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かつお節の保管方法【本節・亀節 編】

ずいぶん間が空いてしまい、年末も近づいてきましたね。
申し訳ございません💦

前々回は、かつお節の保管方法【削り節 編】 を書きました。
今回は削り節以上に誤解の多い、本節・亀節の取り扱いや保管方法について書いていきたいと思います。

と、本文を書く前に…
実はこの内容を書くに至った切欠となることが、一つあります。
それを先に書きますね。
別に重要な事ではないので、飛ばしていただいても構いませんので、その場合は下の目次からご覧ください。

=====【きっかけ話】=====

たまにお客様(個人の方から販売店さん迄幅広く)から、節の扱いについてのお問い合わせがあり、その都度対応しておりました。
その中で、稀にですが、なかなかパンチの効いた…まあ弊社からすると驚くような取り扱い方をされていることを伺いまして、それは誰から聞いたのかと確認すると、売っていたお店の方から聞いたという場合や、なんとなく想像でやっていたという方まで色々いらっしゃいまして、丁寧にそこについてお話をさせていただいていました。
しかし、つい先日お問い合わせをいただいた方が、乾物屋さんに教えられた取り扱い方法というものが、あまりに驚きのものでしたので、こんなことを言われているのかというショックもあり、きちんとした扱い方をお伝えしようと一念発起しました。
ちなみに、どのような扱い方を指導されたかと言いますと…

・かつお節は、キャベツの外葉で包んで冷蔵庫で保管してください。
・キャベツは適度に交換してください。
・カビが生える前に食べきってください。
・カビが生えたら食べられないので、捨てて新しく買い直してください。

これでご相談いただいた内容は、カビが生えない保管の仕方はありますか?どうやって保管したらよいのでしょうか?

という事。

こんな保管の仕方をしていたらカビが生えるのは当たり前ですし、しかも「カビが生えたら捨てて、新しく買い直してください」という言葉は…ちょっと私には理解し難いものでしたが、その女性のお客様は捨てないで済むようにと、せっせとかつお節を使っていたそうです。

せっせとかつお節を使っていただけるのは有難いことですが、しかし正しい扱い方を知らず、強迫観念に駆られるように使われてしまうことは、それは非常に悲しいことです。
またかつお節屋として、きちんとした扱い方をお伝えできていないというのは、お客様にもカビが生えて捨てられてしまったカツオの命にも申し訳ないのです。

こういった経緯から、今回節の扱い方を書いていこうと思いましたので、これからかつお節に手を出す方も、既に使っている方も、よろしければ一度ご覧いただけましたら幸いです!

長くなりましたが、扱い方について書いていきます。

1-1.  買ってきたら最初にする事 <裸節の場合>

まず買ってきたかつお節が、<枯節>か<裸節>かで異なります。
<裸節>というのは、カツオを煮て燻製にした後、表面のタールを削り落として製造が終わった荒節です。
これは、特に何もしなくて大丈夫です。
もし店頭に並べられていてほこりなどが気になる方は払ってもいいですし、水洗いした後に拭いて、乾燥させてから使ってもいいでしょう。

裸節を買う機会は、非常に少ないものです。産地に行った場合や昔ながらの乾物店で極稀に売られている場合、あとはインターネットで選んで購入する場合を除いて、殆ど目にする機会も無いと思います。

1-2. 買ってきたら最初にする事 <枯節の場合>

こちらは表面にカビがついていますので、そのカビを丁寧に落とすことが重要です。「硬く絞った布巾や乾いた布巾でカビを拭いて落としてください」と言われることも多いですが、これは流水とたわしでしっかり洗い落としていただくのが、最も簡単できれいに落ちます。
水洗いするのは、この最初の1回だけで大丈夫です。

洗い落としたら、キッチンペーパーなどで水分を拭きとり、10分ほど置いて表面がしっかり乾燥したら、使用できます。風や日光に当てる必要はありません。
テーブルの上にぽーん、で大丈夫です。

かつお節は洗ってもいいのか?濡らしても大丈夫なのか?と聞かれる方もいらっしゃいますが、問題ありません。
何より、私たちかつお節屋が本枯節を削るときは、必ず洗浄機で流水とブラシで丸洗いをしてから削っています。
以前、かつお節は洗ったほうがいい理由 という記事も書いておりますので、興味がありましたら、そちらもぜひご覧ください。

2. 保管の方法

本節や亀節といった姿売りのものは、扱いが削り節と比べて非常に楽です。
例えば削り器の引き出しや箱の中に入るようであれば、その中に入れておいてもいいですし、入らないようでしたら箱の上においても大丈夫。
棚の中に入れても大丈夫です。

もし気になるようでしたらジップロックの袋に入れてもいいと思いますが、一番お勧めできない方法が一つあります。

それは、冷蔵庫や冷凍庫に節を保管することです。

冷蔵庫や冷凍庫というのは、実は考えているよりもずっと湿度が低く、乾燥が進みやすいのです。そのため、ラップに包んだりジップロックの袋に入れていても、冷蔵庫に入れておくと乾燥や酸化が進み、粉々になってしまいやすくなります。
また、冷たいところから温度差のあるところに出すため、出しているうちに結露してしまい、削り器の刃に水分が残って錆びやすくなるということもあります。

今、多くの方が姿売りのかつお節を冷蔵庫に入れて保管されていますが、それは何のためでしょうか。
かつお節は冷蔵庫がない時代に生まれた保存食です。
冷蔵庫に入れることで考えられる利よりも、入れることで起こる不利益の方が大きいのです。かつお節は常温のまま、戸棚や削り器の周辺に置いておくだけで問題ありませんし、もし万が一梅雨の時期などに白カビが来てしまったとしても、また流水とたわしで洗い流すだけで、問題なく使えます。
(※ただし、削り節は違いますのでご注意ください。)

それともう一つ、冷たくひえたかつお節は非常に硬いため、削りにくいのです。削りにくいかつお節は、火で炙るとかレンジにかけるなんてことを書いているものもありますが、それはお勧めしません。
特にレンジはNGです。その一瞬は温まるかもしれませんが、冷えるときにさらに硬くなりより削り辛くなります。
それを繰り返すと、水分が抜けすぎてボロボロになったり節が内部から爆発することがあります。
そのような手間をかけても味は落ちます。常温に置いておくだけで、そのような手間から解放され、削りもやりやすくなりますので、ぜひ冷蔵庫からの脱却をお勧めします。

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かつお節は、昔から日本人の身近にあり、生活に密接した当たり前のものになってしまっているからこそ、改めて聞かれると扱い方がよくわからなくなっている物、というように感じています。

削り節と本節・亀節の両方を書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。
今までやっていた扱い方と全然違う、と思われる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

本来は、とてもシンプルなものです。
それを難しくさせる必要はありません。
一度、騙されたと思ってお試しください。

皆さんのかつお節ライフが、より美味しく、楽しいものとなります事を心より祈っております。

文章に残して、後の世代に繋いでいきたいと思っています。 サポートいただけると、とても励みになります。 よろしくお願いします。