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盆栽師 平岩勝臣2【ショートショート】【#47】

「先生、今回もまた新たな試みということでお聞きしているのですが……今回はどんな展示なのでしょうか」

盆栽師、平岩勝臣の今日のいでたちは迷彩柄の作務衣に、手ぬぐいを頭に巻いていた。

「たびたびの取材ありがとうございます。今回の展示については、多少説明が必要かと思います。まず知っていただきたいのは、私はこれまでも培ってきた技術などを生かして、常に違う表現を求めていました。それが今回はこ……」

「あーわかります、知ってます。魂こめて『育てる』んですよね。そういうものであれば何でもいいんですよね」

「……う、うむ。そのとおりだ」

「それでは端的にうかがいましょう。ずばり今回の展示対象は?」

「うむ。私は先だって『note』という文章を書くサイトを始めた。そこで武日々、盆栽や日常のことなど様々なものを書いている。すると少しづつ読んでくださる方も増える。もちろん盆栽の話題などはファンがつきづらく、日常のエッセイのようなものの方が、読まれる率や『スキ』をもらえる確率も高いようだ」

「……はあ」

「そうやってしばらく更新していると思うことがある。『note』という場所は私のペルソナであり、私自身が成長すると場であると同時に、読者をも育てている場なのだと。ファンのつきづらい話題でもいい記事はあり、そういうものを定期的に作り出せば、ついてきてくれる強固なファンも育つ。そうやってお互いに成長する場なのだ」

「……はあ。というと、そのつまり……今回の展示は?何なのでしょうか?その先生の書いた文章ということでしょうか?」

「いやそうではない。育っているのは私でもありながら、同時に私の文章を読んでくださる読者の方々なのだ。読者の方たちに尊敬の念を禁じえないし、純粋に愛している。そうつまり、今まさに画面の向こうでこのnoteを読んでくださるあなた!あなたこそが、今回の展示物に他ならない!」

理解の追いつかないリポーターをよそに盆栽師は続けた。

「今日、この場にも私のファンにも来てもらっている。言ってしまえばオフ会だ。だが忘れないでいただきたい。展示の主眼は、ケータイかパソコンかわからないが、画面の向こうで今これを読んでいる『あなた』なのだということを!いつも本当にありがとうございます。『スキ』をつけていただいた順に、謹んで展示物として登録させていただきます!」


前回の平岩勝臣はこちら。


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