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会議はおどる【ショートショート】【#135】

「じゃあ翌四半期アニメの企画会議はじめまーす。お願いしまーす」

「お願いしまーす」

「さっそくですが、各自考えてもらった新企画の発表からお願いします」

「はい。じゃ私から行きますね。現代に生きるさえない少年のもとに、23世紀の未来から犬型ロボットがやってきて、未来の道具を使って色々手助けをするお話なんてどうですかね。おはぎが大好きでその名も『おはぎちゃん』。いろんな道具の商品化もできるし、子供受けもいいと思います」

「私のも結構いいと思いますよ。医師免許は持っていないんですけど、腕は抜群の医者が、高額の報酬をもらって様々な患者の手術をするんです。もちろん中には犯罪者とか、人に言えないような手術を頼みにくるから、まっとうな医者にかかるわけにいかない。高い報酬だって支払うしかない。そこにドラマが生まれないわけありませんよね。色白イケメンが主人公で『ホワイトジャック』、なんていいと思いませんか?」

「いやいや君たち、発想が古いと思うよ。時代は今、アンニュイだよ。こういうのがいいと思うな。ある日突然、父親に呼び出されたと思ったら、急に決戦兵器の乗れなんて言われちゃってさ。そこに葛藤も生まれるし、敵はとにかく怖いわけ。加えて、カワイイ女の子とかずぼらな女上司でも出しとけば、お色気でもなんでもござれ。ついでに謎の組織に、謎の計画も同時進行して、難しめに仕上げていくのが現代風ってもんだよ」

 監督は最初、何も言わず、発表される企画を聞いていた。しかしどこかで聞いたような企画ばかり出てくるので、さすがに堪忍袋の緒が切れたのか、手に持った資料を机に放りなげ、言いはなった。

「……あのさ、君たちさ。アニメとか漫画とかさ、ちゃんと読んだり見たりしてる? そりゃ数も多いから全部は見れないにしても、有名どころとかはさ……、さすがにおさえとかないとダメでしょ。どいつもこいつも……どこかで聞いたような企画ばっかりじゃないか! いい? 君たち仮にも業界人なんだよ? まだ若いとか言い訳にならないからな」

 監督はまわりをぐるりと見渡す。その強い言葉に誰一人反論する人はいない。部屋には重苦しい空気がのしかかっていた。

「――まぁいいよ。今回は僕が考えた企画で何とかするからさ。君たちも見習ってくれよ。……あのな、年端もいかない少年がいきなり戦争に巻きこまれる話なんだよ。その時代には宇宙にコロニーって呼ばれる大型の衛星がいくつもあってさ、その一つが反乱して戦争が起こるわけよ。やつらは秘密兵器をもっていて、それがこの作品のキモ、巨大な人型のロボット兵器なんだよね。これは当たるぞー……」



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「欲しいものリスト」に眠っている本を買いたいです!(*´ω`*)