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たけのこ@マンガライターが2022年9月に読んで面白かったマンガ

というわけでの2022年9月に読んで面白かったマンガのお話です。
駆け込みがすごかったですね今月。
9月30日に『ひらやすみ』や先生の短編集『センチメンタル無反応』に加えて松本大洋先生の『東京ヒゴロ』、panpanya先生の『模型の町』なんかもあって、今年一年通してもこれほど強い日はそれほどないでしょう。

そんな9月です。まずはまとめ画像からどうぞ。


東京ヒゴロ 2巻

わたし的に去年一番面白かったマンガは『東京ヒゴロ』1巻でした。
そんな高い期待値をもって挑んだ2巻。やはり面白かった……。天才かよ、いや天才だったわという感じ。

アクションとかがあるわけではなく、地味といえば地味かもしれません。それでもわたしのようにこの作品のもつ熱気にあてられた人も多いでしょう。青い炎のように、細く、温度が高い。そんな熱があるのです。

「マンガ編集者マンガ」ということで、先生自身がこれまでに考えてきたことやその人生が紙面に少なからずあらわれているであろうことこの熱気につながっているように思います。先生の集大成のような作品であり、魂のかおりがする。そんな気がするのです。

先生の作品の入り口としては『鉄コン筋クリート』とか『ピンポン』とか、もっと派手でわかりやすい作品でいいと思うのですが、先生の作品っていいなと一度でも思ったことのある人は是非とも読んでほしい作品です。強すぎです。


ブランクスペース 3巻

3巻で完結でした。

1,2巻の不穏を募らせた感じからすると、大きく物語が動き、絵的にも派手な話になったので戸惑った人もいるかもしれません。個人的には映画的な感じがあってありだなって思いました。

最後の街並みのうしろが空白になっている表現とかすごく素敵でした。あなたの世界は、すこし足をのばせば大きな空白……ここでいう空白は、決まっていない「未来」という明るい意味での空白ですが、そんなものが広がっているという感じかなぁと勝手に。

だれにもある空白というものを知り、空白に恐怖し、空白に未来を見る。
そんな誰しもありえることをうまくエンタメにしていた作品だったと思います。いい作品でした。


ポッケの旅支度

イシデ電先生名前だけは存じ上げていたのですが、作品をちゃんと読むのは初めてかもしれません。ネコのポッケとのお別れを描いた作品

かわいらしい絵柄でネコたちとの日常を描いた作品ではあるのですが、主題はお別れ。最後にはイシデ先生の感情の噴出があり、読み手としても心を打たれます。同時にツラくもあります。ネコを飼ったことがあり、別れを経験したことのある人は注意が必要でしょう。

蛇足ではありますが、作中では仲の良い志村貴子先生が沢山出てくるので、志村先生のファン的にうれしいという側面もあります。


あかねさす柘榴の都 2巻

スペイン、グラナダにひとり来てしまった少年をめぐるものがたりです。

これはひいき目かもしれませんけど、光の加減が日本じゃないと思うんですよ。光度が1割増しといいますか。いやこれ地味なポイントなんですけど、やっぱり紙面から異国の空気が伝わってくるというのはおおきな魅力でしょう。

そしてお話としても寂しさにあふれた1巻に対してグラナダの魅力に気づき、グラナダにも愛着を感じはじめる様が丁寧に描かれていました。この移り変わりも素敵だなと思いました。


われわれは地球人だ!

今週のSF枠。
3人の女子高生がショッピングモールに入りこんだときに、タイミング悪くショッピングモールが宇宙に繰り出してしまう。なぜか電気や空気や水道はなどは引き続き問題なく使えるし、ショッピングモールなので生活雑貨にも困らない。そんな宇宙に3人だけの状況でなにをするのか。

トンデモSFと言えばトンデモSFなんでしょうけど、わたし的にはトンデモ大歓迎です。むしろ好き。
きっかけはどんなものでもいいと思うんですよ。そのなかでどうすごすのかという部分にリアリティを感じられるかというのが大事ですから。後付けで都合の良い設定を使いまわされると覚めるんですけど、「この世界はこういう世界感です!」というものをまず提示して、それに準じてキャラを動かす。そんな感じであればどんなトンデモでも大歓迎です。


ゴールデンラズベリー 3巻

『ゴールデンラズベリー』評価されていないわけじゃないんでしょうけど、わたしの周りのTLとかではあんまり読んでいる人がいない印象で寂しいです。面白いですよ。

ただフィールヤングらしい芸能お仕事で、社会人恋愛ものでありながらも、キラキラ感やストーリーはもう少し低年齢向けの破天荒な雰囲気を帯びているため、NOT FOR MEだと感じてしまうかたが多いのかもしれません。

わたし的にはそのいびつにも見える雰囲気が唯一無二な感じがして大好きです。既刊3巻までですがどの巻も抜群に面白いです。


ビンテイジ 2巻

『ビンテイジ』2巻良かったですよ!

親の因縁や恋愛もふくめながらあくまでも「古着もの」をやっていくマンガという印象だったのですが、2巻はちょっと青春ものより……といいますか、恋愛とかそういう部分に重心があってとても楽しかったです。

いや古着ものというテーマが悪いわけではないのですが、やっぱり売れるためには広く伝わる人間らしい部分が魅力的に描けて、それを支える古着などのちょっとニッチなテーマという組みあわせが一番強いと思うんですよ。テーマが勝ちすぎると、そのテーマが好きな人しかついてこれなくなってしまいますからね。

すごく悩ましいところですが、この2巻の雰囲気がわたしの心をつかんだのは間違いありません。ぜひここまでまとめて読んでみてほしいです。


地元最高!

Twitterでは読んでおらず単行本で初めて読みました。すごいマンガですね(笑 朝日新聞にのってた帯は「可愛いと犯罪を混ぜあわせたらこのマンガになりました」というもの。

これ……そのやっぱり実体験とか、近しい人の話とかそういう感じなんですかね。すごくすさんだ世界ですよね(笑 ちょっと気に食わなかったらすぐ殴られる感じというか。そういう世界をリアリティをもって描ける。これは稀有な才能ですね。

もちろん好き嫌いはある作品だと思いますが、Twitterから読めますし、怖いもの見たさ的な意味でも読んでみると楽しいのではないでしょうか。ツイッターはこちら。


ややこしい蜜柑たち

雁須磨子先生の最新作。

わたし実は雁須磨子先生苦手ないことが多いのですが、これは楽しかったです。NTRもの?いやネトリもの?というの?ややこしいな……。あ、ややこしいんだったわ。

狭いコミュニティにいると、結構こういうややこしい事態って起こりえますよね。まあだからなんというか、ありえるよな……とか思いながら読みました。そういうのが苦手な人は避けましょう。


スーパーの裏でヤニ吸うふたり

Twitterで発表された段階から話題だった、スーパーの裏でタバコを吸う話。山田さんと田山さんの表裏が楽しいし、気の置けないふたりの感じが心地よい。

「心地よさ」っていうのは最近のトレンドじゃないかと思うんです。
ほらラブコメとかであればひと昔前は複数ヒロインで、だれとも同じように接して、結局本命はほとんど進展しないというのが王道だったと思います。でも最近は最初から相手も決まっていて、「いかに親密になるか」という部分に焦点をあてたマンガが結構多いです。良くも悪くもバタバタしない。

「こういうのがいい」みたいな気の置けない関係性自体をテーマとしているものもあります。そろそろ「草食系」という単語の次の流行り単語が生まれる時期かもしれませんね。「仙人系」とか?(笑


その他(たけのこ特別枠的な)

■インターウォール interw@// 

『インターウォール interw@//』 いい作品ですよ。先月、新作の『キャットウォーク』も出ていますが、そっちはまだ読んでいません。

サイコロ本で、めちゃくちゃ分厚いんですけど、それもそのはず。ほぼ1コマが1ページ。そしてビビットな色彩。近未来でディストピアな雰囲気。ものやアートの粋です。この雰囲気を出すための本の形式悩んだんだろうなぁというのが伝わってきます。ホントはもっと大きい版で出したかったんだろうなぁ。


■13人のショートサスペンス&ホラー

初出1996年のホラー作品集。いい作品ばかりでした。

人を怖がらせるってむずかしいですよね。オバケとか怖い顔した人がでてくればそれでいいっていう話じゃありません。単に一枚絵にしてもそれなりの画力が必要です。怖がらせるための仕組みが必要です。

こうしてオムニバスとして集まっているとその発想力とかを存分に感じることができてとても満足度の高いホラーオムニバスでした。


■Cold apartment

これも古い作品。いやーこわいこわい。あ、このたけのこ特別枠はホラー分多めになっております。

で、表紙からわかるように擬人化されたキャラクターが主人公にも関わらず、描かれるのはかなーり凄惨なスプラッタ。映画でもマンガでもそうですけど、例えば「ナイフを人に突きたてるシーン」とかがあったとして、突き立てたときのそのままの絵を描くことって実はあまり多くないんですよね。

それは映画とかであればレーティングとかそういうものを意識していることもあるでしょうし、単に書き手があまりにも残酷だと思って避けていることもあると思います。そういうものが積みかさなって結果、意外とそのものずばりを描いているものって意外と多くないんです。

だからこそスプラッタと称される作品は稀有だし、それを見事に描いていれば評価の対象にもなりえるわけです。そしてこちらのマンガもまーこれがなかなかのスプラッタ具合なのでした。すばらしい。


■兄だったもの 2巻

そしてこちらもホラーの『兄だったモノ』2巻。

紙が出ていないのねこれ。みんなにも読んでほしいなぁ。兄だったものが亡くなり、死後に呪いのようにたたる話、という感じで始まるんですけど、実際のところその元凶ははたしてその「兄」だったのか。もっとおかしい存在がそにいるのでは?

そんなオバケホラーと見せかけたヒューマンホラーが持ち味。オバケなお兄さんの描写自体もこれでもかと気合が入っているのに、むしろ怖いのは生きている人のほうっていう作りには脱帽です。



以上、2022年9月の10作品+アルファでしたー!長かったー(笑 
また来月お会いしましょー。もうそろそろ年末ですからね。「このマンガがすごい」とかも12月頭に出ますので、あともう丸二月ですか。


#マンガ感想文 #コンテンツ会議 #マンガ #東京ヒゴロ

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