「ちょっといいですか?」【ショートショート】【#28】
突然連絡くれるなんて、思ってもみなかった。
あなたは憧れの人だったし、遠巻きに見るあなたは、いつもキラキラしてて眩しかった。もう何年も前から知ってるから、なんとなく性格も分かった気になって、「今の仕事向いてない」っていつも言ってたから、大変だったんだろうなって。
想像しか出来ないけど、いつもそう思ってた。
そんな中で私を選んでくれて、突然連絡をくれて……ビックリしたし、正直嬉しかった。「私のこと覚えててくれたんだ」なんて言ったら逆に失礼かな。でも、嬉しかったのはホントだし、ケータイ二度見したよ。
まず驚いて、そのあと嬉しさが広がって。大変な時期なのに、あなたの助けになれるなんて。そんな光栄な立場が私でいいの?なんて勝手に思ったりもした。
横から見ていたら、赤くなったり黒くなったり……百面相の様だったと思う。見られてなくてよかった。うん。
……でもね。
ごめんなさい。あなたに返事はしません。
連絡くれて嬉しかったのはホントだし、あなたには何の落ち度もないの。ダメなのは私。
今の私には夫も子供もいる。家族がある。その生活に満足もしている。
それなのに、今でもあなたに惹かれてる気持ちが全くないかって言われたらそれも嘘なの。もう大昔に捨ててきた気持ちだと思っていたけれど、連絡をもらった時わかっちゃったの。
私、あなたのことが、まだ好きなんだって。
だから返事はしない。出来ない。あなたと会ってしまったら、自分がどうなってしまうか自信が持てないから。
ごめんなさい。
もしどこかで偶然会う様な事があったら、その時までにはちゃんと気持ちを整理して、全力でおもてなしするから。今は許して。
ごめんね、智。
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「欲しいものリスト」に眠っている本を買いたいです!(*´ω`*)