暑がりな待ち人
砂利がしかれた場所に車を止め、ドアを開ける。
外の空気は思ったよりひんやりしていた。
バタバタしている間に出発が遅れ、実家に着いたのはもう日が陰り出した時間帯。
「おう、遅かったな」
玄関先では、父がしゃがみこみ何かをしている。ああ、『かんば』に火をつけているのだ。この地方では、お盆に『かんば』という白樺の皮に火をつけて迎え火をする。正式には歌を歌ったり、提灯に火をつけたりもするようだけれど、うちでやるのはせいぜい家の前でこれを燃やすくらいだ。
すぐあたりに黒い煙が広がり、こげた匂いが立ち込める。
「せっかく迎え火を焚いても、あいつは出不精だからな。お盆に戻ってきたりするのもめんどくさがるかもな」
「でもほら、こっちはやっぱり涼しいし、おかあさん暑いの苦手だから天国が暑ければきっと帰ってくるよ、暑ければね」
虫たちが我こそは、と騒いでいる。
母が亡くなってもう3年。火をつける父の背中が少し小さく見えた。
「欲しいものリスト」に眠っている本を買いたいです!(*´ω`*)