『しゃべるピアノ』(ショートショートnote杯)
「なあ知ってるか? 最近のピアノはしゃべるらしいぞ」
その日、空にかかった曇天に気がめいっていたせいか、なんとなく静寂に耐えられなくなった俺はすぐ横にいたヤツに話しかけた。
「何を言ってるんだ。ばかばかしい。そんなことあるはずがない。いったいどこで手に入れた情報だ?」
おそらくこいつも暇だったのだろう。なんてことのない話題だが、思った以上に前のめりに食いついてきた。
「いやほら、窓越しに向かいの電気屋のテレビが見えるだろ? そこで今さっきニュースをやってたのさ。だから間違いではないと思うぜ」
そいつは重そうな体を今にも動かさんばかりに大きなリアクションを見せた。
「ひぇー! 最近は何でもかんでもしゃべらせればいいと思ってるのかね。そりゃAIだなんだ流行っているんだろうけれど、どうせ子供だましなものに違いねぇんだろうよ」
「間違いないな」
そう言って、二台のピアノは大きな声で笑い合った。
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