね。ところで、我々が3次元に根差して生きているように、世の中には4次元に生きる生物も存在するのではないか、とも言われている」

「4次元生命体ですか……もはやイメージすらつきませんね」

「いや、それほど難しい存在ではないと私は思っているよ。2次元と3次元の違いを考えてみればいい。2次元というのはつまり『絵』だ。そしてそれを眺めている我々は3次元なのだから。イメージとしては難しくないだろう。生み出すことも、破棄することも、その意思一つで可能な傍観者。――まあ、言ってしまえばそれは『神』とでもいうべき存在だがね……」

「なるほど。流石博士はいろいろ物知りですね」

「君もこのくらいのことをすぐ理解できるようになってもらわないと私の右腕としてはやっていけないよ。もっと精進したまえ――」


 その部分まで読んで、4次元生命体はその本をパタンと閉じた。小難しい話だったな……あまり面白くもないし。今度の燃えるゴミの日に捨ててしまおう。



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「欲しいものリスト」に眠っている本を買いたいです!(*´ω`*)