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文法韓国語と韓活韓国語の比較

「文法韓国語」と比較する形でその特徴をさらに深掘りしていきます。

文法韓国語とは

 文法を中心に学ぶ既存の学習法を「文法韓国語」とここでは呼びたいと思います。コミュニケーション中心の韓国語学習も、文法(発音法則や語尾活用)を中心とした学びであれば、「文法韓国語」に含まれます。
 文法韓国語とは、このようなイメージです。

 文法を核にした学びには次のようなメリットがあります。

・どんな文でも説明できるという「汎用性」
・大量の例文を記憶しなくても良いという「効率性」

 語彙や文末表現は男女や世代、時代によって異なることがありますが、活用などの文法は変化が小さいので、「汎用性」があると言えます。どこからが初級でどこからが中級などと言うことは一概に言えませんが、検定試験がある程度の基準を示しており、何も道しるべがない状態で独学するのであれば、文法学習がある種の道しるべになるでしょう。

 文法韓国語の学習には、ほぼ決まった流れがあります。

・文字:一気に暗記
・活用法則:法則を提示し、その後は語尾の活用練習(※変則活用は小出し)
・発音法則:一気に提示 or  …

 「文字」を一気に覚えた後、「活用法則」を順に習っていきます。活用法則には正格活用と変格活用とがあり、法則を学んだ後は、語尾を使ってひたすら活用の練習をこなしていきます。法則の数は限られているので、中上級になったからといって新たな法則が提示されるわけではなく、新たな語尾の習得が続きます。
 韓国語は日本語と比べて「文字情報」と「聞き情報」のズレが大きいため「発音法則」の学習も必須です。活用よりさらに複雑で理解しがたく、初期段階の学習者に大きな負荷をかける文法項目です。教える側も曖昧になるくらいに難しくく、きちんと教えられる人も少ないです。しかも、例外が多いので、発音法則を理解したからといって韓国語の文を完璧に読めるようになるわけでもありません。

文法韓国語のデメリット

 では、「文法韓国語」にデメリットはあるのでしょうか。

 ある書店での風景をつづったSNSの投稿を例に挙げたいと思います。

「えーほんとに勉強するの?」
「うん。私韓国に住みたいから」
「へー」
(ハングルのテキストを本を手に取るものの、30秒もせずに無言で閉じる)
「えーもういいの?」
「うん…」

そんな私も大学時代スペイン語、中国語を学びましたが見事にものになりませんでした。笑

 「文法韓国語」のデメリットは、「難しさ」です。
 その証拠に、書店売りのテキストは、以前と比べると、「正確さ・情報量の多さ」よりも、「分かりやすさ」の方向にシフトしています。学習者の「分かりにくい」という声に応えようとしたんでしょうね。
 でも、ここでお伝えしたいのは、文法は「概念を習得する」ものなので、難しいものであり簡単にはならないということです。分かりにくいものは、どんなに教え方を工夫しようとも、わかりにくいものなのです。もちろん教育者としては、精一杯教え方を工夫しようとします。でも、図式化、イラスト化しようが、カラフルにレイアウトしようが、そもそも文法は複雑で難しいのです。

 文法韓国語のメソッドは、その「難しさ」ゆえに、「多くの挫折者」を産んでいます。これも大きなデメリットです。
 さらに、どれだけ文法を理解し語尾・単語を多く記憶し運用できるかという「習熟度」によって、受験さながらの「偏差値的な序列(ヒエラルキー)」を作り出します。検定試験の合格級がまさにそれですが、頑張った証ではありますし、上級の人は誇らしいでしょうが、頑張っても合格出来ない人、さらには文法学習のスタートすら躊躇する人にとって、こうした序列は萎縮につながります。「自分のペースで楽しく学びたい人」とは相性が悪いといえます。

韓活韓国語とは

 では、韓活韓国語はどのようなイメージなのでしょうか。

参考:Eagle,S.,&Carter,J.(1998).Iceberg and islands:Metaphors and models in intercultural communication.

 「韓活」とは、韓国に関する様々な活動のことだとここでは定義しますが、この韓活は学習者によって異なると思います。ある人にとってはKPOP、ある人にとってはドラマ、またある人にとっては食文化・美容文化などでしょう。
 韓国語を学びたいと思った人は、それらの文化にフラグが立って、その文化を深めたい、知りたい、触れていたいということで「韓国語を学んでみようかな」と思い立つわけです。
 
 ところが、そうした興味から語学のテキストに触れてみると、世の中のテキストのほとんどは「文法韓国語」です。特に初心者向けは間違いなくそうです。だから、「テキストをそっと閉じて立ち去る」という現象が起きるのだと思います。

 多くの挫折者と、昨今のKコンテンツブームから生まれた新しいニーズをすくいたいという思いが、「韓活韓国語」の根底にあります。教育側からKコンテンツブームを眺めると、そもそも語学という陰キャというかオタクの集まりに近い業界、ひっそりと研究者(大概まじめ陰キャ)が語学オタク(大概まじめ若干陰キャ)に教えていた業界だったのだと思います。それが圧倒的なキラキラKコンテンツの流行で、今までとは違う地味なスパルタ語学学習などに見向きもしなかった層が大量に押し寄せてきたと言えます。韓国語業界からすれば「産業革命・IT革命」並のインパクトであり、大きな業界変動をしなくてはいけないのですが、ほぼほぼ無風で昭和からの学びをマイナーチェンジしながら教え続けている印象です。

 では、具体的には何を学習するのでしょうか。例えば、こんな方法があります。

・文字:小出し
・活用法則:学ばない(活用形で韓国語に触れる)
・発音法則:小出し

 文字習得を一気に行うと、その後の学習がスムーズかもしれませんが、文字習得そのものがハードルが高いものです。初心者・初級者は、文字習得がゴールでも良いくらいです。
 「文法韓国語」では文法を軸に組み立てていきますが、「韓活韓国語」では、文化を軸にします。
 文法が軸か、文化が軸かは、実はかなり大きな問題です。教えたい文法事項が先か、教えたい文化事項が先かによって、教科書の内容はガラリと変わります。これまでの全てのテキストは文法事項が先でした。文法事項に沿ったダイヤログや例文を作り、文法事項の習得を目指してきました。文化は後から添えるだけでした。
 なら、韓活韓国語では、文化を軸に、文化事項に沿ったレクチャーと関連する韓国語を併せて学んでいきます。文法事項も取り上げますが、単語の暗記や運用力、文法の定着にはこだわりません。初級のテキストはどれも内容が似たり寄ったりです。同じ文法事項を軸にして作られているからです。でも文化を軸にすれば内容はガラリと変わります。学習の選択肢を増やすことになるのです。

 文法韓国語は文法を体系立てて教えていくので、途中で飛ばしたり途中から入ることはできません。でも韓活韓国語はトピックで進めていくので学ぶ順序を問いません。あるときはKPOP、あるときは歴史、あるときは食文化。色々な山に触れていくという立て付けです。気になる分野だけ学ぶ、順序を変えて学ぶことがもできます。最初は学習者のフラグの立った文化からの方が入りやすいでしょうが、それまで興味のなかった分野にも触れることで視野を広げられます。
 「汎用性」は文法韓国語のメリットでもありますが、汎用性が故に無味無臭で味気ないものになります。何にでも当てはまるということは、色がない、クセがないのです。文化が不在の時代には学習内容に彩りがなくてもさほど疑問を感じなかったかもしれませんが、魅力的なKコンテンツに触れている人たちは、無味乾燥とした文法韓国語に触れて、自分の想像と違うと思う人もいるでしょう。

併存するべき二つのアプローチ

「文法韓国語」と「韓活韓国語」は併存されるべき二つの学習法ではないかと思っています。
 これから学ぶ人、文法に抵抗がある人は、まず韓活韓国語を始めるといいでしょう。それで終わりでもいいし、その後に文法韓国語に進んでも良いでしょう。
 すでに勉強中の人は、韓活韓国語を併用しても良いですし、文法韓国語を学んだ後に取り組んでみても良いと思います。文法に手こずっている人は、韓活韓国語に切り替えても良いかもしれません。

 基礎からみっちりと学び習得を目指すのではなく、教養程度に触れたいというときは、「韓活韓国語」がおススメです。

 語学の運用面では、IT技術をいかに取り込むかも重要な視点です。辞書なしで自由作文したい、自力で翻訳してみたいということでない人には、ITを活用した語学力の付け方も、韓活韓国語で模索していきたいと思っています。



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