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地球侵略作戦【ショートショート】【#90】

「地球侵略はちゃくちゃくと進んでいるかね?」

「はい! 司令官殿! 作戦プランにのっとって順調に進行しているところであります!」

 モニターには地球の地図が表示され、各国での作戦の進行状況が映しだされていた。

「慌てる必要はないからな。我々にはありあまる時間がある。それを生かして、まずは地球人の戦闘意欲をそぐところからだ。地球人というのは、思いつくたびに戦争、戦争……と、仲間内での殺しあいばかりをしている。本来ならば、なるべく近づきたくない種族だが、上の命令とあれば仕方がない。しかるべく手段を考えるのが私の仕事だからな」

 司令官は作戦の進捗に満足しているようだ。くわえたパイプを右手でつかみ、深く息を吐きだした。

「司令官殿、ひとつ聞いてもよろしいでしょうか!」

「なんだ。言ってみろ」

「この作戦は、司令官殿が立案したとお聞きしました! 私などには到底思いもよらぬ、奇抜でかつ効果的な作戦だと認識しております! 一体、どのようにこんな作戦を思いつかれたのでしょうか? よろしければ、お教えください」

 ふふっ……と薄く笑いを浮かべ、司令官は答える。

「例えば、貴官なら相手を打倒しようと思ったときには、まずどうするかね?」

「そうですね……。いい装備をそろえて……それを十分に発揮できる人員と、補給を用意することでしょうか」

「もちろんそういう準備も大事だ。しかし、それ以前にやることがある。それは、――相手を知ることだ」

「……相手を知ること」

「そうだ。相手を観察し、相手がどのようなものを好み、どのようなものを嫌いうのか。どういったときに、どのような行動をとるのか。そういった相手の情報を知ることが作戦立案には何よりも大切なのだ」

「なるほど」

「私は地球人の文化を研究した。文献から始まり、映像資料やその習慣などにいたるまで……。もちろんすべてに、とはいかないが、かなりの分量に目を通したのは間違いない。そして私は、この地球という星全体を通して、共通している一つの行動パターンに気がついたのだ」

「行動パターンですか」。ゴクリ、とつばを飲み込む音がなる。

「そうだ。行動パターンだ。人間は、地球に生息している『ある生物』を前にすると、いやおうなしに戦闘意欲をそがれてしまうのだ。みな、いちように顔をゆるませ、骨抜きになってしまう。これが地球の在来生物だというのだから、これまでよく生き残ってきたと驚くばかりだ。言ってみれば、脳みそを丸だしにしているようなものだ」

「なるほど。そうやって人間の行動パターンを徹底的に観察することで、この作戦……オペーレーション ネコが生まれた、というわけなのですね」

「そのとおり。ネコという生物を前で人間は無力だ。そして、それがわかっているのであれば、ネコを増やして送り込めばよいのだ。時間の経過とともに、戦闘意欲のかけらもない、ふぬけた抜け殻だけが、そこに残されるというわけだ」

「恐ろしい作戦だ……」

 司令官の高笑いがブリッジに響きわたった。



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